クラウド時代の運用管理を強力に支援するSystem Center 2012 R2:【徹底解剖】System Center 2012 R2(1)(2/2 ページ)
System Center 2012 R2は、Windows Server 2012 R2への対応とプライベートクラウドとパブリッククラウドを連携したハイブリッドクラウドへの対応強化が行われた最新の運用管理スイート製品である。企業においてはプライベートクラウドだけではなく、パブリッククラウドの利用も考慮する必要があり、両者のシームレスな連携は欠かせない。System Center 2012は、そうしたハイブリッドクラウド環境を効率よく運用管理するため、大幅にブラッシュアップされている。
一元的なバックアップ管理ソリューションData Protection Manager
System Center Data Protection Manager(SCDPM)は、Windowsベースのサーバー、クライアント、仮想マシン、およびアプリケーションを継続的に保護するバックアップおよび復元ツールだ。
Windows Serverには標準で「Windows Server Backup(WSB)」というシンプルなバックアップ機能が実装されているが、より柔軟で詳細なバックアップを行うためには、別途サードパーティ製のバックアップツールを使用する必要がある。その最有力候補がSCDPMである。SCDPMではWSBでサポートされたブロックレベルのコピーサービスや、ボリュームコピーサービスを使用してバックアップを行う。また、WSBではサポートされないテープ装置へのバックアップも可能だ。
SCDPMでは、各種バックアップ対象アプリケーションに特化したバックアップを行うことも可能だ。具体的には、SQL Server、Exchange Server、SharePoint Server 、Hyper-V、ファイルサーバー、Active Directoryなどのサーバーやアプリケーションに対応したバックアップと復元を行える。また、システム状態の回復、およびベアメタル回復もサポートしており、Windowsデスクトップクライアントの保護も可能だ。
BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)対策を行う際は、バックアップメディアを複数の場所に保管することが求められるが、SCDPMではWindows Azureと連携することで、クラウド上にバックアップデータをコピーすることができるので、D2D2C(ディスク → ディスク → クラウド)のバックアップ戦略を容易に実行することができる。
プライベートクラウド環境においては、ホストベースのバックアップはもとより、仮想マシンベースのバックアップも必要になるだろう。特に、仮想マシン上でExchange ServerやSQL Serverを稼働させている場合には、仮想マシンにSCDPMのエージェントをインストールし、仮想マシンごとのバックアップを行うことで対応可能だ。
SCDPMでは1つの管理コンソール上で、各所に分散している仮想、物理を問わないシステムを統合的にバックアップできるので、効率の良いバックアップ環境を構築することができる。
ITILベースのサービスポータルService Manager
System Center Service Manager(SCSM)は、CMDB(Configuration Management Database:構成管理データベース)を中心に、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)に基づいたITサービス管理のフレームワークを提供するツールだ。これには、インシデント管理、問題管理、変更管理、リリース管理、およびライフサイクル管理にすぐに使用できるプロセスが含まれている。
SCSMには他のコンポーネントとの連携を行うコネクタが用意されており、CMDBにさまざまなデータをインポートすることが可能だ。コネクタの種類としては、Active Directoryドメインサービス(AD DS)、CSVファイル、およびその他のSystem Center製品(SCOM、Orchestrator、SCVMM、SCCM)がある。
SCSMではSharePointベースのポータルを提供し、ソフトウェアまたはサービスカタログにより、セルフサービスの要求内容にリンクするなどのカスタマイズを容易に行うことができる。また、ビジネス承認プロセスやシステムプロセスをトリガーするように要求内容を構成できるので、自動化レベルを上げることによる大幅な効率化の向上が見込めるだろう。
System Center 2012 R2のコストメリットを最大限に生かすには
System Center 2012 R2を購入すれば、上に紹介した8つのコンポーネントを全て利用することができる。また、System Center製品群を使用すれば、プライベートクラウドの構築だけでなく、オンプレミスを含めたITシステム全体を網羅するとても強力なツールとなることが理解いただけただろう。
そこで、必ず考慮するのはコストであろう。実はSystem Centerのライセンスは下記の表のように、非常に分かりやすい体系になっている。
Datacenter | Standard | |
---|---|---|
ライセンス当たりの物理プロセッサの数 | 2 | 2 |
ライセンス当たりの管理対象オペレーティングシステム環境(OSE)の数 | 無制限 | 2 |
Select License レベルAとソフトウェアアシュアランス(L&SA)の3年間の参考価格 | 51万2400円 | 18万8100円 |
表1:System Center 2012 R2のライセンス |
System Centerのライセンスの考え方は管理対象の物理サーバーに対して、1ライセンス必要になる。Datacenterエディションならば、1台のHyper-V上で動作している仮想マシンの数は無制限となる。仮に、100台の物理マシンを10台の仮想ホスト上に集約すれば、ライセンスは10ライセンス必要になる。5台に集約できれば5ライセンスとなり、仮想マシンの集約がコストに直結することが理解いただけるだろう。
近年のハードウェアのパフォーマンスの向上は目覚ましいものがあり、仮想マシンの集約率が上がっているので、System Centerはコストメリットが享受できるベストソリューションとなるのではないだろうか。
筆者紹介
阿部 直樹(あべ なおき)
エディフィストラーニング株式会社所属のマイクロソフト認定トレーナー。Active Directory、Network、Security、Hyper-V、Clusterなどを担当。マイクロソフト トレーナー アワード(2010年)およびMicrosoft MVP for Hyper-V(Apr 2010 - Mar 2014)を受賞。個人ブログ『MCTの憂鬱』でマイクロソフト関連情報を発信中。
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