SeasarV2によるDBアクセス機能:Seaser Projectの全貌を探る(3)(3/3 ページ)
Seasar(シーサー)は、国内のコミュニティ「The Seasar Project」によって開発が行われているオープンソースプロダクトだ。DI+AOPコンテナとして評価が高いSeasarV2は、J2EE開発の現場にも影響力を持ち始めた。例えば電通国際情報サービスがSeasar Projectを正式に支援することを表明し、2005年6月からは同社による商用サポートサービスが開始されている。本連載では、同プロジェクトの代表的なプロダクトを紹介していく。(編集局)
メソッドとSQL文の分離(S2JDBC)
先ほどの例では、メソッドの内部に直接SQL文を記述していました。しかしこの場合では、SQL文が変更されるだけでもJavaソースコード全体をコンパイルし直さなければなりません。また、DB技術者とJavaプログラマが分業している場合などでは、JavaプログラマにSQL文を書かせたくない、あるいはSQL文を読まれたくない、という場合もあるでしょう。そんなときのために、S2にはSQL文をdiconファイルに記述する方法が用意されています。
この方法でデータベースにアクセスした場合、SELECTの結果を取得する際に、オブジェクトをListにまとめたもので受け取ったり(BeanList)、Mapに各フィールドの値を格納したもので受け取ったり(MapList)、さらには.NET Frameworkで非同期接続時に用いられるのと同様のDataTableオブジェクトで受け取ったりすることができるようになります。ここではその具体的な方法も併せて紹介していきます。
diconファイルに記述するコンポーネント
SQL文をdiconファイル内に記述するとき、SELECTの場合はorg.seasar.extension.jdbc.impl.BasicSelectHandlerクラス、それ以外のINSERT、UPDATE、DELETEの場合はorg.seasar.extension.jdbc.impl.BasicUpdateHandlerクラスをコンポーネント定義に記述します。SQL文はそれぞれのコンポーネントのsqlプロパティの値として記述します。また、SELECTの場合は、問い合わせの結果をどのような形式で取得するのかを、resultSetHandlerプロパティに対して、その処理を行うコンポーネントを記述します。
具体的にSELECT文を設定した例を以下に示します。resultSetHandlerプロパティの値として記述しているコンポーネント定義のBeanListResultSetHandlerクラスは、BeanList形式で問い合わせの結果を取得することを表しています。この形式については、次の項で説明します。
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では、このコンポーネントはどのように実行すればよいのでしょうか。インスタンスはS2Containerから取得すればよいのですが、実行するときには、インスタンスのexecuteメソッドを実行します。このdiconファイルに記述しているSQL文には“?”マークのパラメータは記述されていませんので、このメソッドの引数にはnullを設定します。実行結果はリスト2のインスタンスにプロパティの値が設定されたものがListにまとめられたものとして取得できます。このとき、SQL文での列名と<arg>タグで指定されているBeanのプロパティ名とが同じになるようにしなくてはなりません。データベースの列名とプロパティ名が異なるときは、SQL文内でAS句を用いてBeanのプロパティ名を指定してください。
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次に、diconファイル内にINSERT文を記述した例を示します。これは先述のinsertAccountメソッドで設定したのと同じSQL文が記述されています。このときは問い合わせの結果が返ってくるわけではありませんので、resultSetHandlerプロパティの値を記述することはありません。
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このコンポーネントを用いてデータベースにデータを追加する例を以下に示します。S2Containerから、コンポーネントのインスタンスを取得するのは同じですが、SQL文を実行するexecuteメソッドでObject[]型の引数を設定しています。これはSQL文に記述されている“?”マークのパラメータに値を設定するためです。SQL文内の左にある“?”マークから順に配列の要素を先頭から割り当てていきます。CURDATE()はMySQLサーバの現在日付を表します。
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問い合わせ結果の取得
ここからは、SELECT文の実行結果をどのように取得するかを説明していきます。具体的には、BeanList形式、MapList形式、DataTable形式の3種類の方法を取り上げます。
●BeanListによる結果の取得
まずは先ほど登場したBeanListによる場合です。このときは、SELECT文の問い合わせ結果を1行取得するたびにdiconファイルに記述されたBeanクラスのインスタンスを生成し、列名と同じ名称のプロパティに値を設定していきます。すべての値が設定し終わったら、そのインスタンスがListの要素として追加されます。
