インターンシップ経験の振り返り方:インターンシップへ行こう(3)
インターンシップに参加したという事実だけでは、面接官へのアピールにはならない。重要なのは、あなたがインターンシップで何を経験したか、なぜその選択に至ったのか、そこから何を感じたのかを振り返ることだ。深い自己分析が魅力的な自己PRにつながる。今回は、インターンシップを振り返るための7つのポイントを紹介する。
インターンシップの経験の後は、いよいよ就職活動が本番を迎えます。インターンシップで得た経験を面接の場でうまくアピールするために、まずは体験内容を振り返っておきましょう。
インターンシップは就活のネタになる?
インターンシップを経験した学生の中には、就職活動の面接でネタになると思っている人が多くいます。しかし、実際には、企業がインターンシップというキーワード自体に強い興味を持つことはあまりなくなってきています。
特に、大手企業が実施する短期のインターンシップは参加している学生が多く、内容は会社説明会形式や学生同士のプロジェクトなど実務に直結するものではないため、インターンシップに参加したか否かという事実を伝えるだけでは、面接時での印象に残るアピールにはなりません。ともすれば面接官に、「就職活動のネタにしたくて参加したのでは?」と思われてしまうことがあります。
インターンシップと自己分析
とはいえ、せっかく経験したインターンシップですから、効果的にアピールしていきたいものです。鍵となるのは、「そもそもなぜインターンシップに参加しようと思ったのか」「インターンシップ経験を通じて何を得たのか」。このように原点に立ち返って考えることが出発点です。インターンシップ終了後から就職活動までの間は、自分が体験した内容を振り返る準備期間としてみてください。
また、自分だけで振り返るのではなく、インターンシップ先の社員や一緒に参加した仲間などに、自分の言動や業務などに対するフィードバックをもらうことも自己評価の重要な要素となります。特に社員からのフィードバックは重要です。業務に対する自己評価だけでなく、大人から自分がどう評価されているのかを知ることで、就職活動においてもアピールするポイントが明確になります。自分が有効だと思っているアピールポイントが、面接官から見たときに必ずしも同じように有効なアピールと映らなかったり、アピールした内容が入社後にどういった場面で生かすことができるのかが伝わらないことがあるからです。インターンシップを通じて、仕事の内容や業界の知識を得たとしても、アピールするポイントがずれていては意味がなくなってしまいます。
就職活動では、エントリーシートや面接を通じて、いままで自分が体験してきた事柄について、なぜその選択に至ったのか、そこから何を感じたのかなど、あなたの内面が深く問われます。こうした自己分析は就職活動で最も大切な作業ですし、当然時間がかかります。就職活動が始まってからでは、片手間になってしまいますので、集中できる時間を早めに十分用意しましょう。
自己分析に時間を割かずに自分のことを分かったつもりでいると、就職活動を進めていくうえで、軸がぶれたり、情報に振り回されることになりかねません。インターンシップを経験した際にも感じることかもしれませんが、自分のことを分かっているつもりでも、他人に伝えることは思った以上に大変です。しっかり準備しましょう。
自己分析の方法
振り返りの作業は、自分の頭の中で考えるだけでなく、紙に書き出すことが重要です。分かったつもり、できるはずという根拠のない自信は、エントリーシートを書く際や面接の際には命取りになりかねません。自分のことでありながら、きちんと説明できなかったり、うまく伝わらないという痛い失敗を招くことになります。
ただし、自己分析を書き出すのは紙であれば何でも良いということではありません。就職活動中だけでなく、社会に出てからも立ち戻って確認ができるよう、保管に優れた大学ノートを用意しましょう。ルーズリーフは便利ですが、書き間違えた際、新しい物に容易に書き直せるところが、自己を振り返る作業には向いていません。初めから考えがまとまることはそうそうありません。今日思ったことと、明日思うことが違ってくることもあります。その過程もきちんと記録し、どんどん考えをブラッシュアップしていくことが必要になってきます。大学ノートを使用する目的とも重なりますが、自分が一度思ったことは紙に落とし、そして消さないことが自己分析では大切です。シャープペンシルではなく、ボールペンを使用して消した履歴も残るようにしておくと、自分の思考の過程が見えやすくなります。
インターンシップを通じて感じたことを書き出してみると、積極的な行動だけでなく、消極的になってしまった行動なども見えてきます。人には何かを選択し行動に移す際、意識的にも、無意識的にも基となる考えがあります。輝かしい経験だけでなく、消極的になってしまった内容についても、行動の基となる自分の考え方を探ることが重要です。
インターンシップを通じて自分が取った行動を振り返りながら、「何となく」という答えではなく、「○○だから○○した」という因果関係を見つけてください。その因果関係について、また因果関係の矛盾については、面接時に必ず質問されると考えた方がよいです。因果関係をしっかり理解していないと、話に信憑性がなくなり、面接官に納得してもらうことが難しくなります。
