IPv4の枯渇に備えよ――IPv6の特徴と必要性:ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座(32)(1/2 ページ)
本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。2007年12月に改訂された新試験(640-802J)に対応しています。
現在標準で使われているIPのバージョンは4です。ですが、IPv4はあと少しで枯渇するといわれています。この問題を解決するために、次世代のIPのバージョンとして6が必要とされています。
今回はIPv6の特徴、必要性について解説します。
ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座 各回のインデックス
- 第1回 新CCNA試験について知ろう
- 第2回 ネットワークのABC、OSI参照モデルとプロトコル
- 第3回 データはどうやって伝わるの?
- 第4回 LANの基礎を丸かじり
- 第5回 データ同士の通せんぼ――コリジョンてなぁに?
- 第6回 TCP/IPを制するものはネットワークを制す
- 第7回 TCPで、確実&効率よくデータを送受信しよう
- 第8回 サブネットマスクの計算をマスターする
- 第9回 どこまでがネットワーク部? クラスフルとクラスレス
- 第10回 シスコ ソフトウェアの基礎を学習する
- 第11回 Cisco IOSモードの設定
- 第12回 Cisco IOSのモードの設定情報と識別情報
- 第13回 インターフェイスの設定とルータの初期化
- 第14回 ネイバーの検出とCDPによるデバイス管理
- 第15回 Telnetを使用したリモートデバイスの情報収集
- 第16回 SDMによるルータの設定と管理
- 第17回 MACアドレスとフレームで、スイッチの基本動作を学ぶ
- 第18回 スパニングツリープロトコル、動作の仕組み
- 第19回 スイッチにVLANを設定する
- 第20回 VLAN操作を容易にするVTPの機能
- 第21回 ポートセキュリティの設定コマンドと確認
- 第22回 ルータの経路学習とスタティックルートの設定
- 第23回 RIPによるルーティングテーブルの作成
- 第24回 リンクステートルーティング(OSPF)の設定と確認
- 第25回 高速なコンバージェンスを実現するEIGRPを学習する
- 第26回 可変長サブネットマスク(VLSM)と経路集約
- 第27回 標準アクセスリストについて学習する
- 第28回 拡張アクセスリストについて学習する
- 第29回 無線LANの基礎について学習する
- 第30回 無線LANセキュリティの必要性と対策
- 第31回 NATとPATの設定方法を学ぶ
- 第32回 IPv4の枯渇に備えよ――IPv6の特徴と必要性
- 第33回 VPNの基礎を学習する
- 第34回 WANカプセル化プロトコルについて学習する
- 第35回 フレームリレーの基本を学習する
IPv6の特徴
IPv6は現在標準で使われているIPv4の限界を克服するために開発された技術です。
IPv4のアドレス空間は32ビットで、約43億あります。ですが、あと少しでアドレスが枯渇するといわれています。広大なアドレス空間を必要とする理由としては、さまざまなデバイスからインターネットに接続することが可能になっていることや、インターネット人口が増加していることが挙げられます。このような状況から、IPv6が必要とされています。
また、IPv6は単にアドレス総数を増やすだけでなく、IPというプロトコル自体に、さまざまな機能を追加しています。
IPv6はIPv4を拡張したものです。主な拡張機能は以下のとおりです。
広大なアドレス空間 | IPv6のアドレス空間は128ビットです。広大なアドレス空間により、無限に近いアドレスが確保されます。これにより、アドレス枯渇問題で用意されていたNATが必要なくなります。 |
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集約 | アドレス構造が厳密に階層化されているため、インターネット上で効率的なルート集約を行うことができます。 |
簡潔なヘッダ | IPv4と比べてIPv6はヘッダがシンプルです。これにより、パケットを転送する際のルータの処理負荷が軽減されます。 |
自動設定機能 | オートコンフィグレーションにより、IPv6アドレスが自動設定されます。 |
モビリティとセキュリティ | プロトコル自体にMobile IPの機能が組み込まれ、透過的にネットワークのアクセスを提供することができます。また、IPv6ではIPSecの実装が必須になっています。 |
アドレスタイプ | IPv4でのブロードキャストに代わって、IPv6ではマルチキャストを使うことができます。IPv6から加わったアドレスにエニーキャストアドレス(1対最寄りのアドレス)があります。 |
表1 IPv6の拡張機能 |
確認問題1
問題
IPv6の特徴として当てはまる項目を3つ選択してください。
a.128ビットのアドレス空間
b.オートコンフィグレーション
c.32ビットのアドレス空間
d.モビリティ
e.ブロードキャストアドレス
正解
a、b、d
解説
IPv6は128ビットのアドレス空間があります。オートコンフィグレーションによりアドレスが自動設定されます。IPv6はプロトコル自体にモビリティ機能が組み込まれており、透過的にネットワークのアクセスが可能です。従って選択肢a、b、dが正解です。選択肢c、eはIPv4の特徴です。
IPv6アドレス表記
IPv6は128ビットもの長さがあるので、IPv4のように10進数で表現すると非常に長くなってしまいます。そこで、IPv6は16ビットずつ16進数に変換したものを1つのブロックとして表現します。ブロック間は「:」で区切ります。それでも長くなりますので、省略可能表記が用意されています。
- 07C0を7C0、0000を0、というように、各ブロックの先頭の0は省略可能です
- 連続する0のフィールドは、1回に限り「::」を使って省略可能です
(アドレスに「::」を使用して0を省略した場合、未省略部と合わせて128ビットになるまで0と判断します。ただし、「::」が2カ所以上あると、それぞれの桁数を判断できないので、一度だけ使用が可能です)(アドレスに「::」を使用して0を省略した場合、未省略部と合わせて128ビットになるまで0と判断します。ただし、「::」が2カ所以上あると、それぞれの桁数を判断できないので、一度だけ使用が可能です) - 未指定のアドレスは、「::」で表現できます
● 省略の例
2031:0000:140F:0000:0000:08C0:7752:130B
⇒ 2031:0:140F:0:0:8C0:7752:130B ○
⇒ 2031:0:140F::8C0:7752:130B ○
⇒ 2031::140F::8C0:7752:130B ×
(「::」を2度使用することはできないため、省略不可)
確認問題2
問題
2001:5000:0ab0:0000:0000:1234:5978:0000と同じIPv6アドレスを1つ選択してください。
a.2001:5000:ab0::1234:5678:0
b.2001:5000:ab::1234:5678:0
c.2001:5000:ab0::1234:5678::
d.2001:5:ab0::1234:5678:0
e.2001:5000:ab::1234:5678::
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