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LTEを支える3つの要素技術次世代の無線技術、LTEの仕組みが分かる(4)(2/2 ページ)

次世代無線技術のLTEの仕組みを紹介する。NTTドコモ、イー・モバイル、ソフトバンクモバイル、KDDIの来年の無線技術はどうなる?

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端末の省電力に配慮したSC-FDMA

 外出時に携帯端末のバッテリーが切れて使えなくなった経験を持つ人も少なくないはずです。プライベートな動画などのコンテンツを閲覧できなくなるのは仕方がないとしても、仕事に必要なデータがバッテリー切れのために送受信できないようでは、ビジネスチャンスを失いかねません。

 こうした携帯端末の電力の課題にも、LTEの無線アクセス方式は対応できると期待されています。

 LTEのアップリンクでは、シングルキャリアのSC-FDMAという無線アクセス方式が使われます。SC-FDMAは、ダウンリンクのOFDMA同様に変調方式にOFDMを使い、サブキャリアの1RBは180kHzとなっています。OFDMAと異なる点は、SC-FDMAはユーザーごとに1つのRB(キャリア)を割り当てることです。

 アップリンクでシングルキャリアのSC-FDMAを使用する理由は、1つのキャリアで変調するため、端末のピーク電力を下げられることです。これにより端末の消費電力を抑え、外出時にも長時間使用が可能になります。

 また、アップリンクではユーザーごとの周波数誤差の問題があります。周波数軸を直交するためには、誤差は禁物です。ダウンリンクでは基地局から5MHzや10MHzといった周波数帯域幅を一括処理することで、直交する信号を送信しています。それに対し、ユーザーごとに信号を送信するアップリンクでは、一括処理が行えません。そこでSC-FDMAでは周波数誤差を考慮し、基地局でユーザーのサブキャリアを処理しています。

図6 上りOFDMAのユーザー割り当て
図6 上りOFDMAのユーザー割り当て

高速無線通信を実現する変調方式

より多くの情報を伝送できる64QAM

 マルチメディアアプリケーションの利用拡大とともに、無線通信技術も進化しています。高速無線通信の要素技術となるのが、デジタルとアナログの信号を変換する変調です。1回の変調(1シンボル)でより多くの情報量を伝送できれば、伝送効率が上がり、通信速度が速くなります。

 携帯電話などで使われる変調方式の1つに、QPSK(Quadrature Phase Sift Keying)があります。QPSKでは4つの位相を使い、1シンボルで2ビット(2の2乗)の信号を伝送することができます。

 また、電波の位相と振幅の両方を使って信号を伝送する変調方式にQAMがあります。16QAMは4ビット(2の4乗)、LTEで使われる64QAMは6ビット(2の6乗)の信号を伝送できます。64QAMの変調は、AD(アナログ/デジタル)変換装置などの分解能が向上したことで実現しています。

 こうした技術の進歩により、64QAMでは1シンボル当たり16QAMの4倍もの情報量を送ることができ、高速無線通信の要素技術となっているのです(図7)。

図7 変調方式
図7 変調方式

 移動通信はノイズなどの影響で干渉を受けることもあり、LTEでのデータ変調方式は64QAMまでとなっています。そして、基地局と端末の距離が離れた場所や端末の電力の制約があるアップリンクでは16QAMを使うなど、無線環境に応じて64QAMと16QAMの変調方式を柔軟に切り替えるリンクアダプテーションにより、通信品質の劣化を防ぐ仕組みです。

 ちなみに、通信品質が安定した固定通信(基地局間のネットワークなど)では、256QAMや512QAMといった大量の情報を伝送できる変調方式が使用され、伝送効率を高めています。

複数アンテナで高速無線通信を行うMIMO

 64QAMとともに、無線通信の速度を上げる要素技術となるのが、無線通信方式の1つであるMIMOです。基地局と端末のそれぞれに複数のアンテナを設け、各アンテナが同時に送受信を行うことで高速無線通信を実現します。同じ周波数上で各アンテナ間の空間の伝送路特性が異なることを利用して信号を多重・分離する技術が使用されています。

 ただし、MIMOのアンテナを増やすと端末の消費電力に影響を与えることから、LTEではダウンリンクでの適用を規定しています。

 3GPPでは、送受信用に2本のアンテナを使用する2×2MIMO、4本のアンテナを使用する4×4MIMOを定義しています。さらに次のLTEアドバンスでは8×8MIMOも規定されます。

図8 MIMOの構成(2×2MIMOの例)
図8 MIMOの構成(2×2MIMOの例)

 わが国のLTE商用サービスでは、当初より2×2MIMOの採用を計画する移動通信事業者もあるようです。MIMOを使用しない場合に比べ、同じ周波数帯で2倍の通信速度が得られるようになります。

 参考までに、現行のHSPAとLTE(2×2MIMO/64QAMと4×4MIMO/64QAMを適用する場合)の最大データ通信速度を比較したのが図9です。アップリンク、ダウンリンクともにLTEの通信速度が勝っていることを示しています。

図9 各方式での最大ピーク速度比較
図9 各方式での最大ピーク速度比較

 また3GPPでの検討結果によれば、LTE(2×2MIMO)の周波数利用効率は、HSPAに比べアップリンクで約3倍、ダウンリンクで約2倍の効率化を実現しています。

 OFDMAや64QAM、MIMOといった無線通信技術の進化により、LTE商用サービスの開始とともにユーザーの利用拡大が見込まれます。一方、移動通信事業者にとっては基地局設備の構築・運用管理の省力化やコスト削減が課題となっており、その解決策としてSON(Self Organization Network)が注目されています。これは、基地局設備の自動パラメータ設定や自動エラー検出などの機能を備え、LTEサービスの運用コストを削減すると期待されます。SONの詳細は、この後の回であらためて紹介します。

著者紹介

ノキア シーメンス ネットワークス株式会社 ソリューションビジネス事業本部 ネットワーク技術部長

小島 浩

1987年 総合電機メーカ入社。以降、移動体通信ネットワーク機器、移動体通信システムの開発に従事。

2007年 ノキア シーメンス ネットワークス株式会社に入社。以降、移動体通信機器、システムの業務に従事。

現在、同社ネットワーク技術部長。



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