データ活用に注力する企業が増え、ストレージのハイブリッドクラウド/マルチクラウド化が進んでいる。「FinOps」という新たな考え方を含め、企業が抱えるストレージの課題とそれを解決するために活用すべきサービスの在り方を、ネットアップのポートフォリオを例に考える。
企業におけるクラウドの利用はもはや当たり前となりつつあるが、これはストレージ領域も例外ではない。その背景にはデータ量の急激かつ大幅な増加があり、いかに効率良くデータを管理するかが大きな課題となっている。
SB C&Sの小川 正一氏(技術統括部 第1技術部)は、次のように語る。
「増え続けるデータを分析し、新しいビジネス戦略に生かすために、データマネジメントを強化したいというニーズが増えています」(小川氏)
現在のデータマネジメントでは、従来のような自社で発生したデータだけでなく、SNSなどで社外から取得したデータも対象となる。
「多種多様なデータをいかに活用するかが、ビジネスにおいて重要です。データの保管先を1カ所に固定するのではなく、用途に合わせてクラウドに移行したり、オンプレミスに戻したりと、柔軟に活用できるインフラが求められています」(小川氏)
データ活用に注力する企業は増加傾向にある。SB C&S河村 龍氏(技術統括部 第1技術部)は次のように補足する。
「日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の『企業IT動向調査報告書 2021』によると、データ活用を実施する企業は6割を超え、準備中の企業までを含めると8割以上と、多くの企業がデータマネジメントを強く意識しています。一部の部署だけではなく、組織横断的なデータ活用を進めている企業の方が、データ活用の恩恵を大きく受けていることも分かっています」(河村氏)
大量かつ多様なデータを複数の環境で管理するとなると、その管理方法が大きな課題となる。
「ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの場合、クラウドサービスそれぞれの管理画面が異なり、操作方法の習得にもコストがかかります。効率的な管理方法が必要です」(小川氏)
また、データの保護やセキュリティ対策も重要になる。
「クラウド間でデータの同期やバックアップをする場合、送信元と送信先の環境の違いから制限が発生するケースもあり、データを確実に保護するには、クラウドサービスごとの仕様などに注意する必要があります。また、いまだクラウドに対してセキュリティの不安を感じる声も根強く、事前に対策を徹底することが求められます」(河村氏)
クラウドでは「コストの最適化」も課題になる。ネットアップの神原 豊彦氏(CTOオフィス ジャパン チーフ テクノロジー エバンジェリスト)は次のように語る。
「クラウドのコスト管理には、システムやプロジェクト単体の観点と、全体を俯瞰(ふかん)した観点の2つがあります。以前はシステム単体の観点でクラウド化を進めてきた企業でも、いまでは全社で数多くのプロジェクトが動いており、それぞれレベルや実装方式、コスト意識が異なってきているでしょう。これからは俯瞰的な全体最適化が重要です」(神原氏)
クラウドはアーキテクチャや料金プランを最適化することで、コストを大幅に削減できる可能性がある。
「そのためには、まず『社内のクラウド利用状況を可視化』する。そして『最適化の方法を検討』する。最後に『個々の環境に実装』するという3つのステップが有効です」(神原氏)
データが多ければ多いほど新しい知見を得られるようになる一方、どこに、どのようなデータがあるのかを探す手間がかかるようになる。
「ハイブリッドクラウドやマルチクラウドが当たり前になる中、活用までを考慮してデータを整理、管理したいというニーズは当然出てきます。ネットアップはこのニーズに応えるポートフォリオをそろえました」(神原氏)
ネットアップのクラウドサービスポートフォリオは、大きく4つのレイヤーに分けられる。
1つ目は、クラウド上にデータを格納する「Cloud Storage」だ。ネットアップでは、「Amazon Web Services(AWS)」「Google Cloud Platform(GCP)」「Microsoft Azure」上にそれぞれサービスを展開している。
「クラウドサービスは従量課金で、データ量に比例してコストがかかります。しかし、ビジネスの観点からは、データが増えてもコストは抑えたいのが本音でしょう。ネットアップのデータ圧縮技術は、データ量を3分の1以下にします。また、利用頻度の低いデータを単価の安いストレージに保存する階層化などで、コスト削減につなげることが可能です」(神原氏)
保存するデータ量自体を圧縮する技術は、サステナビリティーの観点でも重要になる。
「脱炭素などSDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、ストレージに格納するデータ量を圧縮すれば、クラウド事業者の消費電力削減にもつながります」(神原氏)
2つ目は「Cloud Controls」だ。データはミドルウェアごとの技術仕様に合わせてマッピングする必要がある。コンテナ環境に永続ストレージやバックアップ機能などを提供する「Astra」やクラウド上で仮想デスクトップの運用・管理環境を提供する「Virtual Desktop Service」など、用途ごとにデータをオーケストレーションするのがこのレイヤーだ。
3つ目は、個人情報保護やセキュリティ対策などさらに上位のレイヤーでのデータ管理となる「Cloud Analytics & Services」だ。データを可視化する「Cloud Insights」、プライバシーデータの状況を把握する「Cloud Data Sense」の他、ランサムウェア攻撃の検知やバックアップ管理など、要素ごとにサービスをそろえている。
4つ目が、先のクラウドのコスト最適化の課題を解決する「Compute Operations」だ。これについては、「Spot by NetApp」サービス群の紹介とともに後述する。
