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さまざまなデバイスがWebと結び付いていくUXClip(23)(1/3 ページ)

テレビやカーナビ、家電とWebが連携していく「Web of Things」。NHKなど、最前線の取り組みが語られたカンファレンスをレポートする

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はじめに

 HTML5により、Webの可能性は大きく広がりを見せ、最近ではテレビやカーナビなどとの連携がよく取りざたされるようになってきました。今後、この流れはさらに加速し、さまざまな次世代Webサービスが提供されるようになると予測されます。今回のカンファレンスタイトルでもある「Web of things」というキーワードは、さまざまなデバイスがWebと結び付いていくという、Webのこれからの姿を表現しています。

1.HTML5によるデバイス連携。最新事情と未来予測


小松 健作(NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ主査)

 NTTコミュニケーションズ小松氏による講演では、Webからテレビをはじめとするさまざまなデバイスと連携する最新技術を中心に、WebSocketやWeb OSなどの最新トレンド技術の紹介を交えながら、従来のWebとこれらのWebの違いを説明し、開発者がWebサービス開発と今後どのように関わっていくかの提言が行われました。

Webモデルの変化

 小松氏は初めに、Webのモデルの変化について取り上げました。従来のWebは、クラウド上のサーバから配信されるコンテンツを、ブラウザ上で表示する、サーバとクライアントが垂直につながるモデルが主流でした。しかし、これからのWebは、デバイス同士がダイレクトにコミュニケーションするインタラクティブなモデルが主流となり、同時に、スマートフォンやタブレットに加え、テレビや家電など、連携するデバイスの幅も広がってくると、同氏は主張しました。

 それらWebの進化に伴い、使用される通信プロトコル(※1)も進化しており、従来のHTTPに加え、通信の双方向性や転送効率を高めて、よりインタラクティブな通信を可能にするWebSocketが登場しています。同氏は、インタラクティブ性を高める技術は、セキュリティリスクが大きくなることも考慮する必要があるそうです。

※1 プロトコルとは通信するフォーマットや通信における振る舞いをあらかじめ規定したもの

Web OSとは

 次に小松氏は、Web OSというキーワードについて取り上げました。Web OSでは従来のWebページに加え、Web OSアプリという新たなモデルが登場すると述べ、これにより、サービス提供のモデルはネイティブアプリも加え、3種類のアプリケーションの概念が存在するようになると説明しました。

 Webページはブラウザ上で表示されますが、Web OSアプリはブラウザのランタイム上で直接動かせます。Web OSアプリはインストールする前提で利用するため、Socket APIやBluetooth、USBなどのハードウェアに近いレベルのAPIでも使用できます。また、Web OSアプリの特徴として、ブラウザランタイムがOSの違いを吸収してくれるため、OSの種類に制約されにくく、マルチプラットフォームで動作させられます。

 また、最近では、ブラウザランタイム自体をOSの機能として提供する、Firefox OS、Chrome OS、Tizen Mobile、Windows 8などの登場で、各OS用のアプリケーションをHTML5ベースで開発できるようになり、W3CのSystem Applications WGにてWeb OS用のAPIについて標準化の議論がなされていると、同氏は付け加えました。

次世代Web技術のデモンストレーション

 次に小松氏は、Sokect APIを使用してブラウザ上にDLNAを実装したデモンストレーションを行いました。

 このデモンストレーションでは、Chrome Packaged AppsというWeb OSアプリを開発する仕組みを利用して、Socket APIを使用した簡易なWebサーバと、WebからのリクエストをDLNAに変換するサーバをChrome上に構築しています。

 構築したサーバはWebページから操作するUIを用意することで、ユーザーが任意のコンテンツをDLNA対応テレビで再生できるようになっています。以下3つのシチュエーションでデモンストレーションが行われました。デモンストレーションの様子はUstreamをご覧ください。

  1. PC内にある動画コンテンツをDLNAテレビで再生
  2. 認証が必要な動画コンテンツをDLNAテレビで再生
  3. モバイルネットワーク上のスマートフォンからホームネットワーク上のDLNA機器を操作し動画コンテンツをDLNAテレビで再生

 デモンストレーション終了後、同氏は、今回取り上げたDLNAに関しては、機器同士を通信させるプロトコルとして、UPnP(※2)という技術ベースを利用しているため、ネットワークの制約により利用できない場合もあるので注意が必要だそうです。

※2 さまざまなネットワーク機器を接続するだけで、利用可能にする技術の総称で、ネットワーク上の機器を検出する仕組みや制御する仕組み

既存のサービスを再構築する

 小松氏は、現在あるサービスをWebの中で再構築していくと、足りないものが見えてきて、それらを拡張していくことで、より良いサービスを創出できるという考えを述べ、地図をWebと融合させたGoogle Maps、チャットなどのコミュニケーションサービスをWebと融合させたTwitterやFacebookなどがその代表例だと挙げました。

 さらに、今回デモンストレーションを行ったDLNAの分野に関しても当てはまり、既存サービスをWebと融合させるためには、技術の標準化というアプローチが重要になってくるそうです。

 このようなWebでの再構築によるサービスのイノベーションは、既存のDLNAを活用した場合にも当てはまります。

Web of Thingsとうまく付き合っていくために

 小松氏は、「『Web of things』という言葉の下にWebがカバーする領域が拡大していく中で、今後は、特定の技術分野の知識だけでは、新しいWebサービスを開発するのが難しくなる。そのため、チームとしてサービス開発を行うのであれば、意図的にほかの技術領域にはみ出し、互いにグレーな部分をカバーできるような技術者同士のチームワークが必要になってくる」と主張し講演を締めくくりました。

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