オープンソースハイパーバイザー「Xen 4.20」公開 セキュリティとパフォーマンスが向上:クラウド、組み込みシステム、エンタープライズアプリ向けの機能強化が進展
Linux Foundation傘下のXen Projectは、オープンソースハイパーバイザーの最新バージョンとなる「Xen 4.20」をリリースした。
Linux Foundation傘下のXen Projectは2025年3月5日(米国時間)、オープンソースハイパーバイザーの最新バージョンとなる「Xen 4.20」をリリースしたと発表した。
Xen 4.20では、セキュリティの強化、パフォーマンスの最適化、x86およびArmアーキテクチャサポートの拡張、RISC-VおよびPowerPC(PPC)アーキテクチャの初期段階サポートが適用されている。
Xen Projectのコミュニティーマネジャーを務めるケリー・チョイ氏は、「Xenの開発では、セキュリティとパフォーマンスを中心に据えている。Xen 4.20は、仮想化技術における重要なマイルストーンであり、企業、クラウドサービスプロバイダ、ハードウェアベンダーに、最新のエンタープライズインフラの要求を満たす高性能ソリューションを提供する」と述べている。
Xen 4.20では従来バージョンと比べて、イントロスペクションツールのパフォーマンスが向上し、デバイスパススルー機能とキャッシュカラーリングが改善されている。また、AMDの「Zen 5」(Ryzen 9000シリーズ)プロセッサへの最適化により、最新のエンタープライズアーキテクチャのサポートが強化されている。使いやすさとパフォーマンスに重点が置かれ、仮想マシンのシームレスな管理も可能になり、包括的な脆弱(ぜいじゃく)性軽減によってシステムセキュリティも強化されている。
Xen 4.20の主な機能強化点は以下の通り。
セキュリティとコード品質
- MISRA-C準拠の拡張:GitLab CIにECLAIR MISRA Cスキャナーを統合し、90のルールを強制し、不当な違反はゼロになった
(※)MISRA-Cは、車載ソフトウェア開発のためのC言語のコーディング規約。MISRA(Motor Industry Software Reliability Association)が開発した
- GitLab CIでx86、Arm64、RISC-V、PPCに対してUBSAN(Undefined Behaviour Sanitiser)をデフォルト(既定)で有効にした
- 既存の2つのファジングハーネスをOSSFuzzに統合した
ハイパーバイザーコア
- blkifプロトコル仕様における512b以外のセクタサイズについて修正した
- libxenguestのドメインビルダーがセカンダリーモジュールの圧縮を解除しなくなった
- 一般コードとアーキテクチャコードの分離の改善を継続し、ビットスキャンとハミングウェイトのためのビット操作ヘルパーを改良した
x86
- Intel CPUでは、Paging-Write Featureのサポートにより、ゲストのページテーブル更新をより効率的に監視できるようになり、EPT(拡張ページテーブル)違反のオーバーヘッドが削減された
- AMD Zen 5 CPUをサポートし、SRSO(投機的リターンスタックオーバーフロー)攻撃に対する脆弱性が軽減された
- xAPICフラットドライバの変更により、外部割り込みに物理宛先モードを使用するようにした
- EFIファームウェアのデフォルト構成を使用して、Xenの起動(および再起動)機能を向上させた
Arm
- パフォーマンス最適化のためにLLC(Last Level Cache)カラーリングをサポートした
- Armv8-Rアーキテクチャを実験的にサポートした
- NXPの「S32G3」車載ネットワークプロセッサファミリーとLINFlexD UARTドライバをサポートした
- 間接メッセージのサポートを追加し、SPMCへのRXTXバッファ伝送を強化して、FF-Aを改良した
- 共有メモリを使用してSMC上でのSCMIリクエストの基本的な処理を可能にした
- Xenの安全認証に向けて43の要件が追加された
RISC-VとPowerPCのサポートの進展(開発段階)
- RISC-V:デバイスツリーマッピングとメモリ管理の初期化を強化した
- PowerPC:初期起動割り当てを改良した
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