あなたの運用管理が十分にうまくいかないワケ:ZABBIXで脱・人手頼りの統合監視(1)(3/3 ページ)
この連載では、オープンソースの運用監視ソフトウェア「ZABBIX」ではどんなことができるのかを、実際の使い方とともに紹介していきます(編集部)
統合監視ソフトウェアが提供する機能
システム監視にはいくつかの種類があることは前述のとおりですが、それらすべての監視を効率よく行うための方法として統合監視ソフトウェアの利用が挙げられます。
統合監視ソフトウェアとは、以下の機能を備えたソフトウェアです。
- 専用の監視サーバからネットワークを介して複数のサーバやネットワーク機器の死活監視、リソース監視、アプリケーション監視を行い、収集したデータを一元管理する監視機能
- 収集した監視データが正常か、障害を検知するための閾値設定機能
- 障害発生時/復旧時に管理者に通知を行う通知機能
- 専用の管理インターフェイスから、収集した情報の履歴やグラフの表示、監視設定を行う表示機能
これらの機能を備えた統合監視ソフトウェアには、商用/オープンソース含めさまざまなものがあります。商用の製品は大規模システム向けが多く、機能も豊富ですが、導入には費用が掛かります。ここではライセンス料が掛からないことから導入コストを削減することができ、手軽にインストールして利用し始めることができるオープンソースの統合監視ソフトウェアを取り上げ、解説を行います。
OSS監視ツールの代表、NagiosとZABBIX
オープンソースの統合監視ソフトウェアにもさまざまなものが存在しますが、新旧の代表的なソフトウェアである「Nagios」と「ZABBIX」を取り上げ、比較を行います。
Nagiosはオープンソースの統合監視ソフトウェアの中でも歴史のあるソフトウェアであり、利用実績や日本語の情報が多くあることが特徴です。対してZABBIXは比較的後発のソフトウェアで、Nagiosに比べると利用実績や日本語の情報は少ないですが、Webインターフェイスを利用した設定/表示や監視機能の豊富さ、RDBMSを利用した監視データの長期保存/グラフ化など、機能面でのメリットがあります。
NagiosとZABBIXの機能比較表を表1に示します。
項目 | Nagios | ZABBIX | ||
---|---|---|---|---|
基本機能 | 開発言語 | C | C、PHP | |
サーバOS | Linux/UNIX | Linux/UNIX | ||
監視対象OS | Linux/UNIX/Windows | Linux/UNIX/Windows/BSD/Mac OS X | ||
管理インターフェイス | Webブラウザ | Webブラウザ | ||
監視設定方法 | テキストファイル | Webブラウザ | ||
導入実績 | ◎ | △ | ||
日本語情報 | ○ | △ | ||
情報収集機能 | 稼働監視 | 監視対象のサーバ、アプリケーションの稼働を監視することができるかどうか | ○ | ○ |
リソース監視 | 監視対象のリソースを監視することができるかどうか | ○ | ○ | |
SNMP監視 | SNMPの監視を行うことができるかどうか | ○ | ○ | |
保存形式 | 情報収集したデータの保存形式 | テキストファイル | RDBMS | |
表示機能 | 障害発生有無の一覧表示 | すべての監視対象の障害の有無を一覧で表示することが可能かどうか | ○ | ○ |
過去のデータの表示 | 情報収集機能で取得した過去のデータを表示することが可能かどうか | × | ○ | |
グラフ作成機能 | リソースグラフを作成するとこが可能かどうか | × | ○ | |
マップ作成機能 | マップの作成が可能かどうか | ○ | ○ | |
障害検知通知機能 | 閾値の設定 | 閾値の設定が可能かどうか | ○ | ○ |
通知方法 | 利用可能な通知手段 | メール、スクリプト実行(マネージャ側) | メール、SMS、Jabber、スクリプト実行(マネージャ側)、スクリプト実行(エージェント側) | |
その他監視機能 | Web監視 | ○ | ○ | |
データベース監視 | △(プラグインで実装) | ○(標準機能) | ||
サービス監視 | △(個々の監視項目ごとの監視) | ○(監視項目のグループ化/稼働率計算機能) | ||
表1 NagiosとZABBIXの機能比較表 |
この2つのツールの基本機能における大きな違いは、管理者が監視設定を行う管理インターフェイスです。Nagiosではテキストファイルに設定を保存するのに対して、ZABBIXではWebインターフェイスから設定を行います。
情報収集の基本的な機能は双方ともに大きな違いはありませんが、収集したデータの保存方法が異なります。Nagiosは障害が発生したかどうかの履歴をテキストファイルに記録するのに対し、ZABBIXは収集した情報自体をRDBMSに蓄積します。RDBMSの管理が必要になりますが、後述する過去のデータを参照することで、次に述べる表示機能に活用することができます。
表示機能に関しては、グラフ機能に大きな違いがあります。前述のとおりNagiosが保存するのは障害履歴のみであり、作成できるグラフも障害履歴に関するもののみです。一方ZABBIXでは、RDBMSに保存した収集データを用いて詳細なグラフを作成できます。長期間にまたがるグラフを作成することでリソース使用状況の傾向分析や障害分析に役立てることができます。
障害検知・通知機能についても、ZABBIXの方が対応している通知方法が豊富です。特に、監視対象にインストールしたエージェントにスクリプトを実行させることが可能であることが特徴的です。このように機能的には充実しているZABBIXですが、Nagiosと比較して後発のソフトウェアであるため、日本語のドキュメントや技術情報、導入実績がまだ少ないことが課題といえるでしょう。
本連載では、Webインターフェイスで設定するため容易に扱え、稼働監視、リソース監視、SNMP監視とリソースのグラフ化を統合的に行うことができるZABBIXを取り上げ、インストールから活用方法までご紹介します。次回はそのインストール方法を紹介しましょう。
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