さらに、自分ではなかなか気が付かない部分ですが、「○○なはずなのに、○○しなかった」(例:積極的なタイプなのに、リーダーに立候補しなかった)ということも出てくるはずです。実はこの矛盾の方が、面接では深く聞かれる部分です。自分自身が矛盾点に気が付かず、面接でしどろもどろになってしまう学生が多くいます。
インターンシップを振り返る7つのポイント
- インターンシップに参加しようと思った理由
- なぜその企業のインターンシップに参加したのか
- 経験した内容(※実践型インターンシップ参加者は細かい業務内容)
- プロジェクトを進行/業務を行ううえで工夫した点
- プロジェクトを進行/業務を行ううえで感じたこと
- インターンシップに参加したことで成長できたこと、気が付いたこと
- インターンシップで感じた社会とのギャップ
インターンシップ経験でアピールすべきこと
インターンシップに参加した人は、アピールポイントを業務内容そのものや獲得したスキルにフォーカスしがちですが、スキルについては長年業務に携わっている社会人にかなうことはありません。就職活動では、仕事をするうえでの責任感や物事の考え方、とらえ方、課題にどのようにアプローチするのかなど皆さんの内面とそれをどう的確に伝えられるかというコミュニケーション力が見られます。
繰り返しになりますが、インターンシップの体験について振り返った内容を自己PRとして使用する際に気を付けたいのは、そもそもアピールとして成立しているかどうかです。インターンシップに参加したこと自体がアピールにならないことは、前述のとおり。特に大手企業の短期インターンシップの場合は、実務を経験するものが少ないため、インターンシップを通じて仕事の大変さが実感できたなどという内容でアピールすることは効果的ではありません。
大手企業のインターンシップを経験した人は、チームワークや計画性、論理性などがアピールにつながりやすく、それらを軸に、自分が工夫した点や感じたことをアピールするとよいでしょう。また、インターンシップの内容が実務ではないため、憧れやイメージが膨らんでしまい、アピールポイントを企業の魅力や自分のやりたい仕事にのみフォーカスしてしまい、入社後に任せてもらえる仕事と大きく違うことに気付いていない学生が多く見られます。これは、大手企業の短期インターンシップに参加した人が陥りやすい点です。学生同士のプログラムに参加した人は、OB/OG訪問などをきちんと行い、企業の実状を知り、自分がイメージしている仕事内容とのギャップを埋めておくことが必要です。
一方、実践型のインターンシップで経験したことは、まさに実務です。ただしスキルをアピールすることよりも、経験した実務内容や、業務を行ううえで工夫した点、感じたことについて具体例を交えて話すことが大切です。良くないのは、結果や成果だけを伝えること。それだけではたまたま成果が出たのか、自分の工夫によって成果が出たのかが分かりませんし、自分が感じた仕事の困難さが伝わりにくくなってしまいます。仕事とは、自分で考えてどう行動するか、それがどのような成果につながったのか、その繰り返しの作業のことです。実務を通じてどのように本気で仕事に取り組んだかをアピールすると効果的です。
自己PRのポイント
以上、インターンシップ経験の振り返り方、自己PRのポイントについて書きましたが、もう1点大切なポイントがあります。それは、企業が求める(聞きたい)アピールポイントであるかどうかです。各企業には、求める人材像や今後の方向性、仕事で大切に感じてほしいことがさまざまあり、それらは1社1社異なります。極端にいえば、皆さんのアピールする内容は1社ごとに異なってしかるべきです。インターンシップで得た経験をさまざまな角度からとらえ、自分がアピールできるポイントをいくつも探すことで、複数の企業のエントリーシートや面接に対応することができます。
企業がどんな人材を求めているかを知るには、企業のWebサイト(採用Webページ)をよく読み込むことで見えてきます。企業からのメッセージは企業のWebサイトに書かれています。人事部長の言葉にはこれから入社を希望する学生に対して求めるマインドが、先輩社員の仕事内容を紹介するWebページには、仕事で必要な考え方や大切にしてほしいポイントが多く書かれています。そのメッセージを受け取り、自己PRの内容と合致しているかを検証することがずれのないアピールにつながります。
せっかくのインターンシップ経験が、伝え方によって、プラスのアピールになることも、マイナスのアピールになることもあります。まずは体験内容を振り返り、深いレベルまで掘り起こしましょう。それらを企業ごとに求められるポイントに合わせて伝えることが、希望業界から内定をもらう近道です。本気で取り組んだインターンシップ経験が無駄にならないように、しっかり時間をかけて就職活動に備えましょう。
筆者紹介
株式会社トランジット 代表取締役
矢原香織里(やはら かおり)
2003年中央大学卒業後、在学中よりインターン生として立ち上げにかかわってきた株式会社トランジットに入社。取締役を経て、2005年6月に代表取締役就任。
単なる会社訪問や仕事体験ではない、本格的なインターンシップ・プログラムを広めるべく、「インターンゲート」(ベンチャーインターンシップ紹介サイト)を運営。企業と学生の架け橋として、現在は日本国内に留まらず、海外インターンシップも手掛ける。また、インターン採用支援の経験を生かし、新卒採用コンサルティングも行う。
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