サービスとしてのITインフラ:[Analysis]
サーバ統合はセキュリティやIT統制の観点からも非常に意義が大きい。サービスとしてのITインフラ――IaaSは、サーバ統合を促進するカギとなる。
気が早いが、「サービスとしてのITインフラ」の流れを2007年のITトレンドの1つとして挙げたいと思う。サービスとしてのITインフラとは、業務部門が即座にアプリケーションの導入あるいは利用を開始できるように、IT部門あるいはIT関連サービス業者が環境を提供するというIT運用形態を指す。「サービスとしてのソフトウェア」(SaaS)に触発されて私が作ってみた言葉だ。以下では仮に「IaaS」と略称する。
IaaSは広い意味を持った概念で、SaaSやASPも含む。しかし、アプリケーションまでは提供せずに仮想サーバ環境を提供する方式が、IaaSの中心的利用形態として普及する可能性が高い。IaaSの消費者は企業の業務部門。そして提供者は同じ会社あるいは親会社のIT部門、あるいは有償サービスを提供する事業者だ。
IaaSが使用する技術は目新しいものではない。2〜3年前にも「ユーティリティ・コンピューティング」のような、IaaSに似たコンセプトを提唱する概念が提唱されたことがあり、この頃と比較して大きな技術的な変化があったとはいえない。しかし、最近充実してきた容易な拡張や構成変更が可能なストレージ製品を活用し、アプリケーション、サーバ、ストレージの3レベルの仮想化技術と統合管理技術を生かすことで、2〜3年前よりはるかに簡単に、かつ迅速にIaaSを構築できるようになった。
IaaSはサーバ統合と直結する。各業務部門がそれまで自らのイニシアチブで購入し、運用してきたサーバをIT部門に統合し、仮想サーバとして運用することになる。日本では業務部門がIT利用における自由度を奪われたくないという傾向が強いこと、そしてIT部門も面倒な作業を抱え込みたくないことから、サーバ統合は進まないといわれてきた。しかし、仮想サーバなら、業務部門はニーズが生じたらすぐに必要なリソースを入手できるようになる。それぞれの仮想サーバ環境は各業務部門のコントロール下に置くことができるため、自由を奪われることがない。IT部門の側でも、関連コストを可視化して、各業務部門に請求する仕組みさえ確立していれば、単に面倒な管理業務が増えるということにはならない。
サーバ統合はセキュリティやIT統制の観点からも非常に意義が大きい。シンクライアントが再評価され、導入が進んでいるのと同様に、現実における利用が広がっていく可能性は高い。
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