4万人を超える社員を抱えるJR東日本。日々の業務で利用するPC、タブレット、スマートフォンは合計10万台を超える。デバイスの運用管理やセキュリティ対策が課題となる中、どのように運用しているのか。その管理方法を聞いた。
4万人を超える社員が使うPC、タブレット、スマートフォン、合計10万台超を日々運用・管理している東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)。デバイスの運用管理やセキュリティ対策が課題となる中、各デバイスを社員情報とひも付けて効率的に運用し、デジタルツール活用の推進やイノベーションを担う人材の育成に取り組んでいるという。JR東日本 執行役員の西村 佳久氏と、包括的なデジタルワークプラットフォームを提供するOmnissa Japan カントリーマネージャーの竹下 雄輔氏が、セキュアなデバイスの管理方法や未来の働き方などについて語り合った。
※以下、敬称略。
――最初に自己紹介と事業の概要をお聞かせください。
西村 JR東日本で信号通信関係の工事設計・施工管理を担う東京電気工事事務所からキャリアをスタートし、鉄道通信系の業務に長く関わってまいりました。2022年から執行役員 イノベーション戦略本部統括を務めています。JR東日本は鉄道を中心にした輸送サービスを根幹としつつ、ホテルやショッピングセンターなどの生活サービス、そしてIT事業やSuicaサービスという3つの事業を柱として展開しています。社員数は単体で4万人超、関東・甲信越から東北までが事業エリアで、約70のグループ会社を擁しています。
竹下 システムエンジニアとしてキャリアをスタートし、エンタープライズ・テクノロジー分野で25年ほどの経験を積んでまいりました。2024年10月にデジタルワークスペースの変革をけん引するOmnissa Japanのカントリーマネージャーに就任しました。Omnissaは、ワークスペース専業ベンダーとして、仮想デスクトップとエンドポイント管理を中心に革新的な製品を提供しており、世界で約2万6000社のお客さまが利用しています。
――JR東日本の経営戦略とデジタル変革のビジョンをお話しください。
西村 JR東日本は2018年にグループ経営ビジョン「変革2027」を発表し、従来の「鉄道を起点としたサービスの提供」から「ヒトを起点とした価値・サービスの創造」に転換するという基本方針を打ち出しました。その戦略の下、中長期的にはモビリティに関する事業と生活ソリューションにつながる事業の2軸経営の実現を目指しています。
私が統括するイノベーション戦略本部は、DX推進部門、R&D部門、情報システム部門が一体となった組織です。ここでは、オープンイノベーションやアジャイル開発といったDXの推進、時速360kmで走る次世代新幹線や地球環境の負荷低減に貢献する水素ハイブリッド電車の開発などのR&D、そしてグループ全体で約2000におよぶ情報システムと、社員が使うPC、タブレット、スマートフォンの運用管理と情報セキュリティに取り組んでいます。
――イノベーションへの取り組みについてお聞かせください。
西村 イノベーションに向けては、デジタルツールの積極的な活用と、イノベーションを担う人材育成がカギを握ると考えています。そのためにタブレット端末を全社員に貸与し、それを活用基盤として、ベーシック、ミドル、エキスパートの3段階に分けた人材育成を図っています。その中で、生成AIによるインバウンド向け旅行プランニングサポートアプリの試験使用や、社内向けの生成AIチャットツールの全社展開、そして外部の先進的な技術やアイデアとの共創などにも積極的に取り組んでいます。
竹下 西村さんのお話から、東北地方から首都圏まで広い範囲にわたって事業を展開する中で、さまざまな分野でチャレンジされていることがよく分かりました。JR東日本の社員は必ずしもオフィスではなく、さまざまなところで仕事をされているわけで、使っているPCやタブレット、スマートフォンなどのデバイスをどのようにして管理するのかが重要になります。そのためには、セキュリティを確保しながら、自由にデバイスを使えるプラットフォームが欠かせません。その中で、社員の皆さんがチャレンジをして、イノベーションが生まれるのだと強く感じます。
――JR東日本の社員が使うデバイスの位置付けや重要性についてお聞かせください。
西村 竹下さんが話されたように、デバイスは「いつでもどこでも、どのデバイスからでも仕事ができて、皆とつながっていること」が究極の姿だと考えています。駅だけでなくさまざまな現場がありますが、タブレットやスマートフォンを利用することで、情報を共有して、どんなところからでも仕事ができることを目指しています。
