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世界で広がるLTEサービス次世代の無線技術、LTEの仕組みが分かる(7)(1/2 ページ)

次世代無線技術のLTEの仕組みを紹介する。NTTドコモ、イー・モバイル、ソフトバンクモバイル、KDDIの来年の無線技術はどうなる?

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Xiを筆頭に多数のオペレータがLTEサービスを開始

 NTTドコモのLTEサービス「Xi(クロッシィ)」が2010年12月に開始され、筆者(小久保)もさっそく使ってみました。

 同社が公表しているスペックは、受信時(下り)最大37.5Mbps、送信時(上り)最大12.5Mbpsとなっています(一部屋内施設では下り最大75Mbps、上り最大25Mbps)。この数字は実際の通信速度を表すものではなく、Xiを使ってみても、スペックにあるような数十Mbpsの通信速度は難しいという感想を抱きました。

 しかし、現行のHSPA(High Speed Packet Access)サービスに比べると高速に大容量データをダウンロードでき、Webページへのアクセスも非常に快適でした。今後、サービスエリアの拡大とともにLTEユーザーも広がると期待されます。

 日本だけでなく、海外ではすでに多くのオペレータがLTEの商用サービスを開始しています。モバイル通信の業界団体GSA(Global mobile Suppliers Association)が2011年1月12日に発表したレポートによると、LTEの商用サービスを提供しているオペレータ数は17社に上ります(表1)。

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 また、この表中に記載したオペレータ以外にも、北アフリカ・ナイジェリアのGlobacomが1月にLTE商用サービスを開始。高度な無線技術を利用するLTEは、技術力の優れた日本や欧米などの先進国が先行していると考えがちですが、アフリカや東欧などの新興国でもサービスが開始されるなど、世界中で広がる動きを見せています。

3Gの音声通信を組み合わせたLTE端末も登場

 現在、各オペレータが提供するLTEサービスは、USBタイプやPCカードタイプのデータ通信用端末が主流です。その中で、米国のMetroPCSではすでに音声通信が可能なハンドセット型のLTE端末を提供。前回説明したCSフォールバック機能は用いていないようですが、音声通信は既存の3G(CDMA)、データ通信は高速なLTEを利用する仕組みです。

 LTEでは将来、音声通信を含め、オールIPのネットワークが利用されますが、移行段階の現実解として3Gを音声通信に利用するデュアル端末が各オペレータ、通信機器ベンダから提供される予定です。

 2011年1月に米国ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)では多種多様なLTE向け端末が発表され、来場者の注目を集めました。

 例えば、米国VerizonはLTE対応スマートフォンやタブレット端末、3G(CDMA)とLTEのネットワークへアクセスできるWi-Fiルータ、LTE端末内蔵ノートPCなどの製品を発表。今春から順次、市場へ投入していくことを表明しています。日本のNTTドコモもLTE対応Wi-Fiルータやスマートフォンの提供を表明しており、端末のラインアップの拡充とともにLTEの普及が加速すると期待されます。

周波数の動向がLTE普及のポイントに

 海外でLTEの展開が急速に進む理由の1つとして、スマートフォンによるモバイル網のトラフィック急増が挙げられます。日本では電波を管理する総務省が各オペレータに周波数の割り当てを行います。これに対し、欧米では周波数をオペレータに割り当てる際、オークションが行われてきました。

 オペレータにとって、オークション費用の高騰による資金不足などにより、3Gのエリア展開投資が日本ほど十分に行われていないにもかかわらず、スマートフォンの台頭でトラフィックは増え続ける一方です。そのため、3Gのエリア展開を中止して、LTEの展開を検討するオペレータや、3Gをスキップして2G(GSM)から一気にLTEのネットワークへ移行する動きも見受けられます。

 今後のLTEの普及を考える上で重要な要素になるのが、LTEで利用する周波数幅および周波数帯域の動向です。

 これまでも紹介してきたように、LTEで利用する周波数帯域幅は1.4MHz、3MHz、5MHz、10MHz、15MHz、20MHzの6つが規定され、周波数幅が大きくなるほど通信速度が高速になります。また、周波数帯については1つの端末が対応できる周波数帯の数には限りがあることから、他オペレータと整合を取れている方が、海外オペレータとのローミングサービスが容易に提供できるようになります。

 例えば、日本独自の周波数帯として1.5GHz帯があります。国内での需要が見込める日本の端末メーカーと異なり、海外の端末メーカーは1.5GHzをサポートしても、日本以外の国では需要が見込めないため、製品の開発・提供に及び腰になりがちです。世界規模で急速に普及するスマートフォンのような端末をスムーズに日本に導入するためにも、海外オペレータとの周波数帯の整合性確保は重要なポイントとなります。

 とはいえ、オペレータが利用できる周波数帯は各国の政府がそれまでの電波割り当て状況に応じて決めることから、特定の周波数帯に絞り込むのは難しいのが実情です。3Gのときには2.1GHzに統一する動きがありましたが、LTEではそうした統一の動きも見受けられません。実際、3GPPの標準化において規定されているLTEの周波数は2011年1月時点で表2に示すように30も存在しています。

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LTEサービスで想定される主な周波数

 LTEのサービスを提供するオペレータの周波数の利用方針は、大きく2つに分けられます。

  1. 既存の2G(GSM)や3Gの周波数を再利用する
  2. 新規に獲得した周波数を利用する

 それぞれにメリットがあり、前者はアンテナなどの設備やエリア設計など2G/3Gサービスで培ったノウハウや資産を流用できます。また、後者は新規周波数をすべてLTE専用に振り向けることができるため、3Gとのネットワーク容量のトレードオフを検討する必要がありません。大きな帯域幅を取得できれば、より高速なLTEサービスを提供しやすくなるというメリットもあります。

 例えば、NTTドコモのLTEサービスは、いまのところ(1)の方針を採用し、2.1GHz帯の20MHz幅の一部(5MHzまたは10MHz)をLTE向けに流用しています。スマートフォンなどデータ通信需要の高まりで3Gのトラフィックが増え続ける状況では、5MHz以上の帯域幅をすぐにLTEに割り当てるのは難しいのが実情です。

 ただし、同社は2009年に1.5GHz帯の15MHz幅の割り当てを受けており(東名阪は2014年3月まで5MHz幅のみ利用可能)、15MHzをすべてLTEサービスに利用できるようになれば、100Mbps超のモバイルブロードバンドサービスが広がると期待されます。

 グローバル市場においてLTEで想定される主な周波数としては、欧州や中国、アジア太平洋地域などで採用されている2.6GHz帯、デジタルデバイド対応バンドとして欧州やアジア太平洋地域で割り当てられた800MHz帯、米国でVerizonとAT&Tの2大オペレータが所有する700MHz帯の3つが挙げられます。また、既存周波数の再利用という観点で3Gの共通バンドであった2.1GHz帯やGSMで広く利用されていた1.8GHz帯も、今後多くのオペレータが採用する可能性はあります。

 ここまで紹介してきたのは、上りと下りでそれぞれ異なる周波数を利用して送受信するFDD(Frequency Division Duplex)方式のFDD-LTEのための周波数でしたが、上りと下りで同じ周波数を時分割して送受信するTDD(Time Division Duplex)方式のTD-LTEにおいてはインドや中国などで採用されている2.3GHz帯が主流の1つになると想定されます。

 実際にLTEを開始しているオペレータの周波数について、確認できた範囲でまとめると表3のようになります。

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