Googleドライブをファイルサーバーとして活用するノウハウ教えます:Googleドライブ活用(1/2 ページ)
企業ユーザーでもファイルサーバーとしてGoogleドライブなどを活用する例が増えている。オンラインストレージを利用することで、社外からでもスマートフォンを利用してデータにアクセスできるなど、利便性も向上する。本稿では、Googleドライブを例にオンラインストレージをファイルサーバーとして活用する際の手順や留意点などを紹介する。
クラウドサービスの急速な普及やWindows Server 2003のサポート終了(2015年7月15日終了予定)などに伴い、オンラインストレージ(クラウドストレージ)市場が急速な伸びを見せている。GoogleのGoogleドライブやMicrosoftのOneDrive、DropboxのDropbox、AmazonのAmazon Cloud Driveなど、実に多くの企業がオンラインストレージサービスを提供しており、コンシューマーだけでなく企業ユーザーの利用も増えているようだ。オンラインストレージを利用することで、社外からでもスマートフォンを利用してデータにアクセスできるなど、利便性も向上する。
日本国内のクラウドストレージ市場の売上額予測
IDC Japanのレポート「国内Storage in the Cloud市場動向および予測を発表」より。日本国内のオンラインストレージ(クラウドストレージ)市場の売上額予測をまとめたもの。レポートによれば、2012年〜2017年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は29.9%、2017年の市場規模を423億5400万円になるという。
そこで本稿では、Googleドライブを取り上げ、ファイルサーバーの置き換えとして導入する際の手順と留意点を解説する。なおGoogleドライブは、無償版の「Gmail.com」に含まれている他、有償版の「Google Apps for Work(旧称 Google Apps for Business)」や2014年6月に提供開始となった容量無制限の「Google Drive for Work(Google Apps Unlimited)」でも提供されている。
Google Apps for Workとは?
2014年9月2日(米国時間)、Googleの企業向け部門となるGoogle EnterpriseをGoogle for Workに組織名変更(公式ブログにて発表 )したことに伴い、Google Apps for BusinessからGoogle Apps for Workへとサービス名称を変更した。提供される機能や価格は変わらず、年契約の場合は1ユーザー当たり500円/月、月契約の場合は1ユーザー当たり600円/月となっている。
Google Drive for Workとは?
2014年6月26日(米国時間)にGoogle最大のイベントとなるGoogle I/Oで発表された新サービス。Google Apps for Workの全サービスに加えて、容量無制限のストレージ、メールやファイルのアーカイブサービスとなるGoogle Vault、より詳細な監査ログや監査レポートなどの高度なセキュリティ機能が含まれている。価格は、年契約・月契約ともに1ユーザー当たり1200円/月となっている。
Googleドライブの概要と提供形態ごとの違いを整理する
「Googleドライブ」は2012年4月から提供されているオンラインストレージである。GoogleドライブにはWindows OS、Mac OS、Chrome OS、iOS、Android、Linuxなどのあらゆるプラットフォームからインターネットを経由してアクセスできる。Googleドライブの使い方などについては、「オンラインストレージ『Googleドライブ』入門」を参照のこと。
Googleドライブは以下のような特徴を持っている。
■機能(1):ファイルやフォルダーのアップロード
最大5Tbytesと非常に大きなサイズのファイルをアップロードできる他、格納している各ファイルには詳細なアクセスコントロールが可能なため、作業内容を適切な相手と共有できる。
■機能(2):格納ファイルのプレビュー表示
画像、HD動画、Microsoft Office、Adobe Illustrator、Adobe Photoshopなど、30種類を超えるファイルをそのまま表示できる。
Googleドキュメント | 文書、スプレッドシート、プレゼンテーション、図形描画、フォーム |
---|---|
画像 | .JPEG、.PNG、.GIF、.TIFF、.BMP |
動画 | WebM、.MPEG4、.3GPP、.MOV、.AVI、.MPEGPS、.WMV、.FLV、.ogg |
テキストファイル | .TXT |
マークアップ/コード | .CSS、.HTML、.PHP、.C、.CPP、.H、.HPP、.JS |
Microsoft Office | .DOC、.DOCX、.XLS、.XLSX、.PPT、.PPTX |
Adobe Portable Document Format | |
Apple Pages | .PAGES |
Adobe Illustrator | .AI |
Adobe Photoshop | .PSD |
Tagged Image File Format | .TIFF |
Autodesk AutoCAD | .DXF |
Scalable Vector Graphics | .SVG |
PostScript | .EPS, .PS |
TrueType | .TTF |
XML Paper Specification | .XPS |
アーカイブ ファイルの種類 | .ZIP、 .RAR |
■機能(3):ファイルの検索
Googleドライブの格納されている各種ファイルやフォルダーは、Googleドライブの画面上部にある検索ボックスからキーワード検索や下表の検索オプションによる絞り込み検索が可能だ。
オプション | 説明 | 例 |
---|---|---|
""(引用符) | 完全に一致する語句を含むドキュメントの検索 | "この語句と完全一致" |
OR | 指定した単語の少なくとも1つを含むドキュメントの検索 | タコス OR ナチョス |
-(ハイフン) | 特定の単語を含まないドキュメントの検索。「アットマーク」ではなく「アット」に関するドキュメントを検索するには、右例のように指定する | アット -マーク |
owner: from: |
特定のユーザーがオーナーのドキュメントや、特定のユーザーからの共有ドキュメントの検索 | owner:test@exsample.com from:test@exsample.com |
to: | 他のユーザーへの共有ドキュメントの検索 | to:test@exsample.com |
is:starred | スターを付けたアイテムの検索 | is:starred |
