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LTEを支える3つの要素技術次世代の無線技術、LTEの仕組みが分かる(4)(1/2 ページ)

次世代無線技術のLTEの仕組みを紹介する。NTTドコモ、イー・モバイル、ソフトバンクモバイル、KDDIの来年の無線技術はどうなる?

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限られた電波の有効活用が課題に

 動画などマルチメディアコンテンツを手軽に楽しめる各種携帯端末が相次いで市場に投入されています。その通信インフラとして、高速無線通信が可能なLTEへの期待が高まる一方、限られた電波をいかに有効活用するか、解決すべき課題もあります。

 LTEの周波数帯域幅は、前回述べたように、1.4MHz、3MHz、5MHz、10MHz、15MHz、20MHzの中から選択でき、周波数帯に比例して通信速度が高速になります。後述するように、通信速度は無線アクセス方式や変調方式などによって異なりますが、より高速な通信を行うためには10MHz、15MHz、20MHzといった周波数帯域幅の使用が望まれます。

 また、LTEは現行の3Gや高速モバイルデータ通信のHSPA(High Speed Packet Access)と並行して導入される場合が多く、これらの方式で使用している周波数帯を共用できないことから、別の周波数帯が必要になります。第3回で述べたように、総務省では1.5GHz帯と1.7GHz帯の新規周波数帯の割り当てを公表していますが、ただちにLTEで使用可能な周波数帯域幅は10MHzにとどまるのが実情のようです。

 こうした中、総務省情報通信審議会では「700/900MHz帯を使用する移動通信システムの技術的条件」についての検討を行うため、2009年12月から審議を開始しています。同省の報道資料によれば、地上テレビ放送のデジタル化に伴う空き周波数(700MHz)および、現行の2Gに使用されている周波数(800MH帯携帯電話)の再編に伴う空き周波数(900MHz)の一部の周波数について、地上波デジタルテレビ放送に完全移行する2012年7月以降、移動通信システムに使用可能となる予定です。

 これらの周波数帯のうちどれだけがLTEに割り当てられるかは現在のところ予想できませんが、2010年10月ごろをめどに審議会の答申が予定されており、その動向が注目されます。

 日本と同様に海外でも周波数の有効利用は共通の課題となっています。例えば、米国ではGSM(Global System for Mobile Communications)に使用している700MHz帯および900MHz帯をLTE向けに流用する意向のようです。いずれにせよ、有限の電波をいかに有効活用するかは、それぞれの国の通信政策と密接にかかわる問題です。

 LTEは、2Gや3Gに比べ、多くのユーザーを1つの基地局に収容できます。このことから、増え続けるトラフィックに対応するとともに、限られた電波を有効活用できる無線通信技術であるといえます。今回は、そのLTEの無線アクセスネットワーク技術の詳細について説明します。

LTEの主な3つの要素技術

 LTEは高速・広帯域の無線アクセスへの要求に応える標準技術として、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で定義されています。LTEの最大通信速度(理論値)である下り326.4Mbps、上り86.4Mbpsの高速通信を実現するため、従来の3GやHSPA(HSDPA)と異なる技術が採用されています。

 具体的には、第3回でも軽く触れましたが、LTEの主要な要素技術として以下の3つが挙げられます。

  1. OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)
  2. MIMO(Multiple Input Multiple Output)
  3. 64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)

 OFDMAは無線アクセス方式の1つで、下り(ダウンリンク)の通信に使用されます。これにより、複数ユーザーのトラフィックを効率的に処理し、周波数帯域を有効に利用できます。また、上り(アップリンク)には、SC-FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)と呼ばれる無線アクセス方式が使用されます。詳細は後述します。

 MIMOは送受信に複数のアンテナを用い、複数の伝送路で通信する無線通信方式です。

 そして、64QAMはデータ変調方式の1つで、同じ周波数帯域でも従来に比べ多くの信号(データ)を送ることができます。いずれも、通信速度を上げる技術としてLTEに採用されています。

