デバイス&サービスのマイクロソフトが提供する3つのチャンスとは:さまざまなデバイス/インターフェイスで、Web開発者/デザイナも、そして世界中へ
Windows 8.1、Surface、Kinect、Xbox One…… さまざまなデバイスがつながる未来とは?Web開発者/デザイナにも基幹系システム構築案件をゲットするチャンスが来る。インストーラーはもういらない。流通コストを削減し全世界に展開できるストアの可能性―― 本稿では“デバイス&サービスカンパニー”のエバンジェリストチームに、マイクロソフトが目指すデバイスの姿と、開発者とのエコシステム構築について話を聞いた。
“遠かった未来”が手元にやってきた―― デバイスの側面から見るMicrosoft Platform Story
早速だが、以下の動画を見てほしい。「将来、私たちの生活はこう変化する」ということを表した動画だ。
壁一面に投影された映像を、手元のデバイスで操作する。手元で見ていた資料を、テーブルの大画面デスクトップにスッと移し、作業を続ける……。これらの技術は、遠い遠い未来の話ではなく、ほんの少し先、あるいはすでに実現できている技術だ。
例えば、下記の動画も見ていただきたい。これは「Bing Translator」というWindows 8アプリで、カメラで写した画像にある文字を解析し、翻訳して表示するものだ。夢物語は、いまや現実となった。
これらの動画は、マイクロソフトが作成したものだ。マイクロソフトといえば「OSやOfficeなどのパッケージを提供する企業」の印象が強いかもしれない、これからは「デバイス&サービスカンパニー」として舵を切っていくことが発表されている。
「デバイス」は、例えばWindows 8が動作するPC、タブレットデバイスをはじめ、Windows Phone、ゲームコンソールであるXboxなどを含んでいる。
「サービス」としては、すでにOffice 365、Windows Azure、Bing、Outlook.comなどが稼働しており、ソフトウェア販売からサービス提供へ移行しつつある。
もちろん、これまでの「ソフトウェア」パッケージ販売も継続し、3本の柱を持つ企業として活動をしていく。
その中で、やはり注目すべきは「デバイス」だ。本稿では“デバイス&サービスカンパニー”のエバンジェリストチームに、マイクロソフトが目指すデバイスの姿と、開発者とのエコシステム構築について話を聞いた。
【チャンス1】さまざまなデバイスで。さまざまなインターフェイスで。
「マイクロソフトが目指す“エンビジョニング”をなかなかアピールできていなかった」と語るのは、日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クライアントテクノロジー推進部の井戸文彦氏だ。
エンビジョニングとは、「将来を見据えながら、それに向けてテクノロジやデバイスなどを開発する」ということだ。冒頭のビデオは、その「将来」を表したもので、これを実現するために各個別のデバイスやデバイス間通信の定義を考えている。
例えば、その1つとして活躍するのが、身振り手振りで操作が可能となる「Kinect」だ。Xboxの入力デバイスとして登場したものだが、現在ではWindows向けのSDKもリリースされており、PCのインターフェイスとしても利用ができる。これはただ単にWindowsに対応したわけではなく、マイクロソフトが目指す未来の道筋に沿うよう、出るべくして出たものだと考えることもできる。
「Windows Phone、Xboxのほか、ポータビリティの高いPCやタッチデバイスなど、同じものを同じように扱えるようにすることがマイクロソフトのコンセプトだ。小さなデバイスだとタッチインターフェイスが有効だが、壁一面のディスプレイに対して同じタッチインターフェイスは使えないので、例えばKinectのようなデバイスを使って操作すればいい」(井戸氏)。
マイクロソフトの基本的な考え方は、1つのコードを、画面サイズや操作方法が異なる複数のデバイスで動作できるようにすることだ。開発者が苦労してプラットフォームの多様性を吸収するのではなく、開発環境・実行環境でカバーする―― マイクロソフトが考える未来を作るために、新たな苦労は不要となるという。
そのほかにも、「デバイスの多様性がアプリの可能性を大きく変えることになるだろう」と話すのは、同社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クライアントテクノロジー推進部 エバンジェリスト 物江修氏。「いままでは組み込み分野向けの特殊デバイスでないとできなかったことができるようになる。例えば、防水のタブレットデバイス。Windows 8が動くことにより、お風呂の中で使うアプリを組み込み技術者以外が作ることも可能」(物江氏)
デバイスの多様性によって、個人の開発者や、いままで別の領域に踏み込めなかった開発者にもチャンスが広がるのだ。
【チャンス2】Web標準のJavaScript+HTML5でもネイティブアプリを作れる! デザイナにも基幹系業務案件の可能性
では、未来を担う開発者は、どうやってこの世界に入っていくのだろうか。参入のための障壁は、限りなく低く目立たなくなっている。
マイクロソフトは開発ツールとしてVisual Studioを提供している。無償バージョンだけではなく、チームで効率的に開発できるような上位エディションも販売されている。いままでも.NETやC#などの言語を使いアプリを作成できていたが、これらに加えJavaScriptやHTMLといったWeb標準の技術をそのまま使えるのが、Windows 8の大きな特徴だ。