西村 どんなところからでも仕事ができるようにすると、必然的にデバイスの台数が増えていきます。現在はPC、タブレット、スマートフォンで合計10万台超のデバイスが稼働しており、その管理とセキュリティ対策は重要な課題になっています。
例えば、乗務員や車掌は必ずタブレットを持っていて、万が一忘れたりすると乗務が困難になります。乗務員が携帯する時刻表は、昔は紙でしたが、今はアプリ化されています。輸送障害が発生して電車の運行時刻が変わった場合、紙の時代は輸送指令が電話で乗務員に変更を伝え、乗務員はそれを復唱して確認していましたが、現在はタブレット上でリアルタイムに把握できるようになりました。その他、設備工事保守社員向けの設備位置情報、異常時情報の共有、駅員が行う駅構内のポスター管理などもアプリ化しています。
――JR東日本は、デバイス管理に統合エンドポイント管理ソリューション「Omnissa Workspace ONE」を活用しているとお聞きしました。どのように使われているのでしょうか。
西村 4万人を超える社員がPC、タブレット、スマートフォン、合計10万台超のデバイスを使っています。社員はそれぞれ業務に合わせたデバイスを所持しており、社員によって所有するデバイスが異なります。加えて人事異動が多く、所属先にひも付くポリシー運用がデバイスごとに必要です。アプリの配信も手動で行っていたため、IT部門の負担は増大していました。
このような背景から2020年10月、タブレットの1人1台配布を契機にOmnissa Workspace ONEを導入し、デバイスの統合管理を始めました。各デバイスを社員情報とひも付けて管理することで管理者の運用業務がスリム化された他、Active Directoryとの連携で、人事異動に伴う端末台帳の更新がリアルタイム化されました。さらに、アプリカタログを利用した配信で、煩雑なアプリ利用の承認も必要なくなり、ホワイトリストで管理できるようになりました。
竹下 JR東日本のようなライフライン系のサービスで、非常に高いサービスレベルが求められるお客さまにOmnissa Workspace ONEをご活用いただいていることは非常にありがたいと思っています。プラットフォームベンダーとして、品質やサービスの継続性に対する大きな期待を感じると同時に、サービスレベルをきちんと維持していく重大な責任を改めて感じ、身が引き締まる思いです。2025年度の人事異動も大きな問題もなくクリアできたということで、まずは一安心しています。
今後、ワークスペースという枠組みで考えたときに新たに出てくる課題もあると思います。Omnissaはプラットフォームベンダーとして、JR東日本がWorkspace ONEを運用する上でのメリットをさらに拡大できるようなお手伝いをしていきたいと考えています。
――未来に向けての働き方や、IT環境についての考えをお聞かせください。
西村 先ほども触れましたが、デジタルデバイスは全ての業務に必要不可欠で、さらに使いやすくしていかなければなりません。ユーザーが意識することなく、いつでもどこでも必要な情報にセキュアにアクセスできるネットワーク環境が望まれます。その実現に向けて、現在Omnissaからは管理負荷を減らすための先進的なサービスと専門的な技術アドバイスを頂いています。
将来的にはAIを高度に活用して、さらなる管理負荷の軽減を目指すつもりです。デバイス管理などの社内OA業務のルーティンワークの自動化や、ハイレベルな意思決定をAIがサポートするシステム環境を構築したいと考えています。Omnissaにはセキュリティの確保やAIの活用を軸に、JR東日本の事業成長に役立つ仕組みをご提案いただけるとありがたいです。
竹下 貴重なお話を伺うことができて、とても感謝しています。JR東日本の「人の手を介さずに、AIを活用して、ツールを自動化する」というビジョンは、Omnissaの目指す方向と完全に一致しています。あらゆるデバイスをシームレスかつセキュアに活用できる環境づくりを通じてデジタル従業員体験(DEX)の向上を支援するなど、会社として一丸となってビジョンの実現をサポートしていきたいと考えています。
今後もJR東日本のイノベーションの基盤を支えるプラットフォームベンダーとして、社員の皆さんがさまざまな場所でクリエイティブな仕事ができる、よりよいソリューションを提供していきます。
※本稿は、Omnissa Japanからの寄稿記事を再構成したものです。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2025年6月25日