NBAチームのスマートタブレットの活用術は?:三国大洋の箸休め(1)
テクノロジがちょっとだけ関係しそうなさまざまな話題を、分野の壁を越えてつまみ食いするコーナー。第1回はNBAとスマートタブレットの最新事情。
NBA(米プロ・バスケットボール・リーグ)ではいまプレイオフ・ファイナル(決勝戦)の真っ只中だが、このプレイオフ(毎年4月下旬から6月半ばにかけて行われる)たけなわの5月半ばに「NBAでもタブレット端末をめぐるサムスンとアップルの闘いがはじまった」と題する記事が、Bloombergで掲載されていた。
NBA Finals 2012 OKC Thunder vs Miami Heat CC:Photo used under Creative Commons licence with the kind permission of Paolo Rosa and Flickr
この記事によると、フェニックス・サンズがNBA30チームのなかでほかに先駆けてタブレット(サムスンのGalaxy Tab)を大量導入し、コーチやスタッフ、全選手に配布(計画の発表自体は昨年2月に:注1)。また、すでにデンバー・ナゲッツ、ヒューストン・ロケッツ、ロサンゼルス・クリッパーズも導入に関心を示している、などとこの記事にはある。
このところのスマホ/タブレットの急速な普及や、その影響でパソコンの売上低下が目立っていることなどを考えると、このNBAでのタブレット導入の動きも特に意外なことではないかもしれない。ただし、バスケットボール界の頂点といえるNBAで試みが成功すれば、それが早晩大学や高校(以下)のアマチュアの世界まで広がる可能性があるとあって、関係するベンダ各社の期待も大きいようだ。
サンズでの具体的活用方法については、選手が移動中に専用機のなかで次の対戦相手のビデオを観ながら「予習」をするとか、コーチ陣がインタラクティブに作戦(プレイ)を考えたりする、など。また、コーチが試合中にベンチで(会場に詰める専任スタッフが撮影・録画しておいた)それまでのプレイのビデオを選手に見せながら修正点を指示する、などといった使い方もあるという。
どれも、これまで(主にアナログ方式の)別の方法でなされていたものだろうが、例えば、過去には分厚いプレイブックのバインダを持ち込んだり、パソコン(その前はVTR機)のある場所まで出向く必要があったなどの不便が、タブレット導入でいっぺんになくなった、ということだろう。もっとも、サンズのアシスタント・コーチは「ベンチ突然タブレットを取り出して、ビデオを見始めるにのはまだ不自然な感じがある」としているから、今後もしばらく使い方の試行錯誤が続くことになるのかもしれない。
この記事には、サンズにGalaxy Tabを納入したのがベライゾン・ワイアレス(米最大手の携帯通信事業者)とあり、さらに同社はNFL(プロ・フットボール・リーグ)のデンバー・ブロンコスにも見たようなシステムを導入しているとある(注2)。またほかにFlying Tiger Entertainment、STATS LLCといった専業ベンダの名前も挙げられている。
このうち、Flying Tigerでは作戦をシミュレーションするアプリなどを開発しているが、この会社にはかつてセガでスポーツゲームの開発に携わっていたスタッフがおり、リリース予定の次期バージョンでは選手の姿を3Dで再現したテレビゲームさながらの機能も追加することになるという。
かつてマイケル・ルイスが書いたベストセラー・ノンフィクション作品『マネーボール』では、パソコンの普及(を通じたサイバーメトリクスの活用の容易化)でMLBの球団経営が大きく変わった、という話が描かれ、大きな話題を呼んでいた。あれから約10年がたったいま、「ポストPC(時代)」という流れのなかで、スポーツ界にも新たな動きが生じてきているようだ。
注2
NFLでの導入については、たくさんあるプレイを記したプレイブックを作成・行進していくだけでも、1チームあたり年間にだいたい10万ドル以上使っている、などという話もあり、それだけデジタル化のメリットが見えやすいということだろう。
三国大洋 プロフィール
オンラインニュース編集者。「広く、浅く」をモットーに、シリコンバレー、ハリウッド、ニューヨーク、ワシントンなどの話題を中心に世界のニュースをチェック。「三国大洋のメモ」(ZDNet)「世界エンタメ経済学」(マイナビニュース)のコラムも連載中。
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