JavaScriptで家電を操作するための赤外線信号の基礎知識:Arduinoで始めるWeb技術者のためのIoT入門(4)(2/3 ページ)
今注目のInternet of Thingsを実現するセンサーデバイスのインターフェースとしてArduinoを使い、電子工作の基礎から実装までを紹介する連載。今回は、エアコンの制御をWebブラウザーから行うために、制御の媒介となる赤外線リモコンの信号をJavaScriptとArduinoの機能で再現する方法を解説します。
可変長の汎用的なデータをやりとりする「SYSEX Message」とは
デバイスとその命令のパターンは無数に存在し得るため、Firmata規格で通信内容を厳格に定めることは不可能でした。そこでFirmata v2.0で、可変長の汎用的なデータをやりとりするためにSYSEXという機構が導入されました。SYSEXのフォーマットは、下記に示す通り非常にシンプルです。
位置 | データ | 値 |
---|---|---|
0(先頭) | START_SYSEX | 0xF0 |
1 | コマンド | 0x00〜0x7F |
2〜N-1 | データ部 | 7 bitデータの配列 |
N(末尾) | END_SYSEX | 0xF7 |
下記リストは、ここから押さえておくべきポイントです。
- データの先頭と末尾にSYSEXの開始と終了の目印がある
- コマンドでデバイス側で実行するハンドラー関数を指定
- Firmata 仕様で定義されたコマンドを指定。この値を見てArduinoは処理を切り替える
実は、johnny-fiveモジュールを使ってArduinoとシリアル通信を確立直後に、裏側でこの仕組みが動いています。具体的には、SYSEXの「CAPABILITY_QUERY(0x6B)」コマンドでピンの情報を取得した後、「ready」イベントを発火させています。
SYSEXはどう使うべきなのか
ここで、Arduinoに任意の処理を実行させるために2つアプローチが考えられます。
- オリジナルのコマンドを定義してリクエスト/レスポンスを実現する
- 「STRING_DATA(0x71)」コマンドで与えた文字列を基に挙動を分岐させる
しかしながら、Node.jsでArduinoを操作する場合、執筆時点では後者を選ばざるを得ません。理由はjohnny-fiveが依存しているnpmモジュール「firmata」が知らないコマンドを伝達しない実装になっているためです。
よって、STRING_DATAを使いつつ、送信した文字列で処理を切り替えるアプローチを取ります。johnny-fiveからSTRING_DATAコマンドを送信する方法は次回に解説します。今回は、STRING_DATAコマンドから呼び出される関数を実装します。
回路作成
前回と同様、ブレッドボードを使わず、パーツをつなぐだけです。赤外線センサーをデジタルピンの11番に、赤外線LEDをデジタルピンの12番に結線します。
JavaScriptで赤外線情報を読み取る
前述の通り、JavaScriptではマイクロ秒単位でON/OFFの変化を判定することが困難なので、赤外線情報を読み取る作業は、スケッチとArduino IDEの「シリアルモニタ」機能で完結させます。ここで得たON/OFF情報は、後の赤外線信号を発生させるときに、そのまま利用します。
読み取り用スケッチ
読み取り用スケッチは次のようになります。
#define IR_RECV_PIN 11 #define IR_TIMEOUT_USEC 100000 void setup() { Serial.begin(57600); pinMode(IR_RECV_PIN, INPUT); } void loop() { static int previousBit = HIGH; int currentBit = digitalRead(IR_RECV_PIN); static unsigned long previousTimeUSec = 0; unsigned long currentTimeUSec = 0; unsigned long elapsedTimeUSec = 0; if ( currentBit == previousBit ) { return; } currentTimeUSec = micros(); elapsedTimeUSec = currentTimeUSec - previousTimeUSec; if (elapsedTimeUSec < IR_TIMEOUT_USEC) { Serial.print(elapsedTimeUSec); Serial.print(", "); } else { Serial.println(""); } // update previousBit = currentBit; previousTimeUSec = currentTimeUSec; }
- ヘッダー部分
1行目で赤外線センサーを接続するピンを指定します。今回はデジタル11番ピンです。2行目は、1回目の信号と2回目の信号を区別するための時間です。OFF状態を100ミリ秒以上継続する信号がなかったので、経験則でこの値を指定しています。
- setup関数
Arduinoボードでスケッチを実行したとき、最初に1回だけ実行される関数です。シリアル通信の転送速度を指定し、利用するピンを読み取りモードに設定しています。
- loop関数
メインの処理をここに記述します。繰り返し実行される関数です。実行するたびに赤外線センサーの値を読み取ります。loop関数が前回実行された時と今回とで赤外線のON/OFF状態に変化があったのかをチェックし、変化があったときに継続時間を出力しています。
このスケッチを動かして、赤外線の情報を出力してみましょう。プログラムを起動するまで手順は、以前StandardFirmataをアップロードしたときと同じです。Arduino IDEで左上の「検証」ボタンを押してコンパイルした後、「マイコンボードに書き込む」ボタンを押します。
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