やられたらやり返す! アプリ事業で“倍返し”ができるWindows ストアの特徴とは:知らないと損するアプリをWindows ストアに登録するべき、これだけの理由
「Windows 8端末の全てに店舗がある」といえる、Windows 8からのアプリストア「Windows ストア」。配布方法や管理方法が変わり、アプリによるマネタイズの方法が多種多様に加わった、これまでのデスクトップアプリケーションにはない「Windows ストアアプリ」の特徴についてエバンジェリストに聞いた。
Windows 8がリリースされて間もなく1年が経とうとしている。さまざまな新機能のなかで、注目すべきものはスタート画面にある「Windows ストア」だ。Windows 8からは、Windows 7までのいわゆる「デスクトップアプリケーション」とは大きく異なる「Windows ストアアプリ」が利用可能だ。「Windows ストアアプリ」は配布方法や管理方法が変わり、アプリによるマネタイズの方法が多種多様に加わり、そして、従来のC#/VBといった.NETフレームワークとは別にHTML/JavaScriptベースでも開発できるのが主な特徴だ。
本稿では、意思決定者や開発者、そしてアプリ開発者になりたい全ての人に向け、いますぐアプリをWindows ストアに登録すべき理由を解説しよう。
マネタイズの自由度の高さと安全性が魅力―― エバンジェリストが語る「Windows ストア」
日本マイクロソフト ディベロッパー&プラットフォーム統括本部 クライアントテクノロジー推進部 物江修氏と、渡辺友太氏。この2人のエバンジェリストは、まだWindows ストアにアプリが数十本しかなかったころから活動を行っている。
物江氏はWindows ストアの、開発者から見た特徴を端的に述べた。
「Windows ストアは単なる『アプリ公開所』という印象を持たれているかもしれませんが、これは『アプリの販売所』なのです。『Windows 8端末の全てに店舗がある』ともいえます。『無償アプリも0円で売っている』と考えるといいでしょう。ただ、製品であるからには、価格が0円であっても販売に耐えるクオリティがなければなりません。Windows ストアでは、提出されたアプリに対し、販売=公開するに値するものであるかどうか判断する審査が行われます」(物江氏)。
Windows ストアの認定の要件についてはドキュメント「Windows 8 アプリの認定の要件」が公開されているので、参照するとよいだろう。
アプリのマネタイズを担うWindows ストアでは、下記のような手法で収益を得ることが可能だ。これらは、組み合わせてアプリに組み込むこともできる。
- アプリに値段を付けて販売する
- アプリ内課金を利用する
- マイクロソフトが用意した「Ads in Apps for Windows 8」の広告を利用する
- サードパーティ製の広告/課金システムを利用する
Windows ストアにアプリを登録した場合、売上の70%を開発者が受け取れる(1つのアプリにつき、総売り上げが2万5000ドルを超えると、80%)。アプリ自体は無料とし、その中でゲームアイテムやシナリオ、電子書籍や画像、音声などのコンテンツを課金するスタイルももちろん可能だ。
課金の仕組みはマイクロソフトがきっちり安心に作り込んでいるため、利用者は安全に支払い処理ができる。開発者は口座情報を登録するだけで、アプリから収益を手にすることが可能だ。
「Ads in Apps for Windows 8」はインプレッション課金で、単に画面に表示されるだけで収入が発生する。他の広告モデルのようにクリックやリンク先での商品の購入などは必要ない。
「Ads in Apps for Windows 8」を使用して広告を表示するには、Ad SDKをダウンロードして開発環境にインストールし、Visual Studio 2012で必要な参照設定を行った後、SDKドキュメントに沿ってHTMLタグを記述するだけとなる。
ただし、広告の表示で収入を得るには、「Ads in Apps for Windows 8 pubCenter」で支払を受けるための手続きを行い、表示する広告のAdユニットIDとアプリ用のIDを発行してタグの中に含める必要がある。
