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OSSプロジェクトとベンダの関係に変化の兆しOSS界のちょっと気になる話(5)(1/2 ページ)

敵対するか、あるいはオープンソースライセンスでソースコードを提供するだけの関係だったOSSプロジェクトとベンダの関係が、より深く、積極的に絡み合うものへと変わりつつある。(編集部)

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マイクロソフトがHyper-VでFreeBSDを正式サポート

 最近のOSS関連ニュースで最も目を引いた話題の1つに、米マイクロソフトによる「Hyper-V FreeBSDサポート」の発表を挙げることができる。

 マイクロソフトで主席アーキテクトを務めるDr. K. Y. Srinivasan氏およびNetAppでテクニカル・リードを務めるJason Goldschmidt氏が、2012年5月11日(東部標準時)、カナダの首都オタワで開催されていたBSDCan 2012発表したものだ。

写真1 BSDCan 2012で行われた「FreeBSD on Microsoft Hyper-v」のプレゼンテーションの模様
写真1 BSDCan 2012で行われた「FreeBSD on Microsoft Hyper-v」のプレゼンテーションの模様

 一昔前であれば、マイクロソフトが自社の仮想化プロダクトにおいてFreeBSDの正式サポートを決定するというのは、考えがたいことだった。例えば、マイクロソフトはもともと、同社の「Hotmail」サービスをFreeBSDを使って提供していたが、後にこの基盤をWindows 2000およびIISへ変更した。当時のマイクロソフトのOSSに対する態度は、ハロウィーン文書が象徴しているように、現在の同社のそれとはかなり異なっており、OSSプロジェクトに対して協力的なものではなかった。

 今回、マイクロソフトから発表されたこの取り組みは、OSSに関係するベンダの変化を表現するものとして興味深い。OSSを巡る産業は、「OSSプロジェクトと企業の関係」という面で変化しつつあり、今回の発表は、その新しい流れの1つを示すものとして参考になる。

 今回は、5月11日に発表された内容を追いながら、業界にどういった変化が起こりつつあるのか、迫っていきたい。

互いに利益をもたらす協力関係

 Microsoft Hyper-VのゲストOSとして正式にFreeBSDをサポートするという発表は、マイクロソフトのみならず、NetApp、シトリックスという3社共同の取り組みとして発表された。この発表の背景には、Hyper-VでFreeBSDが動作することで、この3社はそれぞれ利益を得ることができるという理由がある。

 まずマイクロソフトには、Hyper-Vの採用機会を直接増やすという効果がある。Hyper-VのゲストOSサポート対象を広げることで、Hyper-Vのプロダクトとしての価値を引き上げることになる。FreeBSDサポートは顧客からの要望も多かったため、直接的な利益が見込める。

 NetAppやシトリックスとしては、最終的に同社らの提供するアプライアンスをHyper-Vで動作できるようにすることに目的がある。NetAppはFreeBSDをプロダクトのベースとして採用しており、Hyper-VにおいてFreeBSDが正式に動作することは、同社にとって価値がある。

正式サポートが必要な理由は「性能」にあり

 そもそもなぜFreeBSDの正式なサポートが必要なのかといえば、それは、サポートがない状態ではパフォーマンスが期待できないためだ。

 Hyper-VはType1のハイパーバイザで、完全仮想化を提供する。FreeBSDを正式にサポートしていない状態でもFreeBSDは動作する。しかしこの状態では、パフォーマンスがあまり期待できない。x86系の完全仮想化では、パフォーマンスにはあまり期待できないことが多い。

 Hyper-Vにおける正式サポートとは、簡単にいうと、ゲストOS側にVMBusを利用する機能を追加することを指している。VMBus経由でネットワーク通信やディスクアクセスを実施することで、完全仮想化の時と比較して高速なネットワーク通信とディスクアクセスを実現できる。

 マイクロソフト、NetApp、シトリックスが実施した今回の取り組みは、FreeBSDカーネル側にVMBusの実装を追加するというものだった。

 また、時刻の同期やシャットダウン処理、ハートビート処理など、ホストとゲストの関連性を強化するための機能も実装されており、よりシームレスにHyper-VからFreeBSDゲストを操作するための機能が追加されている。

最初はFreeBSD 8.3/8.2のサポートから

 5月の発表時点ですでに開発はマイルストーンに到達しており、高い性能を発揮しているという話があった。FreeBSDカーネルへの変更は最小限にとどめられており、コードの総数は6500行ほどとされている。ドライバモジュールとして実装されており、まず2012年夏をめどに、FreeBSD 8.3-RELEASEおよび8.2-RELEASE向けのドライバが提供されるものと見られる。対応するHyper-VはWindows Server 2008 R2およびWindows Server 8だ。

 以降は、FreeBSD 10-CURRENTへのマージに取り組むと発表されている。リリーススケジュールを考えると、FreeBSD 10.0、FreeBSD 9.2、FreeBSD 8.4以降はデフォルトでHyper-Vに正式対応した状態になるものと見られる。Hyper-V対応機能の強化は今後も継続するとしており、バージョンアップのたびに性能や使いやすさの向上が期待できる。

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