「計画的にやれ」が悲しいほどメンバーに通じない理由:新任PMがついやってしまうNG集(1)(1/2 ページ)
1人で仕事をしているプログラマ時代は、ばりばり仕事がこなせたのに、PMになった途端に仕事がうまく進まない! そんな新任PMの悩みを解決するTipsを紹介します。
お悩みのPM諸君、ついこんなこと言っていませんか
同じ「プロジェクト」に関わるにしても、PM(プロジェクトマネージャ)になる前と後では大違いです。プログラマの1人として働いている時は、自分の作業に専念していればよかったのに、PMになった途端「顧客から新しい要望が来た」「○○さんの作業が遅れている」といってはフォローに追われる日々。「何で皆、ちゃんと動いてくれないんだ!」とストレスをためるPMも多いはずです。
ですが、「自分が動くこと」と「人に動いてもらうこと」が違うのは当然のこと。ですが、ついそのことを忘れて、こんなことを言ってしまうPMは多いのではないでしょうか。
「計画的に作業して」
「進ちょく率は?」
「『間に合います』って言ったじゃないか!」
これらはPMの発言としては“NG”です。いくら口をすっぱくして注意しても、これではまずチームワークは改善しません。では、どうすればよいのか? 本連載は、NGワードの問題を指摘しつつ、チームワークや作業効率を改善したいと悩んでいるPMのために役立つTipsをお届けします。
「計画的にやれ」、つい言ってしまいます
1人で仕事を行うことと、2人以上のチームを率いて仕事を進めることは大きく違います。特に、「人を動かす」というマネジメント上の要素が加わると、仕事の難しさは急上昇します。ですから、PM としてプロジェクトを取り仕切るようになったばかりの人は、メンバーの仕事ぶりに悩まされることが多くなります。
「あるメンバーは、担当する工程を完了させる期日の直前は、必ずバタバタと忙しくなり、遅くまで残って残業することも少なくない。本当に間に合うのか? と心配させられてばかり」
「別のメンバーは、ドキュメントの作成がいつも遅くて、提出日の前日は遅くまで残業。それにつきあって自分まで残業をすることに……」
「どちらのメンバーにも、“もっと計画的にやれ”というのだが、結局、次回も同じことの繰り返し。一向に改善される気配がない」
プロジェクトを取り仕切る立場としては、メンバーには“計画的”かつ“着実”に仕事を進めてもらいたいものです。
だからこそ、仕事の進め方がうまくないメンバーには「計画的にやれ」と言いたくなるのもうなずけます。ですが、「計画的にやれ」という言葉には、ほとんど効果がありません。
「指導したつもり・反省したつもり」で改善しない無限ループ
なぜ、「計画的にやれ」という言葉は効果がないのかを考えましょう。
PMとしてプロジェクトを任されるくらいですから、おそらく、あなた自身は仕事を計画的に進められるタイプの人でしょう。だからこそ、あらためて考えてみてください。
そもそも、「計画的にやる」とは、どういうことでしょうか。
事前に計画を立てて、その計画を守って行動することでしょうか? でも、実際には事前に予想していなかった仕事が増えます。システム開発において、すべてが事前の計画どおりにいくことなどほぼ皆無だし、臨機応変に対応しなければいけない状況だって山のようにあります。
効率的に仕事をこなせる人が考える「計画的にやる」とは、おそらくこんな感じだと思います。
- それぞれの仕事の期限を考えて
- それぞれの所要時間を予想して
- 予定外に降ってきた仕事との兼ね合いをとりつつ
- うまく仕事が進むように考えて行動すること
つまり、実際に「計画的に」仕事を進めるためには、さまざまな事象を複合的に考えて判断を下すことが必要です。それを一口に「計画的にやれ」といっても、それはただ「指導したつもり」になっているだけで、相手にはほぼ何も伝わっていないと思った方がいいでしょう。
言われた側は、それなりに反省したり、「次は気を付けよう」と思ったりするかもしれません。しかし、具体的な行動、仕事のやり方を伝えていないため「PMっぽいことを言ったつもり」「反省したつもり」で終わってしまいます。
「仕事」という名のブラックボックスを開くのです
「計画的にやれ」という言い方では、状況はまず改善しません。では、どうすればうまくいくのでしょうか。方法は大きく分けて2つあります。
- メンバーに仕事方法を工夫してもらう
- PM(自分)が仕事方法を工夫する
まずは、メンバーに仕事方法を工夫してもらいましょう。やるべきことは、メンバーの作業を「可視化」することです。
上記は、わたしが推奨する「タイムマネジメント」手法です。タイムマネジメント(時間管理)というと、「細かくタイムスケジュールを立てて、時間通りに行動すること」を想像する人が多いですが、そういうやり方ばかりではありません。
タイムマネジメントの本質
タイムマネジメントには、詳細なタイムスケジュールを立てることよりも、もっと本質的で重要なことがあります。
- 限られた時間のなかで自分の「やるべきこと」を見極めること
- それをどう進めていくか考え、実行すること
これらがタイムマネジメントの本質です。細かいタイムスケジュールを立てるのは後回し。まずは、仕事というブラックボックスの中身をきちんと見極め、整理することから始めるべきなのです。
仕事には2種類ある
図1のように、自分の仕事を整理することは決して難しいことではありません。同じ仕事といっても、仕事には2種類あります。
- アポイントメント:時間が決まっている予定(会議や打ち合わせ) 時間が決まっている予定(会議や打ち合わせ)
- タスク:自分の都合で時間を決めて作業できる仕事(コーディングなど)自分の都合で時間を決めて作業できる仕事(コーディングなど)
図1の下部にはアポイントメントを記入しています。いわゆる「スケジュール管理」と同じです。一方、図の上部はそれ以外のタスクを書きとめています。このようにアポイントメントとタスクを書き込めば、自分が抱える仕事全体が見えます。ただ漫然と作業を書き出すのではなく、「アポイントメント」と「タスク」に分ける。これが肝心です。このようにして、まずは「作業の可視化」を行います。
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