そして、注目すべきはサードパーティ製の広告システム、および課金システムが自由に使える点だ。安全、安心なマイクロソフトの課金システムだけではなく、外部のシステムを利用できることは、さらなる収益アップを狙うことができる。
サードパーティ製の広告システムは「Windows ストア アプリの広告のガイドライン」に従う形であれば、掲載可能だ。例えば、アフィリエイト広告のアクセストレードは、すでにWindows ストアアプリ向けの広告SDKを公開しているので、手順に従って広告を組み込めば、Windows ストアアプリにアフィリエイト広告を掲載できる。
利用できるサードパーティの課金システムはクレジットカード情報を扱うための基準であるPCI DSSに準拠した業者である必要があり安心だ。現在では、WebPayなどが対応している。しかも、1.のようにマイクロソフトに手数料を30%(20%)取られることはない。
このように、Windows ストアを開発者から見ると、有料販売、0円での販売、広告による収益、アプリ内販売、そしてサードパーティ広告/課金システムの利用と、アプリの特徴に合わせて、さまざまなマネタイズ手法を用意していることが大きなポイントだ。
また1.の有料アプリに関しては、公開開始時のみとなるが、無償の期間指定試用がWindows ストアの設定のみで行えるので、別途試用版を作る必要がないのもうれしい機能だろう。
渡辺氏は「このように、開発者が便利なだけではなく、利用者も安心して利用できるアプリストアをマイクロソフトが提供している。その上で、過去に利用していた課金システムがあれば、そのまま活用でき、アプリ展開ビジネスを自由に広げられる仕組みとなっている」と述べた。
スタートアップする前に、まずストアデビュー! マーケティングや営業を学ぶならWindows ストアに登録だ
Windows ストアの特徴は、それだけではない。アプリを登録することにより、誰が、いつ、アプリを使っているのかなど、多くの統計情報が見られることも注目すべきポイントだろう。
アプリはリリースしたら終了というわけではなく、反応を見ながら、さらにブラッシュアップしていくことが多いだろう。このとき、有効になるのは利用者からのフィードバックだ。Windows ストアの管理ダッシュボードでは、日本だけではなく世界約40カ国の利用者からの生の声だけではなく、どの時間帯に使われているか、クラッシュの回数、そして男女比や年齢などの情報を見ることが可能だ。これらはアプリをマーケティングとして使う可能性も秘めている。
例えば、キャンペーンのためにアプリをリリースし、どの年齢層が興味を持つかを統計情報から確認することで「アプリは無料だが、データを取得することでマネタイズする、と考えることも可能だ」(物江氏)。
Windows ストアに登録するためには、当然ながらアプリを作る必要がある。従来であれば.NETの専門的な開発言語を利用する必要があったが、Windows 8/Visual Studioを利用することにより、JavaScriptやHTMLを扱えればWindows ストアのアプリをネイティブで作成できるようになった。
これは、誰もが「Windows ストアアプリの開発者」になれる可能性がある、ということだ。基本的にInternet Explorer 10と同じレンダリングエンジンで動作するHTML/JavaScriptアプリが作れるので、例えば昔作ったブラウザアプリをビルドして、Windows ストアにそのまま登録ができる。これまでの資産を生かせるのはうれしいだろう。
実際にWindows ストアにアプリを登録すると、アプリがどのように使われているのかがビビッドに伝わってくる。その反応を見てユーザーインターフェイスを変更したり、新機能を追加する。それが好循環していくと、ストアのランキングも上昇し、結果、開発者には収益が上がってくる――。
これは、まさに「ビジネス」と「マーケティング」だ。アプリを作るスタートアップ会社を作る前に、まずWindows ストアデビューしてみるというのも社会を知る1つの手段になるのかもしれない。
アプリのリリース後の情報収集やアップデートが簡単に
アプリケーションのストアというとスマートフォンやタブレットをイメージしがちだが、このWindows ストアはタブレットだけではなく、デスクトップPCやノートPCにも、アプリを配信可能なプラットフォームだ。
