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目をだます方法――触覚と認知の広がりを考える錯覚とインターフェースの可能性(1)(1/2 ページ)

 ユーザー参加型の学会として発足し、毎回数万人規模の視聴者を集める。2013年12月21日ニコファーレで行われた「ニコニコ学会β」第5回シンポジウム。本稿では全体のハイライトとなった人間の感覚に注目したセッションを紹介する。

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 ユーザー参加型の学会として発足し、毎回数万人規模の視聴者を集める「ニコニコ学会β」。2013年12月21日ニコファーレで行われた第5回シンポジウムでは、5つのセッションが行われた。慶應義塾大学の稲見先生が座長を務め全体のハイライトとなった、人間の感覚に注目して発表する「研究100連発」を紹介する。

ニコファーレ壁面のベクション画像で早くも感覚の不思議を体感

 研究100連発は、大学や研究所などの研究機関に勤めるいわば「プロ」の研究者が、1研究45秒、15分で計20の研究を発表する。本来なら1冊の本になるような研究を「どうすれば伝えられるか」を考えながら45秒に圧縮することで、誰が見ても楽しめるエンターテインメントとしての熱気を生む仕掛けだ。たくさんの研究を並べることで、研究者としての「色」が見えてくる。

 今回の「研究100連発」について、座長の稲見先生は「実際のモノの世界では物理法則が大事になるが、人間の行動の世界では、感覚・知覚といった生理に根差して作る必要がある。感覚・知覚のマジシャンとして、5名の先生に集まってもらった」と紹介、「自分が最も発表を見たい人を選んだ」と語った。

 セッションのオープニングには、「ベクション」と呼ばれる錯覚映像が会場全体に投影された。ベクションとは、映像が動いていると自分が動いているかのように錯覚する仕掛けを指す。


ベクション画像が会場の壁をグルグルと回る

視覚と触覚を行き来する〜感覚器官と認知 伊福部達氏(東京大学名誉教授)

 1人目の発表者、伊福部達氏(東京大学名誉教授/高齢社会総合研究機構)は人間工学の研究が専門だ。工学の立場から、人間がどうやって情報を認識しているか(認知)を研究している。

 視覚だけでなく触覚に情報を同時に伝えることで、3倍速で映像の内容を理解する方法や、耳が聞こえなくなった人の内耳に直接電気刺激を与えることで言語を理解させるインターフェースなどの研究を通じて、目や耳といった感覚器官と脳がどうやって情報を取得・処理しているかを研究している。


微笑みながら研究の苦労話などを生き生きと語る伊福部氏(撮影:石澤ヨージ)

内耳に電気刺激を流すことで聴覚を取り戻させる研究

3倍の速さで聞き取りを可能にする

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