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「計画的にやれ」が悲しいほどメンバーに通じない理由新任PMがついやってしまうNG集(1)(2/2 ページ)

1人で仕事をしているプログラマ時代は、ばりばり仕事がこなせたのに、PMになった途端に仕事がうまく進まない! そんな新任PMの悩みを解決するTipsを紹介します。

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自分の記憶力なんて信じちゃダメです

 アポイントメントはすでに時間が決まっているので簡単ですが、問題はタスクです。タスクを書き込むには、ちょっとしたルールがあります。

1.仕事は“すべて”書き込む

 「やるべき」だと判断した仕事は、以前から予定していた仕事であれ、予定外に降ってきた仕事であれ、基本的にすべて書き込みます(降ってきたその場で対応して片付けた仕事は、ここに書き込まなくても構いません)。自分の記憶力を信用してはいけません。仕事が発生した段階で書く! これを徹底しましょう。

2.実行日を決めて書き込む

 もう1つは、タスクは「実行日」に書き込むこと。つまり、タスクをどの日にやるか決めます。実行日を決めると、その日に本当にやれるかどうか、時間が足りるかどうかを真剣に考えるようになります。

 逆に、お勧めしないのが「ToDoリスト」のように、ただタスクを書き出すだけというやり方。これでは、時間が足りるかどうかがピンとこないですし、期限直前にバタバタしてしまう癖はなかなか直せません。

3.タスクは分解、分解!

 最後のルールは、複雑な仕事は分解して個別のタスクに分けて書くこと。1つの仕事を複数のステップに分割する要領と同じです。

 1日で終わらないような複雑な作業は、ある1日に書き込んだとしても、その日に終わるわけがありません。作業を分割し、複数の日付に分散させることで、実際に実行できるスケジュールにするわけです。「この日はここまでやる」「次の日にここまでやる」と段階的に仕事を進めていくイメージです。これも「計画的」に仕事を進めていくために、とても役立ちます。

計画どおりにできないメンバーには「書きとめ」を徹底させます

 このように、仕事の進め方がよくないメンバーには「計画的にやれ」と指導するのではなく、「やるべき仕事は書きとめること」を徹底させてみてください。

 おそらく、遅れるメンバーは大体下記のようなパターンで仕事をしていることが多いです。

  • そもそも、タスクを書きとめていない
  • 書きとめていても、普通の「ToDoリスト」止まりで、実行日を決めるところまではしていない

 上記のルールに沿って書き込むようにするだけで、仕事の進め方はかなり変わります。機会を見て試してみてください。

 ちなみに「タスクの実行日を決める」というと、ちょっと難しく聞こえてしまいますから、「日付ごとにタスクを書き込む」という言い方をしてみてください。同じことなのですが、この方が取っつきやすいでしょう。

エンジニアらしく、「計画どおりにできない」バグをつぶしましょう

 とはいえ、こうしたタイムマネジメントやタスクの管理は、急にやれといってもなかなかやってくれないメンバーが多いのも事実です。また、自分の直属ではないメンバーには、こうした指導がしにくい場合もあります。そんなメンバーを指導していくためには、PMの側から質問するアプローチが必要です。

 最初の話に戻りますが、仕事を「計画的にやる」というのは実に複雑な作業です。しかし、その逆、つまり「計画的にやれていない」という状態には、典型的なパターンがあります。そのパターンをつぶしていけば、それだけ問題が起こりにくくなります。

締め切りでは遅すぎます、見るべきは「スタート時点」

 そのパターンの1つは、「仕事のスタートが遅れる」ことです。期限ギリギリになってバタバタあわてるのも、長時間残業してしまうのも、原因の多くはその仕事をスタートするタイミングが遅れたところにあります。

 例えば、こんな経験はないでしょうか? 当初は「余裕を持って早めに手をつけよう」と思っていたはずなのに、その仕事になかなか手をつけられず、結局、期限ギリギリになってしまった……。こういう経験は、おそらくあなた自身もあるはずです。「計画的に」やれない人は、こういう状況がもっともっと多いのです。

 仕事のスタートが遅れる原因は後述しますが、原因が何にせよ、まずは「スタートが遅れた」ことを自覚してもらうことが第一歩です。そのためには、仕事のスタートの時点に重点を置いて、メンバーの仕事の進め方を見ていく必要があります。

 ところが、PMはこれが意外にできていないことが多いです。仕事のスタート時点では放ったらかしで、期限が近づいたころにメンバーがバタバタし始めて、ようやく事態を把握する――そんな状況が多いのではないでしょうか。

「いつまで」発想より「いつから」発想の方がクールです

 そうならないためには、メンバーに仕事の指示を出す時点で1つ質問をしておきましょう。それほど難しいことではありません。ミーティングなどで作業の指示を出す際に、「いつ作業を開始しますか?」と質問するのです。