多様なデータ管理サービスがあるとはいえ、複数のクラウドストレージを利用するとなると管理の複雑化が懸念事項となる。ネットアップは前述の「Cloud Controls」の一つとして、マルチクラウド環境を統合的に管理できるツール「Cloud Manager」を無料で提供している。
「Cloud Managerでは、UIやデザインをいかに簡単かつシンプルに管理できるかを重視し、直感的に使えるツールを目指しました」(神原氏)
複数のクラウドを利用するに当たっては、データ移行も厄介な問題となる。
「Cloud Managerは、オンプレミス〜クラウド間、異なるクラウド間のデータ移行に対応し、1PB(ペタバイト)に上る大容量データも、管理画面上でドラッグ&ドロップするだけで移行できます。もちろん、システムを利用しながらオンラインで移行でき、データの整合性も保証します。データ移行の負担をここまで軽減できる点は大きなメリットになります」(神原氏)
加えてネットアップは、ストレージの保守メンテナンスツール「Active IQ」をCloud Managerに統合している。Active IQはリモートからモニタリングし、「必要なアップデートがされているかどうか」「推奨される設定値になっているかどうか」など、ストレージの健全性を監視し、問題点を検知するツールだ。これにより、ストレージの保守運用までを一元的に管理できるようになる。
データが増え続ける中では、コストの最適化も大きな課題だ。
「クラウドの利用状況を明確に把握し切れないまま支出がかさむ企業が増えたことで、財務上の説明責任を果たせる形で運用する『FinOps』という考え方が米国を中心に広がっています」(小川氏)
このFinOpsをサービスとして実装したのが「Spot by NetApp」だ。Spot by NetAppは各クラウド環境をモニタリングして利用状況を把握し、過去の傾向からコスト最適化プランをAI(人工知能)で分析する「Cloud Analyzer」と、最適化プランを自動で実行する「Eco」「Elastigroup」「Ocean」という4つのサービスで構成される。
例えば、AWSはオンデマンドでの利用が最も高額であり、事前に利用分を予約する「リザーブドインスタンス」では3〜4割ほどコスト削減できる。一方、予約した分は利用することが前提となり、不要になった際にはその領域を転売することも可能だが、運用に手間がかかる。この管理を自動化するのが「Eco」というサービスになる。
AWSにおけるスポットインスタンスの運用自動化に対応するのが「Elastigroup」だ。スポットインスタンスは一時的に空いた領域に入札することで、低価格で調達できるプランだ。しかし、必ず調達できるとは限らなかったり、利用開始後に他のユーザーの入札価格が上回り奪い取られてしまうケースがあったりするなど、運用にはさらなる手間がかかる。Elastigroupは過去の統計データを基にスポットインスタンスの中断を予測し、データの移行やスケーリングなどの運用を自動化する。
コンテナに関しても「Ocean」で、同様にコスト最適化を自動実行できる。
「コストメリットは大きいが、制約があったり、運用に手間がかかったりする場合でも、自動化することで柔軟性とコストメリットを両立できるようになります。また、ツールで運用することで、コスト最適化されたアーキテクチャを全社に横展開できることもメリットです」(神原氏)
SB C&Sは2015年からネットアップのディストリビューターとして幅広い製品/サービスを扱い、最先端のポートフォリオに対応してきた。企業がやりたいことをどの製品/サービスで実現すればよいのか、ニーズと製品/サービスをつなぐ提案を行っている。
河村氏はネットアップのポートフォリオを次のように評価している。
「ネットアップというと、NAS(Network Attached Storage)のイメージを持つお客さまが多いのですが、長年お付き合いさせていただいている弊社としては、ストレージの枠にとらわれず、お客さまのニーズに応える製品づくりを進めるベンダーという印象を強く持っています。ハイブリッドクラウドにもいち早く注目され、AWS、GCP、Azureといったクラウドを代表するプロバイダー全てにクラウドストレージサービスを展開するベンダーはなかなかなく、その点はマルチクラウド時代の大きな強みと感じています」(河村氏)
ネットアップは「Data Fabric」というコンセプトに基づいて進めてきた、クラウドストレージの最適化や統合管理などが一通り完成し、次のステップとしてこれらをつなぐソリューションを目指している。現在は、コンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」が作成するクラウド上でのベストプラクティスについて、ストレージ部分の設計に参加。今後は、さらにVDIやビッグデータ、AIといった領域のベストプラクティス作成を進める計画だ。
「ネットアップが提供する製品/サービスはシステム全体のアーキテクチャの中で重要なポジションを占めますが、お客さまのニーズに直結するものではありません。お客さまのニーズに合わせて提案力に優れたSB C&Sと今後も密に連携していきたいと考えています」(神原氏)
「SB C&Sはお客さまの課題やニーズに対する最適解の提案から、構成、実装までサポートします。ネットアップの製品やクラウドサービスに加えて回線までをサポートできますし、初期セットアップなどを代行するパッケージなども用意している他、セミナーやイベントなども開催しています」(小川氏)
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提供:SB C&S株式会社、ネットアップ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2022年3月28日