「短期型」「長期型」インターンのメリット・デメリット:インターンシップへ行こう(1)
インターンシップとは何か。連載「インターンシップへ行こう」第1回は、インターンシップに参加するメリットとその心構え、自分に合ったインターンシップの見つけ方、インターンシップを受け入れる企業の狙いを解説する。
一般にインターンシップとは、大学生・大学院生が、自分の専攻や将来のキャリアと関連した就業体験を一定期間行う制度といわれている。大学3年生・大学院1年生が、秋から本格化する就職活動に備え、春休みや夏休みといった長期休暇を利用して行うことが多い。アルバイトではないので、基本的に給料は出ない。研修という扱いである。ただ、交通費や手当てを支給している企業がほとんどである。
インターンシップの起源をたどると、「1906年に米国のシンシナティ大学工学部長 ヘルマン・シュナイダー(Herman Schneider)博士の創案で、大学と地元の工作機械メーカーの間で行われたのが始まり」(引用:日本インターンシップ推進協会)である。同Webサイトによると、日本でインターンシップ事業が始まったのは1990年代後半。わが国におけるインターンシップの歴史はまだ10年足らずだ。
しかしこの10年でインターンシップという言葉はとても普及した。就職を控えた多くの学生が、実社会への想像と現実のギャップを埋めるべく、実践的な社会勉強としてこの制度に参加している。だが、厳しいいい方をすれば、すそ野が広がるということは、明確な目的や意欲なく参加する人も増えたということだ。
「インターンシップという言葉は知っているがアルバイトと区別が付かない」「周りがみんなやっているから何となくやっておいた方がいいと思う」「インターンシップをやっておけば就職活動で有利そう」……。
本記事では、漠然とインターンシップへの参加を検討している学生の皆さんに向け、インターンシップ参加のメリットと心構え、自分に合ったインターンシップの見つけ方、受け入れ先企業の狙いを解説する。
インターンシップは想像と現実のギャップを埋めるもの
「実践型インターンシップナビ」で、大学生・第二新卒の就業支援をするピグマ 代表取締役 兼 コーチの太田智文氏は、インターンシップの意義について次のように述べる。「内定への不安がある、やりたいことが漠然としている、この2つの不安を解消するのがインターンシップ」(太田氏)。「『想像』を『現実』に変えるもの」(『インターンシップで志望の業界・職種に内定する方法』、太田智文著)。就業体験をとおして、想像していた仕事の内容を現実のものとして理解でき、自分がやりたいことかどうかが分かる。百聞は一見にしかず、それがインターンシップの醍醐味(だいごみ)だ。
ここで気を付けないといけないのは、インターンシップで適職が見つかるとは限らないということ。太田氏は「適職というのは社会人でもなかなか分からないもの。それを数カ月の就業体験で知るというのは難しいと思います。ただ、インターンシップをとおして働くということが何かは分かるでしょう。また、自分にとって『これは嫌』『これがやりたい』といった好き嫌いは見えてくると思います」と話す。
インターンシップ情報サイト「インターンゲート」を運営する、トランジット 代表取締役 矢原香織里氏は「適正よりもむしろ、リアルに自分を知るいい機会」だと述べる。インターンシップに参加した学生からの感想を聞くと、「自分にはもっとできると思ったが、至らない点が多かった」「社会がこんなに厳しいとは思わなかった」と自分に足りないものや反省点に気付く学生が多いのだという。「参加した学生は夢と現実の狭間にあるものに気付くことができてよかったと話します。また、やりたい仕事に就くために、しなければならない努力が分かった、という声は多く寄せられます」(矢原氏)。
自分に何が足りないのかが分かれば、就職活動までにそれを補う努力ができる。インターンシップは苦手を克服する絶好の機会といえる。矢原氏によると、最初から苦手なことを克服する目的でインターンシップに参加する学生も多いという。「コミュニケーション能力(特にプレゼンテーション力)を身に付けたい」「マーケティング力・分析力を付けたい」がインターンシップ参加の動機として多いそうだ。ほかには「そもそも働くということを体験してみたい」「ビジネススキルやマナーを学びたい」(太田氏)もあるという。
インターンシップは「短期型」と「長期型」の2種類
上記に挙げた目的を果たすのに適したインターンシップとはどのようなものか。
インターンシップには大きく分けて、「短期型」と「長期型」の2種類がある。短期型とは、上場企業や大手企業が実施する1〜2日、長くても2〜3週間のものを指す。企業の広報活動やリクルーティングの一貫で行われる。世の中に浸透しているのがこのタイプだ。一方、長期型とは、3カ月〜1年のもの。受け入れ先に大手企業は少なく、ベンチャー企業が多い。こちらは必ずしもリクルーティング目的とは限らない。
前者で得られるのが就業「体験」なら、後者は就業「経験」に近いといえる。何かを学びたい、社会を知りたいと思うなら、ある程度就業経験が積める長期型への参加をお勧めする。
