100億ドルの投資を基に、「明日のHP」を目指すデル:“もうITコンポーネントベンダではない”
デルが米テキサス州オースティンで開催中のカンファレンス「Dell World」の基調講演で、同社会長兼CEOのマイケル・デル氏は、企業向けIT総合ベンダとして自社を確立するために全力で取り組んできたことを強調した。
「過去4年間に(買収などで)100億ドルを投資してきた。昨年1年間だけでも50億ドル近くを投じ、ソリューションを拡充してきた」。
デルが米テキサス州オースティンで開催中のカンファレンス「Dell World」の基調講演で、同社会長兼CEOのマイケル・デル(Michael Dell)氏はこう話し、企業向けIT総合ベンダとして自社を確立するために全力で取り組んできたことを強調した。
「エンド・ツー・エンドのソリューションを提供する主要IT企業への進化を進める過程で、一貫した戦略として掲げてきたのは『顧客のビジネスをより深く理解し、製品を超えて、ソフトウェアおよびサービスの革新を進めていかなければならない』ということだ」。
同社はこの数年のうちに、ストレージではEqualLogicやCompellent Technologies、ネットワークではForce 10 Networks、セキュリティではSonicWall、シンクライアント製品ではWyse Technologiesといったハードウェア企業を買収した。その一方で、デル氏も強調するように、管理ソフトウェアのQuest Technologies、ASAP Software、Gale Technologies、Silverback Technologies、コンサルティング企業/システムインテグレータのPerot Ssytems、ACS、Clenty Software、Allin、クラウドサービスのSecureWorks、Boomi、MessageOne、InSite Oneなど、ソフトウェア/サービス分野における買収も目立つ。結果として、ソフトウェア部門には全社員のおよそ半分に相当する4万7000人が働き、粗利益の半分以上はソフトウェアが稼ぎ出している、とデル氏は説明した。
これらは、明らかにHPのような総合ITベンダへの変身を狙った動きだといえる。デルの幹部は、デルがHPのように従来からの資産を持たないこと、よりオープンでシンプルなITを推進できることを、事あるごとに強調している。
クラウドサービス提供も本格化
デルは、ハードウェアについては、サーバ、ストレージ、ネットワークを、いわゆる統合仮想化インフラ製品として一体で提供する動きを活発化させている。「『統合』は、市場においてデルが推進していく、破壊的な動きの中核を成すキーワードだ」(デル氏)。オープンで、顧客のIT規模に応じて最適な導入を可能とする、伸縮自在な設計が同社の大きな特徴という。同社は現在、統合仮想化インフラ製品をVMware vSphereベース提供しているが、OpenStackベースの製品も開発中だ。
サービスでは、OpenStackを採用したプライベート型IaaS、「Dell Cloud Dedicated」のテクニカルプレビュー版を、限定顧客に提供開始したと発表した。デルはVMware vSphereをベースとした「Dell Cloud Dedicated」も提供している。これらのサービスの目的は、デルの顧客が社内設置型のIT、クラウド上のIT、そしてこれらの混在と、すべての選択肢を活用していけるようにすること。ハイブリッドクラウド環境の運用を円滑化するツールも提供していく。
サービスではさらに、アプリケーションをメインフレームなどから移行するサービスや、ビジネスプロセスアウトソーシングのサービスが顧客に受け入れられていることをアピールした。今回発表の「SupportAssist」では、サーバやストレージの稼働をインターネット経由で遠隔監視、顧客が希望する場合にはデルが即時に問題を解決することができる。
デル氏は医療情報データ保管サービスや、英金融機関バークレイズ、米テュレーン大学、遺伝子解析研究機関「TGen」などの例を挙げ、デルが国際的企業から最先端の調査研究施設まで、幅広い分野でIT活用を支援していると強調した。デル氏は元米国大統領ビル・クリントン(Bill Clinton)氏が進めている世界規模の雇用創出、教育改善、地球温暖化防止などのプロジェクト、「Clinton Global Initiative」に対する支援も提供しているといい、基調講演にクリントン氏を迎えて同氏の考えを聞いた。
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