新たなITサービスを提供するためには、それを生み出すDBなどの基盤を見直すことが重要だ。だが、さまざまな選択肢の中から自社に最適なものを選ぶのは難しい。考えるべきは「定番か否か」ではなく「要件を満たせるか否か」だ。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の機運の高まりもあり、多くの企業が価値創出に向けた取り組みを加速させている。鍵となるのは、テクノロジーとデータだ。新たなITサービスをどう構築し、価値創出を通じて収益を拡大させられるかが、企業の経営課題となっている。
だが、“既存の資産”が価値創出の足かせとなっているケースがあるという。ラックの小山田 裕氏(セキュリティソリューション統括部 プラットフォーム・サービス第一部 バンキングITサービス第二グループ GL)は次のように指摘する。
「DXを推進して、より大きな収益を獲得するためにIT活用が欠かせない。しかし、既存事業の枠組みのままでIT活用が進まず、思ったように収益が得られない企業がある。そういった企業に重要なのはこれまでの当たり前を見直すことだ」
小山田氏は見逃しがちな既存の資産としてデータベース(DB)を挙げる。
「DBはITサービスの肝といえる。だがクラウドが普及する前までは、企業で利用するDBには“定番”があり、選択肢がほぼないため、コストや性能などに不満があっても使い続けるのが当たり前だった。さまざまなDBが登場している今、『定番か否か』ではなく『要件を満たすか否か』という視点でDBを選びなおす必要がある」(小山田氏)
価値創造につながるITサービスを開発するのであれば、クラウドの利用が欠かせない。それに合わせてDBもクラウドに移行すべきだ。定番と言われる商用DBを提供するベンダーはクラウドに対応したDBも提供しているため、移行サービスを使えば移行も簡単だ。
「ただ、『いや待てよ。他の選択肢はなかったか?』と立ち止まり、リフトせずに別の選択肢を探す企業もある」と小山田氏は言う。
「既存の商用DBをクラウドで使い続ける場合、課題になるのがライセンスコストだ。定番の商用DBは機能、性能、サポートが高度になるほどライセンスコストも高額になりがちだ。だが今は比較的低コストで利用できる、定番の商用DB以外のDBの選択肢が増えている」
こうした変化は、テレワークの普及によって業務のデジタル化が進み、クラウドサービスをはじめとする「定番以外のサービス」を利用するハードルが下がったことも要因だと小山田氏は分析する。
「DBで失敗したくないと思うのは当然だ。だから以前は“定番を選んでおけば失敗はないだろう”という消極的な選択をする企業が多かった。現在は『Amazon Aurora』などのクラウドベースのDBやOSS(オープンソースソフトフェア)のDB(以下、OSS DB)など定番以外でも十分な実績を持つDBがあり、ミッションクリティカルな分野でもそういったDBを導入する事例が増えている」
だが、DBを移行するのは大きな決断が必要だ。どのような観点でDBを選べばいいのか。
「想定するワークロードとコストのバランスが重要だ。加えて現状のシステムで妥協していた要件がなかったかを振り返ることを勧める。2022年現在、DBの選択肢は膨大だ。選ぶのは大変だが、これまで妥協していた要件を全てかなえられるチャンスでもある」と話すのは、日本IBMの四元 菜つみ氏(テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部 ストラテジー&ソリューション統括)だ。
「単純にDBといってもオンプレミスで稼働させるのかクラウドで使うのかで異なるし、DBの種類で言えば汎用(はんよう)的なリレーショナルデータベース(RDB)以外にも集計に強いデータウェアハウス(DWH)がある。他にも分散環境を想定したDB、ドキュメント指向データベースなどもあり、多種多様だ」
こうした多様な「DBの選択肢」がある中で、小山田氏によるとEnterpriseDBの「EDB Postgres」(以下、EDB)の引き合いが増えているという。
「OSS DBの中でも日本では特に『PostgreSQL』が人気だ。標準SQLに準拠しており、商用DBで培ったノウハウを生かしやすいためだ。一方でOSS DBのため、企業で利用する場合はサポートが課題になる。この点を解決したのが、PostgreSQLを企業向けに改良したEDBだ」(小山田氏)
