いまさら聞けない「CMS」超入門:独断と偏見のCMS比較(1)(3/3 ページ)
サイト立ち上げに、内容を効率的に管理する「コンテント管理システム(Content Management System)」導入は不可欠。CMS製品を開発するUEIの清水氏が分類するCMSの3ユーザーと9つの機能とは?
□ 基準のまとめ
CMSを選ぶ際に明確にしておいた方がよいことを、下記リストにまとめてみました。
- サイトの目的
告知サイト/コミュニティサイト/販売サイトのどれか - 対応環境(編集)
Windows/Mac OS X、ケータイ(iPhone/Android)など複数選択可能か - 対応環境(読者)
Windows/Mac OS X、ケータイ(iPhone/Android)など複数選択可能か - サイトの編集者
社員や読者、外部のライターなど - 編集者の人数
1人か、5人程度か、数千人規模か - サイトの読者
社員や一般消費者、会員など - 読者の人数
想定される読者の人数。100人以下か、1000人以下か、1万人以上か、10万人以上か - サイトのダウンタイム
絶対に落ちてはいけない/30分以内なら許せる/24時間くらいなら許せる/1週間くらい落ちてもよい - 必須機能
以下の機能から選択- コンテント入力機能
- テキスト入力
- 画像アップロード
- 動画アップロード
- 音楽アップロード
- WYSIWYG編集
- ケータイなどからのメール投稿
- コンテント出力機能
- HTML出力
- XML出力
- JavaScript対応
- Flash連携
- ユーザー環境ごとに画像
- 動画などを出し分ける機能
- ケータイサイト出力
- ユーザーがサイト内を検索する機能
- 指定した時間にコンテントを更新/取り下げ
- カスタマイズ可能か
- 複数の編集ユーザーのワークフロー管理
- 編集者の管理権限設定
- 更新履歴管理
- サイト全体の履歴管理
- コンテントやページ単位での履歴管理
- 任意の時点への巻き戻し機能
- 会員管理機能
- Windows/Mac OS Xからの会員管理
- ケータイの会員管理
- 課金機能
- クレジットカード/代引き課金
- ケータイ公式サイト課金
- ショッピングカート機能
- アクセス解析
- サイト全体のアクセス解析
- ページ単位のアクセス解析
- アンケートとのクロス集計解析
- 負荷分散
- 読者ユーザー数1万人以上、編集ユーザー数1000人以上を目安として検討の必要あり
- コンテント入力機能
CMSの導入コストと運用コスト
現在、世界にはかなりの数のオープンソースのCMSが存在します。例えば世界のCMSの情報を集めたサイト、「OpenSourceCMS」を見ると、PHPベースのものだけで200以上のCMSが存在しています。
十分な技術的知識があれば、これらのオープンソースのCMSを導入すれば、お金はほとんど掛けずに導入できそうです。ですから、オープンソースのCMSに注目が集まりがちです。
□ オープンソースは導入コストの一部が無料なだけ
けれども、実際にはそれは導入コストの、ほんの一部でしかありません。それをセットアップする人件費や、サイトのデザインをする人件費も掛かります。サーバの購入費も必要です。
CMSは導入コストばかりに着目されて語られがちですが、サイトによっては導入コストが格安でも、運用コストがばかにならないことも多いのです。
□ オープンソースはカスタマイズが難しい
また、オープンソースのCMSの場合、設置と導入は簡単だけれども、カスタマイズが難しいものがほとんどです。ブログエンジンのように、カスタマイズがほとんど必要ないCMSなら導入は容易ですが、カスタマイズが必要なサイトの構築・運用にはあまり向いていません。
カスタマイズ性を重視したオープンソースのCMSももちろんあります。ただし、カスタマイズするには専門の技術者やプログラマが必要になります。また、カスタマイズをしようとしたときに商用CMSの方が技術的なサポートを受けやすい、ということもあります。
□ 結局は、運用コスト
社外向けのサービスを自社で管理しようとすると、ウイルスやハッカーからの攻撃があったり、人気が出てくると負荷が掛かってきたり、長く運用しているとハードウェアが故障したりして、これを維持するのにむしろ時間とお金が掛かります。
長期的に見れば、サイトは導入コストよりも運用コストの方をより多く払うことになります。無料で使えるオープンソースのCMSよりもASP/SaaS形式の商用CMSの方が、結果的にはコストを節約できるケースも少なくありません。
例えば、ダウンタイムの短さなどが要求されるケースです。一般の企業で24時間人間がサーバを監視するというのは非現実的ですが、商用のASP/SaaSサービスの場合、多数のサイトを管理しているので無人・有人を組み合わせた監視体制を敷いていたり、万一の際に使うバックアップサーバを用意している場合があります。
平均時給を1000円と考えても、24時間の有人監視には1カ月で72万円も掛かってしまいます。実際には1人で24時間365日監視するのは不可能ですから、三交代制などになって、管理コストはもっと増えます。
□ 5000人が分水嶺?
目安として、ユーザーが5000人以上のサイトであれば、無料CMSを運用するよりは商用CMSに切り替えた方が得かもしれません。5000人ものユーザーを抱えると、日々の問い合わせだけで相当な負担になります。
ダウンタイムが長くなると、せっかくのユーザーが離れていってしまいます。
□ 商用といっても料金はピンキリ
商用のCMSといっても、実際に掛かる料金は数千円から数百万円までさまざまです。ですから選択肢としては、自分たちの人件費よりはるかに低コストで導入することもできるのです。
次回からは、オープンソースのCMSを中心に各種CMSの紹介・比較をしていきます。お楽しみに。
著者プロフィール
清水 亮(しみず・りょう)
株式会社ユビキタスエンターテインメント 代表取締役 兼 CEO
98年、電気通信大学在学中に米Microsoft corp.初のゲーム機向けオペレーションシステム WindowsCE for Dreamcast SDKの開発に携わる。99年同大学を中退し、株式会社ドワンゴに入社。同社研究開発部門の立ち上げに参加する。同社で初となる携帯電話コンテンツ「釣りバカ気分」を企画・開発し、その後同社アーキテクトとしてコンテンツ開発部隊を率いる。2002年3月にカリフォルニア州サンノゼで行われたゲーム開発者会議(GDC)をきっかけに海外市場に目覚め、同年7月より単身渡米。米DWANGO North America社のコンテント開発担当副社長として コンテンツ開発を行う。2002年末に帰国し、2003年より現職。2005年、IPAより天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される。
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