無線アクセス方式

高速ダウンリンクを実現するOFDMA

 OFDMAは、デジタルテレビなどにも使われる変調方式のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いた無線アクセス方式です。周波数軸(サブキャリア)と時間軸を用いて通信チャネルを多重化し、各ユーザーの無線環境に応じて伝送率の高いチャネルを割り当てることにより、トラフィックを効率的に処理します。

 無線アクセス技術は、周波数を有効活用するうえでも進化を遂げています。これまでさまざまな多元接続方式が使用され、携帯電話サービスを担ってきました(図1)。

図1 アクセス方式の比較
図1 アクセス方式の比較

 その1つがFDMA(Frequency Division Multiple Access:周波数分割多元接続)です。一定の周波数帯を細い周波数帯(チャネル)に分割し、複数ユーザーで効率よく共有しながら通信する無線アクセス方式です。FDMAはかつてのアナログ携帯電話サービスや、現在の無線LANなどでも使用されています。

 TDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)は、周波数を時間で分割し複数ユーザーに割り当てることで、効率的に通信できます。このTDMA方式は、日本で標準化された2GのPDC(Personal Digital Cellular)や欧米のGSM(Global System for Mobile Communications)で使用されています。

 CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)は、同じ周波数帯の周波数軸と時間軸を複数ユーザーが共有します。それぞれの音声信号に異なる符号(コード)を割り当てて送受信します。CDMAは、TDMAやFDMA方式に比べて効率よく通信できることから、現在主流となっているW-CDMAやCDMA2000といった3G携帯電話サービスに使われています。

無線品質の劣化を回避するOFDMA

 これらの無線アクセス方式に対し、LTEのダウンリンクではOFDMA(直交周波数分割多元接続)方式が使用されます。

 OFDMAは、直交する周波数軸と時間軸のチャネル(サブキャリア)を分割してユーザーに割り振ります。直交とは「互いに干渉しない」という意味で、OFDMAでは各サブキャリアの信号がゼロ(0点)になるように、周波数軸上で直交するサブキャリアを分割します(図2)。これにより、無線品質の劣化の要因となる干渉(フェージング)の影響を回避し、周波数の利用効率を上げています。

図2 直交するサブキャリア
図2 直交するサブキャリア

 従来の無線アクセス方式では、ユーザーに割り当てる周波数帯を一括して使用していました。このため、刻々と信号強度が変動するフェージングの影響を受けると、周波数帯のすべての信号が欠落して無線品質が劣化するという課題がありました。特に、高速・広帯域の無線通信が要求される今日では、フェージングの影響を無視できなくなっています。

 こうした課題に対し、OFDMAではサブキャリアを分割してユーザーに割り当てることにより、あるサブキャリアがフェージングの影響を受けても、影響のない別のサブキャリアを選択することができます。この特徴により、ユーザーは無線環境に応じてより良好なサブキャリアを使用でき、無線品質を維持できる利点があります。

図3 周波数軸上のスケジューリング
図3 周波数軸上のスケジューリング

 具体的には、LTEで使用する変調方式のOFDMは、15kHz間隔で隣接する12個のサブキャリア(180kHz)を1つのブロックとして分け、これをRB(Resource Brock)と呼んでいます。このサブキャリアを1ミリ/秒ごとに区切り、周波数軸と時間軸を組み合わせてフェージングの影響のないRBをユーザーへ柔軟に割り当てる仕組みです(図4)。

図4 下りOFDMAのユーザー割り当て
図4 下りOFDMAのユーザー割り当て

 サブキャリアの数は、LTEで使用する周波数帯幅(1.4MHz〜20MHz)に応じて柔軟に変えることができます。1.4MHzでは72サブキャリアですが、10MHzでは600サブキャリア、20MHzでは1200サブキャリアというように、サブキャリアの数を増やすことで高速無線通信が可能になります。


図5 柔軟な使用周波数帯幅

 また、LTEのダウンリンクの周波数軸と時間軸にサブキャリアを割り振ることを「スケジューリング」といいます。フェージングによる劣化のない良好な周波数のみ使用することで、無線アクセスのQoS(Quality of Service)を確保しています。

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