従来であれば、開発したアプリのインストーラーを作り、DVD-ROMやUSBメモリなどにパッケージングを行い、「モノ」として流通させる必要があったが、もう在庫を持つ必要はない。またダウンロード販売のように、ダウンロード用のサーバの用意や、決済システムの導入、クレジットカード決済を行うための加盟契約、といったことも必要ない。
単にストアに登録さえすれば、世界中のWindows 8端末に対して配信、販売が可能なのだ。
このとき、ストアに登録したアプリの統計情報が生きてくる。「いままでは、デスクトップのアプリケーションをリリースしてもその後の状況はほとんど把握できなかった。Windows ストア経由でアプリをリリースすれば、その使われ方も把握できる上に、機能追加などのアップデートも簡単です。新しいバージョンを作ったら、再度ストアにパッケージをアップロードし、提出すれば良いだけ。また、Windows 8.1からは、利用者の操作なしに、アプリのアップデートが自動でインストールされるようになる予定です」(渡辺氏)。
そして、従来のデスクトップアプリケーションの開発者も、ほかのデバイスへ進出することが容易になった。
「いままでのWindowsプラットフォームを知っている方であれば、簡単なAPIでデバイス連携やプッシュ通知などの機能を利用できる。デスクトップアプリケーションはツール/ユーティリティ系のアプリが多いが、Windows ストアアプリの機能を生かした面白いコンテンツや機能を提供すれば、大きく世界が広がるだろう。また、有料アプリだけではなく、追加機能やコンテンツに応じてアプリ内課金されるようなアプリを作れば、マネタイズの可能性も広がる」(渡辺氏)。
アプリストアに公開後は、その後アプリをいかにして利用者に認知させるかも気になるところだろう。Windows ストアでは、キーワードを設定できるため、まだ人気のないキーワードに関係するアプリを作って公開するなど、キーワード戦略を取ることも可能だ。
またアプリのダウンロードURLをWeb上で公開できるので、自身のブログやメディアへの露出などで認知を広めることもできる。さらにWindows 8.1では、いわゆる「パーソナライズレコメンド」機能で、利用者の好みにあったアプリが推奨される予定だ。
そのようにしてランキング上位を獲得することで、さらなる認知を広めるサイクルを作ることがアプリストア戦略の定石だが、Windows ストアはランキング自体も一味違う。単なるダウンロード数だけでランキング上位になるのではなく、クラッシュせずに安心して使えるかどうかや、デザインの評価、利用者からの評価なども踏まえて、ランキングが決まるという。ランキングを基に使うアプリを決める利用者からすれば、いわゆる「ランキングスパム」を気にすることがないので、安心の機能だろう。
マイクロソフトへの先入観を変える「Windows ストア」
従来のマイクロソフトの提供するプラットフォームで開発となると、おそらく「基幹系業務のお堅いアプリの開発」「高度な言語によるプログラミング」といったイメージが付いていたのではないだろうか。
Windows 8における開発、そしてWindows ストアでのアプリ販売は、もしかしたらそのような先入観を変える出来事なのかもしれない。従来の手法だけではなく、Web標準ともいえるJavaScript+HTML+CSSでアプリが作れ、そして世界に向けて数クリックで販売が行える―― それが、Windows ストアの神髄だ。
渡辺氏は、「“Windowsアプリの開発=受託での開発”という印象があったかもしれない。しかし、.NETの技術力だけではなく、いまやJavaScript+HTML+CSSに関する技術力があればストアにアプリを並べることが可能。開発者登録さえ完了すれば、この世界に入り込める」と、Windows ストア、そしてWindows 8アプリの開発へのハードルの低さをアピールした。
物江氏は、さらにこう述べる。「Windows ストアへの登録は、まだ“チャンスの塊”ともいえるタイミング。他のプラットフォームにおいても、最初に出した人が有名になっている。ぜひ、Windowsでの開発にチャレンジしてみてほしい」。
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