「短期型は自社のアピールに近いものが多く、実業というよりは会社の概要やビジネスモデルを体系的に理解してもらう内容がほとんどです」(矢原氏)。短期型では、学生同士のビジネスコンテストやグループワークが多く、実社会との接点は少ないといえる。
一方、長期型インターンシップを実践しているベンチャー企業では、「小さな会社だと1つのフロアに経営者、営業、企画とさまざまな部門の人がいます。会社の成り立ち、いろいろな部門の仕事内容、経営者の考えなど、企業活動を全体的に見渡す経験が積めます」(矢原氏)。
その分、長期型は学業との両立を強いられる。「特に昼間に授業が多い学生、授業が質・量ともにハードな理系の学生は、物理的に長期型の参加が難しいかもしれません」(矢原氏)。ただし、SEやプログラマはフレックス制を取っている企業が多い。BtoBの営業は昼間働けることが必須条件だが、SEやプログラマは夕方や夜からの出勤でもOKという企業がある。学業との両立がハードであることには変わりないが、昼間に授業があって参加できないという学生には、フレックス制のインターンシップはチャンスである。ちなみに、矢原氏によると、「何らかのプログラミング経験」のある学生は、企業からの需要が高いとのこと。
自分に合ったインターンシップの見つけ方
一概に長期型が良いというわけではなく、自分の目的や趣向に合わせて短期型か長期型かを選択してほしい。
選び方のパターンとしては大きく分けて2つある。長期型と短期型、それぞれにメリットがあり、両方足せば相互補完的になるため、できれば両方体験することをお勧めする。くれぐれも「大手企業のインターンシップに参加すれば就職活動で有利」という安直な考えには至らないでほしい。重要なのは、インターンシップ先企業の規模やブランドではなく、あなた自身の目的と成果である。
(1)業界のことが知りたい
業界や会社を体系的に知りたい、比較したいのなら、短期間で見学できる大手企業のインターンシップに参加してみよう。「学生さんは何でも知ることが重要です。いろんな短期型インターンシップに参加してみましょう。業界が決まっている人でも、自分のイメージが本当かどうか知る意味で、大手のインターンに行くのはいいと思います」(矢原氏)。
(2)職種のことが知りたい
業界や会社の中にどういう仕事があるのかといった職種のことは、長期型のベンチャー企業インターンシップで知ることができる。小さな会社では、部門ごとの隔たりが少ないため、希望すれば与えられた仕事以外のことにも携わるチャンスがある。また、「ベンチャー企業は大手企業のプロパー社員と違い、中途で入ってきている人が多いです。そうした人たちに前職について聞けば、プチOB/OG訪問になります。あなたが興味のある職種に就いている友達を紹介してくれることもあるでしょう」(矢原氏)。
インターンシップ案件は、大学の就職課やゼミ、ナビサイト(6〜9月まで期間限定が多い)、紹介会社で見つける方法が一般的だ。
ただし、どこの企業でも見せられない職種はある。例えば人事や財務。経理の伝票くらいならまだしも、人事考課などは普通の社員でも見られないため、こうした職種に興味のある人は、OB/OG訪問で知るほかはなさそうだ。
参加する時期に決まりはない
インターンシップに参加する時期について、太田氏は「大学3年・大学院1年の夏だと遅いです。早ければ早い方がいいです」と述べる。矢原氏も、「職業意識を芽生えさせること、働くことを経験するのに大学3年生・大学院1年生という決まりはない」と述べる。インターンシップ案件も、長期型であれば通年で募集している。
近ごろは内定者インターンシップを経験する人が増えている。「学生にとっては、4年生で授業が少なく参加がしやすい、受け入れ先企業にとっては学生がコンスタントに時間をさいてくれてうれしい、また、就職活動前の学生と比較すると就職活動後の学生の方がしっかりしているので安心」(矢原氏)と、双方のメリットが合致している形だ。
ITエンジニアの場合、研修期間でビジネススキルとテクニカルスキル両方を学習しなければならず、研修密度が非常に濃い。内定後の時間のあるときにインターンシップをとおしてビジネススキルやマナーだけでも身に付けておけば、研修ではテクニカルスキル習得に集中できるかもしれない。
企業は学生に「潜在能力」より「即戦力」を求める時代……
時代の変化とともに新卒採用を行う企業の意識は変化している。太田氏は著書『インターンシップで志望の業界・職種に内定する方法』で、「いま企業が求めるのは、より早く『即戦力』になる人材」と述べている。太田氏は「即戦力になるには、実社会で働くことが最も近道」「インターンシップが内定への最短ルート」としている。学生時代から働くことや、キャリアプランについて考える姿勢が求められているのだ。
だが、厳しい世の中だと悲観的に考える必要はない。インターンシップは学生の特権。この特権を利用し、自分に適性はなさそうだがやってみたいということに、あえてチャンレンジするのも良いだろう。就職してから失敗するよりよっぽどましだ。インターンシップは自分の可能性に気付くことができるチャンス。やりたいことや学びたいものが見つかれば、その後の学生生活がさらに充実したものになるに違いない。
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