現実味を帯びてきた「Database as a Service」/MySQL:Database Watch(2013年11月版)(1/2 ページ)
今月はOracleが掲げるDBaaSとExadataのインメモリデータベース技術、加えてMySQLのラボにて開発中の新機能について紹介します。
今月はOracleが掲げるDBaaSとExadataのインメモリデータベース技術、加えてMySQLのラボにて開発中の新機能について紹介します。
オラクルが提唱するサービスとしてのデータベースとは
オラクルの情報は秋に一新されます。オラクル最大の年次イベント「Oracle OpenWorld」が例年10月ごろにサンフランシスコで開催され、ビッグニュースがここで発表されるからです。これに続いて日本でもイベントが開催されます。
今年(2013年)は10月22日に「Oracle Days Tokyo」が開催され、基調講演にはオラクル・コーポレーション システム・テクノロジー シニア・バイスプレジデント ホアン・ロアイザ氏が登壇しました。同氏はOracle Databaseにはバージョン6から関わり、Oracle Exadataの開発責任者を務めるなどの重要人物です。
オラクルのイチオシはやはりOracle Exadataです。オラクル・コーポレーション CEOのラリー・エリソン氏が「Exadataはオラクル史上で最も急成長している製品」と自らアピールするほどの製品であり、オラクルの開発力と熱意が注がれているということでもあるのでしょう。とにかくスケールが大きくてパワフルな“エンジニアドシステム”です。当初はデータウェアハウスのための専用マシンとして位置付けられていましたが、OLTPにも強くなり、Exadataの中核を担うOracle Databaseの新版となる12cが出たことで、より統合的に稼働できる環境が整いつつあります。次はどちらへ向かうのでしょうか。
基本路線としては「どのデータベースもこれで」と「パワフルさは誰にも負けない」を目指すところは変わらないでしょう。
これからのキーワードになるのは「DBaaS」――データベースをサービスとして利用するという概念です。かつてのように専用のハードウェアやシステム構成を組むのではなく、全てを統合し仮想化することで管理工数やコストを効率的に減らすことを目指します。こうしたオラクルが目指す世界を一言で表現すると「Database as a Service(DBaaS)」となるのでしょう。
DBaaSの実現で柱となるのが、強力なハードウェア(Exadata)、マルチテナント・アーキテクチャで、かつ統合的に使えるデータベース(Oracle Database)、運用の最適化や課金測定が行える管理ツール(Enterprise Manager)です。この3方向で開発を進め、あらゆる最新技術をExadataに詰め込み、性能強化および最適化を図っていくのでしょう。
Exadataはインメモリであるだけではなく「デュアル」フォーマット
技術面でニュースとなるのがExadataに搭載するインメモリデータベースです。インメモリであるだけではなく「デュアル」フォーマットである、とロアイザ氏は述べています。従来型の行指向のデータベースと、昨今集計で有利とされる列指向のデータベースの両方を定義可能だそうです。
似たようなものとしてIBM DB2などに搭載されたBLUアクセラレータがあります。こちらも行指向と列指向の「ハイブリッド」なデータベースというのが特徴です(微妙に表現が違いますね)。BLUアクセラレータは、従来型の行指向のデータベースでも「create table」で末尾に「ORGANIZE BY COLUMN」を添えれば列指向のテーブルがディスクに作成されるというものでした。
一方のオラクルのものは「インメモリ」データベースなので、デュアルとなるのはディスクではなくメモリ上で、ということになります。
実際にインメモリデータベースを使用する上で、ユーザー側で設定が必要なのは、テーブルまたはパーティションをインメモリデータベースとして指定するか、どのくらいのメモリサイズをインメモリデータベースに使用するのかの2項目だけとのことです。
ロアイザ氏によると、「実行するクエリごとにどちらが軽く処理できるか(データベースエンジン側が)選択する」そうなので、インメモリデータベース内ではネイティブに行指向型と列指向型が両立できているようです。インメモリデータベースではSQLやアプリケーションに特に変更を加えることなく使えるとのことで、どういうデータ格納方式となっているのか興味深いところです。
Exadataではインメモリデータベースの他にも、PCIe接続のフラッシュストレージ採用によるI/Oの高速化、SIMD命令セットによるCPUリソース活用の効率化、データ圧縮やサーバ内通信技術の最大限の利用などにより、性能強化に力を入れています。
ビジネス面でいうと、今年(2013年)に入り、Salesforceや楽天などでExadata導入事例が次々と発表されました。当初、Exadataはオラクル直販が9割だったそうですが、今では7割がパートナー経由で販売されているそうです。
Oracle Days Tokyoでは楽天 執行役員 DU副担当役員 CTO補佐のJonathan Levine氏が登壇し、「Exadataによりチェックアウト処理が30%高速化、カタログの更新が30%高速化、コストは半減した」と証言していました。
楽天のLevine氏の直後に日本オラクルの日本オラクル テクノロジー製品事業統括本部長 専務執行役員の三澤智光氏が登壇しました。
「私も楽天のプラチナ会員なので普段の買い物で負荷テストに協力している」と冗談を言っていました。日本シリーズ優勝セールではどのくらい負荷テストに協力したのでしょうね。
Oracle Database専用バックアップマシン、BI
三澤氏は他のトピックも紹介してくれました。Oracle OpenWorldで発表された新しいマシンにOracle Database Backup Logging Recovery Applianceがあります。名前から分かるようにバックアップに特化したマシンです。三澤氏は「開発段階では短いコード名でしたが、正式名は長くなってしまいました」と苦笑い。長い正式名はラリー・エリソン氏が直々に命名したのだとか。こちらは「ロギング」がポイントで、データベースのログをひたすらキャプチャし続けるものだそうです。なお、筐体にはでかでかと「B」の文字があるので愛称は「B」になりそうですね。
続けてBI関係の機能強化について。近年ではBIの集計結果をタブレットから参照する要望が高まっています。そこに欠かせないのがモバイル端末用の開発環境となるOracle BI Mobile App Designerです。「パワポで資料を作成する感覚でモバイル端末の画面開発ができます」と三澤氏。写真は三澤氏が作成した画面をデモしている場面です。
分析用のマシンのOracle Exalyticsにはプラットフォームに変化が見られます。新モデルは「Oracle Exalytics In-Memory Machine T5-8(Exalytics T5-8)」、SPARC T5チップを8基搭載したUNIX(Solaris)マシンです。従来はXeonチップを中心としたLinuxベースのものでした。サン・マイクロシステムズと統合した効果がいろいろなエンジニアドシステムに見られるようになってきました。
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