●MapListによるデータの取得
MapListというのは、問い合わせ結果の1行分の各列の値を、列名と対にしてMapオブジェクトに追加します。そしてそれをさらにListに追加していきます。この場合、Beanとなるクラスをdiconファイルに設定する必要がありませんし、データベースに設定された列名をそのままアプリケーション内で使用することができ、プロパティ名への置き換えを必要としません。その代わり、データベースのテーブルが変更された際は、この方法を用いたJavaプログラムがその変更の影響をそのまま受けることになります。
シンプルな例として、categoryテーブルに登録されているデータを取得する例を紹介します。まずコンポーネント定義は以下のようになります。これまでBeanListResultSetHandlerクラスを設定していた部分がMapListResultSetHandlerクラスに置き換えられています。
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このコンポーネントにより問い合わせ結果を取得する例を以下に示します。実行結果もその次に示します。この方法は列名や列の数の制限がなく、プログラムもとてもシンプルになりますので、取りあえずデータの取得状況をテストしたい場合にも用いることができます。
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●DataTableによるデータの取得
問い合わせ結果の取得をよりデータベースと同じ状態に近づけたい場合はDataTableを用います。これはデータベースのテーブルと同じように2次元の表形式でデータを保持するオブジェクトで、ここから列名や行数も取得することができます。
DataTableによりデータを取得する場合は、diconファイルにおいて、以下のように、resultSetHandlerプロパティにDataTableResultSetHandlerクラスをコンポーネントとして記述します。このときDataTableインスタンスに付けるテーブル名を<arg>タグの間に記述します。
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DataTableにより問い合わせ結果を取得し、画面に表示させる例を以下に示します。実行結果もその次に示します。SQL文は前項のMapListによる場合と同じとします。diconファイルで指定されたテーブル名はgetTableNameメソッドで取得できます。結果の行数はgetRowSizeメソッド、列数はgetColumnSizeメソッドで取得します。
問い合わせ結果の1行ごとの値はDataRowオブジェクトに保持されていますので、getValueメソッドで各列を取得して画面に表示しています。
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DataTableによるデータの更新
最後に、SQL文を使わずに、DataTableを使ってデータベース上のデータを更新する方法を紹介しておきます。
まずDataTableと関連するオブジェクトを先に紹介しておきます。DataTableの各行を表すオブジェクトがDataRowで、複数のDataTableを1つにまとめたものがDataSetです。DataSet、DataTable、DataRowというクラス名は、C#やVB.NETでおなじみの.NET Frameworkにも存在しており、どちらもその役割はよく似ています。これらのクラスはデータベースやテーブルを模したもので、DataTableにデータを取得した後、データの変更を一括して行うことができるようになっています。
具体的には、まずデータベースを接続し、そのあとテーブルにアクセスします。そして、ataTableにデータを写し取った後にデータベースを切断します。そしてDataTableにあるデータを変更したうえで、再びデータベースに接続したときに、今度はそれをデータベースのテーブルに反映させるのです。これによりデータベース上のデータを一括して変更することができます。ただしDataTable中のデータを変更している間はデータベースに接続していませんので、その最中に別のユーザーがデータベース上のデータを更新したとしても、DataTableの内容をデータベースに反映した時点でそれが無効になってしまう恐れがあります。よって、データの更新を行うタイミングに注意する必要があります。
では、categoryテーブルに「洋服代」というカテゴリを追加する例を紹介します。まず新しい行を追加するときは、DataTableオブジェクトのaddRowメソッドによりDataRowオブジェクトを取得し、そこにデータを追加します。そしてデータが追加されたDataTableオブジェクトをDataSetにまとめて、SqlWriterクラスを用いてデータベース上にその内容を反映します。SqlWriterクラスは、diconファイルでの定義により、あらかじめデータベースの接続先となるDataSourceが設定されています。
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今回は、データベースの接続設定、SQL文をdiconファイルに記述し、Javaコードと完全に分離できるS2の特長を紹介しました。次回は、Junitを拡張したS2のテストフレームワーク「S2Unit」をご紹介します。
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