同社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クライアントテクノロジー推進部 エバンジェリスト 渡辺友太氏は、「Web標準の技術でアプリを作れるのは、いままでWindowsアプリを作っていなかった開発者も容易に参入できるという意味で、大きなメリットになる。JavaScriptとHTMLといえばWebアプリの印象が強いが、Windowsのネイティブアプリとしてそのままビルドが可能」と語る。
いままでの「開発」というと、小さなシステム開発であれば柔軟性は確保できるものの、大きなシステムになればなるほど無味乾燥なユーザーインターフェイスで、開発言語も特定のものしか使えなかったのが現状だろう。
渡辺氏はマイクロソフトのデバイス戦略――「開発者の入り口を極限まで広げ、世界に発信する」―― について、多くのオーディエンスに参加を促す。
「特に面白いのは、Web制作をしていたデザイナなのではないだろうか。いままでWebデザイナが基幹系システム構築に携わる案件は少なかった。しかし、あらゆるインターフェイスがJavaScriptやHTMLで作れるのであれば、より高収入が期待できる基幹系業務案件にもWebデザイナの方々が入り込めるチャンスになる」(渡辺氏)。
しかし、従来のWindows開発のノウハウが無駄になるかというと、もちろんそんなことはない。マイクロソフトはソフトウェア資産の「継続性」を重要視していることはご存じであろう。
「パフォーマンス重視の部分は、従来通りC#やC++などで部品を作り、インターフェイスはHTMLを、サービス側のロジックは再利用性の高いC#で」というようにハイブリッドな手法でアプリ作成ができるのだ。いままでの資産、ノウハウを生かしつつ、新たな手法を取り入れられることは開発者にとっては大きなメリットだ。
「C#や.NETで開発した既存のコードがそのまま動く事例も多い」とのことで、タブレット向けの画面デザインや仕組み以外の学習コストが最小で済むことはうれしいだろう。
【チャンス3】Windows ストアで自作アプリを手軽に世界中に流通可能
このように作られたアプリは、Windows 8で提供される「Windows ストア」で配布/販売ができることも大きな特徴だ。従来のWindowsアプリであれば、インストーラーを用意してDVD-ROMに焼き、パッケージとして流通させていたものが、単にWindowsストアに登録さえすれば、流通の手間とコストを意識することなく全世界に対してリリース・更新が可能となる。
「今までは、インストーラーをダウンロードして、インストール手順書を基に配布していたWindows向けのアプリが、これからは、ストアから数クリックで配布できるので、開発のハードルは大きく下がった。しかも、全世界に展開できるのはチャネルとしてものすごく大きなこと」(渡辺氏)
Windows ストアの市場規模について、同社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クライアントテクノロジー推進部 部長の奥主洋氏は、次のように述べる。
「他のプラットフォームでは、スマートフォンに加え、タブレットなどのスマートデバイスも合算したアプリストアにあるアプリ本数がよく話題に挙がるが、Windows ストアとWindows Phoneストアのアプリ数を合わせると、世界で30万本近い状況まで来ている。成長カーブの観点では、同時期の他のプラットフォームに比べると、最も速いスピードとよくいわれる。
もちろん、これ以外にも量販店やインターネットから入手できるWindowsアプリ、企業内のみでリリースされているような既存のWindowsアプリは、どのくらいあるかというと、世界規模では数百万本ともいわれている。Windows ストアは始まったばかりだが、従来のWindowsアプリの潜在顧客がどんどん移行していく大きなスケールの市場に向けて、使いたい言語で、使いたいアプリが作れる。新たな言語を覚える必要はない」(奥主洋氏)
これに加えWindowsストアで配布されているアプリは、Windows 8だけにとどまらない。今後登場するゲームコンソール「Xbox One」でも使えるなど、1つのアプリがさまざまな場所、さまざまなデバイス、さまざまなユーザーインターフェイスで動作する。
「開発環境でハードウェアのインターフェイスAPIを用意しているので、動作するデバイスが変わっても標準APIでカバーできる。さらに、デバイス間通信も考慮したAPIが8.1から登場する予定だ。冒頭のビデオで出てきたような世界はまったく夢物語ではなく、すでに個別のテクノロジは実現済み」(奥主氏)
マイクロソフトが作るのは「チャンスが広がる世界」
このように、マイクロソフトは近未来のビジョンを実現するため、タブレットデバイスであるSurfaceやWindows Phone、リビングに置かれるであろうXbox、驚きのユーザーインターフェイスを実現したKinectなど、多くのデバイスを用意している。これらを有効に使うアプリを作るための開発環境やアプリストアもしっかりと用意し、多くの開発者に「未来」を作ってもらえるように準備し続けてきた。
従来のデスクトップアプリの構築方法を捨てる必要はなく、新たにさまざまな入り口を作り、いろんな方法で参加ができる―― マイクロソフトが目指す未来の一歩目は、広く開かれているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2013年9月30日