is:trashed | ゴミ箱に移動したアイテムの検索 ※ このオプションはより軽快になり、パソコン上での操作性向上のためにユーザーインターフェースが変更された新しいGoogleドライブのみで利用可能 |
is:trashed |
type: | ドキュメントの種類での検索。対象となる種類: folder、document、spreadsheet、presentation、pdf、image、video、drawing、form、script、table | type:spreadsheet |
before:YYYY-MM-DD after:YYYY-MM-DD | 特定の日より前(または後)に編集されたアイテムの検索 | before:2014-08-01 after:2014-08-01 |
title: | アイテムのタイトルでの検索 | title:"議事録 2014" |
app: | 特定のアプリで開くことができるアイテムの検索 ※ 新しいGoogleドライブのみで利用可能 |
app:"Google ドキュメント" |
source:domain | ユーザーの検索可能なアイテムのデフォルト設定の代わりに、ユーザーのドメインに一般公開で共有されたアイテムを検索する ※ 新しいGoogleドライブのみで利用可能 |
source:domain |
■機能(4):Googleドキュメントによるファイルの作成と編集
Googleドライブには、Microsoft OfficeのWord、Excel、PowerPoint相当のワープロ、表計算、プレゼンテーション作成が可能なGoogleドキュメントが含まれている(Googleドキュメントについては「Googleドキュメントの互換性を検証」参照のこと)。Googleドキュメントは、各ドキュメントの作成や編集に専用ソフトウェアは必要なく、ブラウザーのみで利用できる。保存できるドキュメントの容量は無制限で、最大50人までの同時編集が可能、Word/Excel/PowerPoint形式やPDF形式へのファイル変換、それらのファイルからGoogleドキュメントへの変換など、共同作業を支援するための多くの機能を標準で搭載している。
Googleスプレッドシート
Googleドキュメントの表計算を行うサービスで、関数、ピボットテーブル、グラフなどはもちろんのこと、マクロに相当するGoogle Apps Scriptも利用可能である。
■機能(5):ファイルの共有とアクセス権の設定
Googleドライブに格納されているファイルやフォルダーは、無償版Gmail.comやGoogle AppsユーザーなどGoogleアカウントを持つユーザーと厳密なアクセス権設定の元で共有することができる。用意されているアクセス権の種類は「オーナー」「閲覧者」「コメント可」「編集者」の4種類となる他、「ウェブ上で一般公開」「リンクを知っている全員への公開」「組織ドメイン内での限定公開」など共有範囲を広域に設定することもできる。
その他、Google Apps for WorkやGoogle Drive for Workを利用するビジネスユーザーは、管理コンソールを利用することで組織内のユーザーによる外部とのファイル共有の可否を制御することも可能となる。
管理コンソールで設定可能な共有オプションのメニュー
Google Apps for WorkやGoogle Drive for Workを利用するビジネスユーザーは、管理コンソールから組織外へのファイル共有を制御できる。
提供サービスごとのGoogleドライブの違い
Googleドライブは、前述の通り無償版Gmail.com、Google Apps for Work、Google Drive for Workのそれぞれで提供されるが、提供サービスごとにいくつかの機能の違いがある。
例えば格納容量のサイズは、無償版Gmail.comが15Gbytes(追加料金を支払えば最大30Tbytesまで拡張可能)、Google Apps for Workが30Gbytes(追加料金を支払えば最大30Tbytesまで拡張可能)、Google Drive for Workが無制限(ただし、4ユーザーまでの場合は1ユーザー当たり1Tbytes)となる。
以下に、それぞれの提供サービスごとの違いを整理する。
無償版Gmail.com | Google Apps for Work | Google Drive for Work | |
---|---|---|---|
ストレージ容量 | 15Gbytes | 30Gbytes | 無制限 ※4ユーザー以下は1ユーザー当たり1Tbytes |
追加ストレージの購入時の最大容量 | 30Tbytes | 30Tbytes | 無制限 |
アップロード可能な最大ファイルサイズ | 5Tbytes | 5Tbytes | 5Tbytes |
Googleドキュメントの容量カウント | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
ファイルの共有設定 | 可能 | 可能 | 可能 |
ファイルの共有設定の制御 | 不可 | 可能 | 可能 |
ファイルの所有権の一括移管 | 不可 | 可能 | 可能 |
Googleドライブアプリケーションの利用 | 可能 | 可能 | 可能 |
Googleドライブアプリケーションの利用制限 | 不可 | 可能 | 可能 |
オフライン設定 | あり | あり | あり |
ウイルススキャン | あり | あり | あり |
GoogleドライブAPI | なし | あり | あり |
使用状況レポート | なし | あり | あり |
セキュリティレポート | なし | あり | あり |
監査レポートと監査API | なし | なし | あり |
アーカイブ(Google Vault) | なし | なし | あり |
サービスレベル契約(SLA) | なし | 99.9% | 99.9% |
テクニカルサポート | なし | 24時間364日 | 24時間364日 |
上表の通り、無償版Gmail.comのGoogleドライブとGoogle Apps for WorkのGoogleドライブは、管理機能の有無やSLA、テクニカルサポートの提供という面が大きな違いとなる。一方で、Google Drive for WorkのGoogleドライブは、容量が無制限なだけでなく、アーカイブや詳細な監査レポートなど高度なファイル管理機能が提供される。
Google Vaultによるファイルアーカイブ
Google Vaultではメールのアーカイブだけでなく、Googleドライブ上の全てのファイルをアーカイブとして保持しておき、必要に応じて検索、エクスポートなどが行える。企業のコンプライアンス対応にも適用可能だ。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.