システム・バックアップを基礎の基礎から:Linux管理者への道(5)(1/3 ページ)
管理者として、システムのバックアップは義務である。では、どのようなデバイス/メディアを利用すべきか? また、Linuxではどうやってバックアップするのか? バックアップについて基礎から見直しておこう。(編集局)
インターネットの爆発的な普及によって、コンピュータは非常に身近な存在になりました。企業で利用するデータのほとんどは、デジタルデータとして保存されています。しかし、デジタルデータはちょっとしたトラブルで一瞬にして失う可能性があることを忘れてはいけません。システム管理者は、ハードディスクに保存されたデータが壊れる/失われる可能性を常に意識し、いかなる状況でも重要なデータが失われないように対策を講じる必要があります。
しかし、リスク管理の意識が低い日本では、予算上一番先に削られるのがバックアップ装置に掛かる経費であることが多いのではないでしょうか。バックアップは何かを生み出すものではないため、何かが起こらなければ無駄な作業と見なされる場合があります。しかし、その何かを少しでも想像すれば、非常に重要なことであることが分かるでしょう。社内のデータが消えてしまうと、企業は業務を続けられません。データの損失によって、実際に業務に深刻な影響を及ぼした事例も多数存在します。
データ消失を防ぐ方法はさまざまですが、最も基本的で絶対に怠ってはいけないのがバックアップです。RAID技術などによってディスクシステムの耐障害性は向上していますが、それだけでは万全とはいえません。例えば、ユーザーが誤ってデータを消してしまった場合やコンピュータウイルスに感染してしまった場合、地震などの災害が起こった場合はRAIDでは対応できません。やはり、バックアップが必要になります。
本稿では、バックアップを実施していくために知っておくべき基礎知識を説明します。
どのようなバックアップデバイスを使うべきか?
一言で「バックアップ」といっても、さまざまな方法が存在します。
- バックアップデータの大きさ
- バックアップ速度
- メディアの信頼性
- メディアの可搬性
- コスト
などを考慮し、状況に適したものを選択する必要があります。
ここでは、バックアップデータを保存するデバイス/メディアを検討してみましょう。
ハードディスク
大容量ハードディスクのバックアップのために、大容量のハードディスクを利用することも一般的になりつつあります。
ハードディスクの長所
ほかのメディアと比較して、格段に高速なバックアップが可能です。また、テープで起こりがちな湿気や熱などによる劣化がなく、クリーニングも不要です。そのため、メンテナンスコストを低く抑えることが可能です。
ハードディスクの短所
可搬性の点でほかのメディアに劣ります(注)。また、システム本体とバックアップのためのディスクが同一のサイトに置かれるため、災害によってディスクが損傷した場合、データの回復はできません。また、ウイルスが侵入した場合やユーザーの操作ミスによるファイルの破壊には対応できません。
光メディア
DVD、CD-R、MOなどがバックアップ用に使われています。
光メディアの長所
テープよりもメディアがコンパクトです。また、テープよりもメディアの劣化が少ないため、アーカイブとして長期間保存するのに適切です。ランダムアクセスが容易で、バックアップデータの中から一部のファイルを取り出すような作業にも適しています。
光メディアの短所
メディア1枚当たりの容量が少ないため、テープに比べて容量当たりの単価が高くなります。特に、大容量のシステム全体をバックアップする場合には不向きといえます。また、ディスクの読み取り/書き込みに時間がかかるのも欠点です。
テープデバイス
バックアップ用途に最も利用されてきたメディアがテープです。Linuxをはじめ、UNIX系の環境では、DDS方式のテープを個別に利用する形態が主流でした。各種のテープデバイス仕様は高速/大容量化を続けていて、1メディア当たり非圧縮で100Gbytesを保存できるものも登場しています。
テープの長所
データ容量が大きく、メディアの容量当たりの単価が安いことが挙げられます。また、可搬性のあるメディアなので、災害時対策のために遠隔地にフルバックアップを保管したり、必要なデータだけをアーカイブとして保管するなど、オフライン管理が必要な用途に最適です。また、ほかのリムーバブルメディアに比べて高速です。世代管理するにも適していて、ファイルサーバなどで「以前削除したデータを復旧させたい」といった要望にも対応しやすくなっています。
テープの短所
テープデバイスが高価であるため、初期導入コストは高くなります。また、ディスクに比べると低速です。テープの性質上、環境によっては劣化が起こる可能性があり、定期的なクリーニングも必要です。複数のテープを交換しながら利用できるライブラリ装置は機械的に駆動する部分が多く、定期的なメンテナンスが必要になります。
テープデバイスの種類
さまざまなメディアの中でも「基本」「定番」といえるのがテープです。テープをバックアップメディアとして検討する機会は多いのではないでしょうか。
しかし、テープには多くの規格が存在します。主要なものを紹介します。
TRAVAN(QIC)
小型のQIC(Quarter-Inch Cartridge:クイックとも呼ばれる)で、容量は最新のもので10Gbytes(非圧縮時)です。ドライブが安価であることや、IDEにも接続できる製品が存在するため、導入しやすく、小規模オフィスやPC用として普及しています。ただし、メディア自体に巻き取りリールが搭載されているため、後述のDDSと比較してメディアのサイズが若干大きく、高価です。
初期導入コストの低さから、選択されることが多い規格です。
DDS(Digital Data Storage)
音楽用のDAT(Digital Audio Tape)をデジタルデータ用に改良したものです。以前からバックアップ用途に利用されている規格であるため、現在でも台数としてはトップです。DDSにはDDS1?4の規格が存在しますが、下位互換性があるため過去のテープが無駄にならないというメリットもあります。
ドライブおよびメディアが比較的安価であるため、小規模システムでは標準規格となっています。過去のテープとの互換性やシェアも好材料でしょう。
DLT(Digital Linear Tape)
現在、最も人気のある規格です。DLTのシェアは急激に伸びていて、テープデバイスの出荷高の70%を占めています。将来的には、テープデバイスの標準になると予想されます。
大容量で高速なテープ装置で、テープ寿命も長く、信頼性が高いとされています。しかし、デバイスやメディアが高価であるため、ハイエンドサーバ向けに選択されることが多い規格です。
そのほかのテープ規格
ハードディスクの大容量化に伴い、テープデバイスの進化が必要とされています。そこで次世代のテープ規格として、LTOやSDLTなどが推進されています。これらにより、将来的には1メディア当たり1Tbytesを超える容量が実現される予定です(すでに200GbytesのメディアがLTOによって実現されています)。
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