クラウド基盤としての“Hyper-V”:Windows Server 2012 R2登場(2)(3/3 ページ)
「Hyper-V」は、OSのバージョンアップとともに、その機能性とスケーラビリティを拡張してきた。Windows Server 2012 R2では第2世代仮想マシンを導入して、最新のPC技術を取り込みセキュリティ面も強化した。可用性やサービス品質を向上させる機能も備える。
System Centerで仮想化基盤をクラウドに変換
Hyper-VはWindows Serverの標準の役割の1つである。他の役割と組み合わせて、Windows Serverの標準機能だけで可用性の高い仮想化基盤、基本的な管理機能、バックアップ機能を利用できる。この仮想化基盤を、プライベートクラウドというもう1つ上のレベルまで引き上げるのが、「System Center 2012 R2」だ。サービスプロバイダがパブリッククラウドサービスの基盤を構築する上でも、System Center 2012 R2は必要なツールセットを提供する。その中心となるのが、System Center 2012 R2の仮想化専用のコンポーネント「Virtual Machine Manager」である。
Hyper-Vの仮想化基盤にVirtual Machine Managerを導入することで、仮想化ホスト、ホストクラスタ、記憶域、ネットワークといった仮想化の基盤(ファブリック)から、その上で稼働する仮想マシンやサービスの展開・管理・更新までを一元的に行うことができるようになる。System Center 2012 R2の他のコンポーネントと組み合わせることで、パフォーマンスや正常性、SLAの監視、セルフサービス化、災害対策、業務プロセスの統合と自動化などを実現することが可能だ。
Virtual Machine Managerの管理コンソール。Virtual Machine Managerを利用すると、ファブリック、仮想マシン、サービスの展開と更新を自動化できる(画像クリックで拡大表示)
Virtual Machine Managerはサービスプロバイダ向けには、NVGRE(Network Virtualization using Generic Routing Encapsulation)の仮想ネットワークの展開とテナントへの提供機能を強化した。この機能は、Hyper-V標準の「Hyper-Vネットワーク仮想化」を用いた仮想ネットワークの作成、「Hyper-V仮想スイッチ」の拡張によるIPアドレスの自動割り当て、Windows Server 2012 R2のサイト間VPN接続ゲートウェイ(Windows Server Gateway)の展開と提供、Windows Server 2012 R2の「IPアドレス管理(IPAM)サーバー」による仮想ネットワークのIPアドレス管理で実現されるものだ。Windows Server Gatewayは、Windows Server 2012 R2の「リモートアクセス」の役割を利用したもので、マルチテナント対応のソフトウェアルーターとして動作し、各テナントの仮想ネットワークに対して、サイト間VPN接続、およびNAT(ネットワークアドレス変換)によるインターネットアクセスを提供するものである。
プライベートクラウドやサービスプロバイダ向けの災害対策機能として、オンラインサービスである「Windows Azure Hyper-V Recovery Manager」(現在、プレビュー提供中)と連携したオフサイトレプリケーションの設定と復旧計画の構成が可能になる。Windows Azure Hyper-V Recovery Managerは、Virtual Machine Managerで管理される複数のクラウド間で、Hyper-Vレプリカの機能を利用して仮想マシンを複製する。プライマリサイトのクラウドが利用不能になった場合は、Windows Azure Hyper-V Recovery Managerに事前に登録しておいた復旧計画に従って、レプリカサイトにフェイルオーバーし(仮想マシンの開始順やスクリプトの実行など)、クラウドのサービスを短時間で復旧できる。
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