エンジニアよ、空を見よ:自分戦略2014(1)
@IT自分戦略研究所は今年、設立(約)10周年を迎えた。環境がめまぐるしいスピードで変化しているいま、エンジニアは何を考え、何をすべきなのか。@ITゆかりの方々、カッコいいエンジニアの皆さんにお話を伺った。
@IT自分戦略研究所がオープンしてから、約10年の月日がたった。その間に、勉強会ブーム、OSSプロジェクトの盛り上がり、Twitterなどのサービスの普及と、エンジニアを取り巻く環境は大きく変わり、会社の枠に縛られないキャリアの選択がしやすくなった、まさに自分戦略を立てやすくなったのではないか。筆者はそう考えていたのだが――。
エンジニアは変化を受け入れるだけでいいのか
藤村厚夫さん
書籍および雑誌編集者、ソフトウェア製品のマーケティング責任者を経て、2000年にアットマーク・アイティ(現アイティメディア)を創業。2011年、同社退任。現在、スマートニュース執行役員、「SmartNews(スマートニュース)」の事業開発を担当している。
「確かに環境や道具は変わった。けれど、それは社会全体にもいえることで、エンジニア特有のことじゃないよね。エンジニアにはむしろ、『変化を作り出せているのか』と問いたい」と、いきなり辛口な意見から語り始めたのは、2003年に@IT自分戦略研究所を立ち上げ、「自分戦略とは何か」をエンジニアに問い掛けた張本人、藤村厚夫さんだ。
変革=イノベーションは、今の生活を守りたい人にとっては良いことばかりとは限らない。中にはイノベーションで世の中が便利になることによって、余儀なく働き方を変えねばならなくなった職業もある。では、彼らは一方的な被害者だったのか? 否、「彼らは変化に気付くべきだった」と藤村さんは言う。
藤村さんはエンジニアを支援する立場として、長年エンジニアの世界を見てきた。ここ十数年だけでも、Javaブームがあり、クラッシュし、ITバブルがあって、クラッシュし、そのたびにエンジニアはその時々のトレンドに翻弄されてきた。今はモバイル、ゲーム開発のトレンドが来ているけれども、また同じようなことが起こっていないだろうか。
空を見れば、行くべき方向が分かる
「エンジニアは環境やトレンドの変化に耐える力を身に付けるべきだ。それは10年前に@IT自分戦略研究所を立ち上げたときから変わらぬ考えだ」と藤村さんは言う。
世界の変化に追い付き、恩恵を享受するだけでは一般の人と変わらない。エンジニアには、イノベーションが来ていることを『察知し』『受け止め』『乗り越える』力を付けてもらいたい。むしろ『変化を先取りする』『変化を作り出す』側であってほしい。さらに付け加えると、『その変化が社会にどういう影響をもたらすか』にまで想像を巡らせてほしい。これからの社会をこうしたいから、この技術を身に付けようという発想でいてほしい。「エンジニアは、イノベーションを起こせる特権的な職業だ。僕は、エンジニアは最も創造的な存在であるべきだと思うんだ」(藤村さん)
では、変化を乗り越え、変化を作り出すために、必要な心掛けとは何だろうか。藤村さんは、それは「方向感」だと言う。
この方向性とは、巡礼者にとっての北極星のような、『いつかはここに行きたい』という目標を持つことだ。
人生はどんなに綿密に計画を立てても、その通りに行くとは限らない。実際の地図と同じで最短距離で目的地に行けるわけではないし、周りの状況によってやむを得ず遠回りすることもあるだろう。「たとえ短期的に地上で脇道にそれても、北極星は同じ場所にある。空を見上げれば、自分が行きたい方向、行くべき方向が分かるはずだ。どんなときでも『自分は何をしたいのか』という方向感(自分にとっての北極星)を持っていれば、大枠では道を外れることはないだろう」(藤村さん)
藤村さん自身にとっての方向を尋ねると「サポートすること」という答えが返ってきた。これからの社会を作っていくのは、エンジニアリングであり、エンジニアリングを使ったビジョンである。自分の持てる力を使ってそういう人たちをサポートすること、それこそが藤村さんの北極星だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.