 この質問には、3つの目的があります。

1.締め切りではなく、スタートを考えてもらう

 まずは、メンバー自身が「いつスタートすればいいか」と考えるきっかけを作るためです。ただ作業を指示するだけでは、メンバーは「いつまでにやればいいか」、つまり、「デッドライン=期限」のことしか考えていない場合があります(計画的にやれないメンバーの場合、特にこのような傾向が強いです)。「いつスタートするか=いつスタートすべきか)という質問を投げかけることが「いつからやればいいか」と考えるきっかけを作るのです。

 「いつまでに」発想を「いつから」発想に変えることは、物事を計画的に進めるための最低条件として必要なことです。まず、ここを意識してもらうわけです。

2.スタート時点でチェックする

 ただし、「いつから」発想で、スタート時点を考えてもらうだけで、うまくいくとは限りません。当初は「余裕を持って早めにスタートしよう」と思っていたのに、ついついスタートが遅れてしまうというのもよくあること。ですから、PM自身がメンバーの仕事の進め方をチェックすることも必要です。これが2つめの目的です。

 まず、実際にスタート予定日が来たら、そのメンバーが作業を開始できているか確認します。もし、そのタイミングでスタートできていなければ、早く仕事をスタートするようにメンバーをうながします。スタート時点でのチェックやフォローを行うことだけでも、そのメンバーの仕事は以前よりも遅れにくくなります。ズルズルとスタートが遅れてしまう前に歯止めをかけることができるわけです。

 さらに突っ込んだ指導をするためには、何が原因で仕事が遅れているか聞き出すことが有効です。そもそも、期限ギリギリになった時点で「なんでもっと早くスタートしなかったんだ」と問い詰めても意味がありません。一方、スタート時点であれば、具体的な問題がつかみやすくなります。

 仕事のスタートが遅れる原因はいろいろあります。

  • 「うっかり忘れていた」
  • 「気が進まなくて先延ばしにしていた」
  • 「優先順位の低い仕事に時間をかけすぎた」

 上記の場合は、仕事の進め方を指導しましょう(これらには前のページのタスク管理が効果的です)。

  • 「他の人の作業を手伝わされた」
  • 「頼まれごとが多い」
  • 「予定外に降ってくる仕事が多すぎた」

 チーム内の仕事のやり方や分担を見直す必要がありそうです。

3.見積りと実際のずれを自覚する

 ただし、場合によっては、仕事を予定通りスタートしたのに、結果として期限ギリギリになってしまう、もしくは間に合わないというケースもあるはずです。この場合は、そもそも、その仕事に必要な所要時間を甘く見積もってしまっているのかもしれません。これに気付くのが3つめの目的です。

 実は、人は自分が行う課題については、所要時間を実際より短く見積もってしまう傾向があります。カナダのサイモンフレーザー大学で、こんな心理学の実験 が行われています。被験者にある課題を完成させるために必要な日数を予想してもらい、その後、その課題を実行してもらったところ、実際にかかった日数は、本人の予想よりも6割以上長かったそうです。経験豊富なベテランは別として、まだ経験の浅いメンバーなら、こうした見積りの甘さがあっても決して不思議ではないのです。

 こうした見積りと実際のずれを直すためにも、スタート時点を明確にしておくことが有効です。仕事のスタート時点が曖昧なままで仕事を進めると、なかなかこのずれを自覚できないからです。

今回のまとめ

 プロジェクトのメンバーに計画的に仕事を進めてほしいというのは、おそらくすべてのPMの願いでしょう。しかし、本当に「計画的に」やってもらうためには、「計画的にやれ」というだけではダメです。「計画的にやる」という言葉を、うまく翻訳する必要があるのです。それがタスクを書きとめてもらうことであり、仕事のスタート時点に注目することです。

今回のまとめ

  • NG 「計画的にやれ」
  • OK 「タスクを書きとめてもらう」
       「仕事のスタート時点に注目する」

 とはいえ、「(各メンバーの)仕事のスタート時点に注目する」というのは、忙しいPMにとってなかなか大変なこと。そこで次回は、これを無理なく行う方法を紹介していきたいと思います。

著者紹介

水口和彦

(有)ビズアーク取締役社長。タイムマネジメントの研修講師・コンサルタント。

石川県金沢市出身。大阪大学大学院理学研究科修士課程修了後、住友電気工業株式会社を経て現職。

製品開発や品質管理のエンジニアとして「仕事に追われるバタ男状態」を経験。それをタイムマネジメントの研究により克服したことをきっかけに、現職に至る。

新刊『世界で一番ゆるい 王様の時間術』(ダイヤモンド社)など著書多数。

Webサイト:時間管理術研究所



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