EDBは企業での利用を想定して、PostgreSQLの機能を拡張しており、その範囲はセキュリティとパフォーマンスの向上、開発者やDBA向けの機能追加、Oracle Databeseとの互換性確保など多岐にわたる。
PostgreSQLのコミュニティーには充実したドキュメントがあるため、それを使いこなせる企業であればいいが、そうした余力がない企業にとってサポートは不可欠だ。その点、EDBを提供するEnterpriseDBにはPostgreSQLを熟知したITエンジニアがたくさん在籍しているため、充実したサポートを受けられる。
EnterpriseDB はPostgreSQLのコミュニティーとも密接な関係がある。なぜならEnterpriseDBは2004年にPostgreSQLコミュニティーのコアメンバーが設立した企業だからだ。PostgreSQLの最新情報をキャッチアップできるし、PostgreSQLコミュニティーの中心メンバーが関わっているのでOSS DBであってもサポートが不足する心配がない。
「利用者にメリットがあるだけでなく、PostgreSQLに詳しいメンバーの雇用を確保することでPostgreSQLコミュニティーを下支えできるというメリットもある」(小山田氏)
OSS DBとして見た場合のEDBのメリットは分かった。ではラックがEDBを取り扱うことで顧客企業が得られるメリットは何だろうか。小山田氏は次のように説明する。
「顧客にとって一番のメリットは『サポートの手厚さ』だ。ラックはEDBのOEMパートナーとしてIBMとも連携している。プロダクトに関してはIBMが担当し、PoC(概念実証)や導入支援、移行作業、運用などをラックが担当するイメージだ。導入検討の段階から運用までを一貫してサポートする上、懸念点や不明点があればラック、IBM、EnterpriseDBの3社で協力して解決できる」
とはいえ「まだはっきり移行を決めていないから相談するのは気が引ける」という企業もあるだろう。そういった企業にはEnterpriseDBが提供する「移行ポータル」がお勧めだ。Webページに移行元DBのDDLファイルをアップロードすれば、EDBとの互換性を調べることができる。もし互換性がない(EDBにそのまま移行できない)と判定されても代替となる移行方法が表示されるので、具体的な移行計画を立てる際に役立つだろう。
「DBを刷新することは一大決心になるため、二の足を踏む企業は多い。だが実際にEDBを使い始めた企業に話を聞くと『事前に懸念していた大きなトラブルもないし、なかなか使えるね』と言ってくれる」と小山田氏は話す。
EDBの導入実績が増えるにつれ、移行に関するノウハウや関連する支援サービスが充実してきているという。例えば「IBM Cloud」であればEDBのフルマネージドサービスを利用できる。フルマネージドサービスの場合、運用保守の工数をかなり削減できるので運用負荷に悩んでいた企業であれば、ぜひ活用したいところだ。
小山田氏は「導入に関しては机上で考えるだけではなく実機で試すのが確実だ。EDBならそれが容易だ。移行ポータルなど支援サービスも充実している。今まで諦めていた要件も実現できる可能性が出てくるので、DBを見直すチャンスとして捉えてほしい」と念を押す。
IBMの四元氏は移行先DBを考える場合のアドバイスとして「DBそのものだけではなく、インフラ全体を含めた周辺のツールやサービスも併せて検討するのがいい」と指摘する。
「クラウドには性能や機能に応じた多数のサービスがあるものの、『自社が常に最適なものを選べているか』を確認するのは簡単ではない。『Turbonomic Application Resource Management』や『Instana』などIaaS(Infrastructure as a Service)の利用状況をAIが分析し、最適なリソースを推奨するといったツールもあるため活用するべきだ」
最後に小山田氏は「まずは一歩踏み出してみるところが重要だ。これまでとは違う選択肢を選ぶことで、戦略的なIT投資を実現することができる」と話す。
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