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SQLチューニングだけじゃないデータベースチューニングを知るDatabase Expertイベントレポート(1/2 ページ)

フラッシュストレージアレイの登場、最新バスやストレージコントローラー規格の登場、大容量メモリの普及など、データベースと記憶装置にまつわるハードウェア事情はここ数年で大きく変化しつつある。運用やチューニング環境を考える上では、こうしたハードウェアの進化はもちろん、製品実装技術にも深い理解が必要だ。編集部主催セミナーを基に、多様化するデータベース周辺のハードウェアのうち、フラッシュストレージとの組み合わせ方についての最新情報を紹介する。

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 2014年9月12日、@IT編集部では富士ソフト アキバプラザ(東京・秋葉原)を会場に、主催セミナー「DB高速化道場」を開催した。

 データベースの高速化というと、従来はアプリケーションのチューニングやデータベースソフトウェアの改善など、主にアプリケーションソフトウェア面での対策が中心だったが、近年のフラッシュストレージや大容量メモリ、あるいはインメモリデータベースの実用化・低価格化により、ハードウェアのリプレースによる高速化が一気に注目を集めることとなった。従来通りのデータベースソフトウェアやアプリケーションに集中したチューニングだけでなく、CPUやメモリ、ストレージ装置など特性を深く理解した選定や運用が、データベース環境運用や効率化を考える上での鍵となりつつあるのが現状だ。

 その中でもフラッシュストレージ装置は、多様な製品が出そろいつつあり、性能や運用効率化への取り組みなど、独自の特徴を持ったものが多くある。また、これらの製品は活発な開発競争が行われており、最新の情報を広く理解しておくことが、選定の目を育てる意味でも重要なポイントとなっている。こうした背景から@IT編集部が企画した本イベントでは、現在注目を集める最新フラッシュストレージ製品のベンダー4社を招き、来場者の製品選定指針とすべく、各ベンダーそれぞれの特徴を紹介し、実際の導入事例や実装技術の詳細を解説していただいた。

性能検証で高いパフォーマンスを発揮:Violin Memory


マクニカネットワークス ネットワーク第2事業部 プロダクト第3技術部 第3課 課長 岡本健氏

 オールフラッシュアレイ製品「Violin Memory」の販売代理店であるマクニカネットワークスは講演で、同製品の特性と共に、富士通との共同検証結果を示した。登壇したのはマクニカネットワークス ネットワーク第2事業部 プロダクト第3技術部 第3課 課長 岡本健氏と、富士通 プラットフォーム技術本部 ISVセンター 横谷誠一氏。

 岡本氏は、Violin Memoryのようなオールフラッシュアレイ製品の導入でデータベースを高速化するアプローチについて、「ソフトウェアのチューニングによるアプローチは人的なコストがかさむ上、その効果が予測しにくい。それに対してディスクアレイをオールフラッシュ製品にリプレースする方法は、ストレージ以外の環境に一切手を加えずに済むため、データベース管理者は本来の業務に専念できる。また、導入効果を事前に無償のアセスメントサービスで検証することもできる」と述べ、そのメリットの大きさを強調する。

 なおマクニカネットワークスと富士通は、富士通製のハイエンドサーバー「PRIMEQUEST 2800E」と、「Violin Memory 6616」を組み合わせた環境で、実際にデータベースのベンチマークテストを行った。その結果、シーケンシャルI/OとランダムI/Oの双方において、極めて高い処理性能を発揮したという。


富士通 プラットフォーム技術本部 ISVセンター 横谷誠一氏

 横谷氏によれば、「インメモリデータベースのログ書き込み処理が高速化されるため、インメモリデータベースシステムの基盤としてもViolin Memoryは極めて高い性能を発揮することが分かった」という。なお、この検証作業の詳しい内容はホワイトペーパーにまとめられ、マクニカネットワークスのWebサイト上で公開されている。

 既にViolin Memoryを導入し、高い成果を上げる国内企業の事例が出てきており、中には、バッチ処理時間が8分の1に短縮した例や、1時間以上かかっていたデータ抽出時間がわずか数分にまで縮まった例もあるという。

 「Violin Memoryは導入コストが高いというイメージがあるが、多くのユーザーからは『システム全体のコストや運用コストまで含めると、むしろコスト削減効果がある』という声をいただいている」(岡本氏)

MLCを採用、ティア1ストレージとしての機能を重視:Pure Storage


図研ネットウエイブ 営業本部 第二営業部 専任部長 秋山俊氏

 図研ネットウェイブは、オールフラッシュストレージアレイ製品「Pure Storage」の販売代理店だ。セミナーで登壇した図研ネットウエイブ 営業本部 第二営業部 専任部長 秋山俊氏は、「DB高速化の決め手は……!? 〜オールフラッシュストレージアレイ Pure Storageが実現する高速DBソリューション〜」と題したプレゼンテーションを行った。

 Pure Storageは、全てのデータ記憶領域をフラッシュメモリで構成した、いわゆる「オールフラッシュストレージアレイ」製品の一つだ。一般にこの手の製品が「超高性能・超高価格」であるのに対して、Pure Storageはティア1、つまり現状ではHDDのディスクアレイが用いられている業務システム領域に、比較的低コストで気軽に導入できるフラッシュストレージ製品だと言われている。秋山氏によれば、「旧来のディスクアレイ技術に捕われることなく、ただフラッシュメモリを効率的に利用できることだけを目的に、一からソフトウェアを設計したことで、高性能と低価格の両立を実現させた」という。

 例えば、フラッシュメモリの問題点の一つである書き込みエラーを、「RAID-3D」と呼ばれる独自のデータ保護技術でカバーし、また書き込み寿命が短い点もインライン重複排除とデータ圧縮で書き込み処理を最小限に抑えることで解決している。このように、独自のソフトウェア技術でフラッシュメモリに特有の制限をクリアしているため、フラッシュメモリの中でも安価なMLCタイプのメモリを採用し、低コストと可用性を高いレベルで両立しているという*。

 また、メンテナンスやシステム拡張の作業を無停止で行えたり、3年ごとに無償で最新バージョンのコントローラーに交換できるなど、保守の面でもこれまでにない独自の機能・サービスを提供している。なお図研ネットウエイブでは現在、「Pure Storage FlashArray 400シリーズ」の3つの製品ラインアップを販売しているが、その中で最も安い「FA-405」(最大実効容量40Tbytes)は、現在1000万円を切るキャンペーン価格で提供されている。

 次ページでは、デル、インサイトテクノロジーのプレゼンテーションと、パネルディスカッションの内容を紹介する。


*MCL フラッシュメモリは、データ書き込みの方式および製造方法が異なるMLC(Multi Level Cell)、SLC(Single Level Cell)などの種類がある。MLCは比較的製造工程が簡易であり、かつ、データ書き込みの方式においてもSLCよりもデータ当たり単価が安いという特徴がある。反面、SLCはデータ当たりの単価が高くなるが、性能や信頼性が高い。



基調講演:異なるフラッシュストレージを適材適所で使い分ける楽天


楽天 データストア管理グループ マネジャー 山崎遼氏

 イベント冒頭では楽天 データストア管理グループ マネジャー 山崎遼氏が登壇し、「楽天のサービスを支えるDB高速化技術」と題した講演で、同社におけるフラッシュストレージ導入の経緯を紹介した。楽天の各種サービスを支えるデータベース基盤は、もともと共用SANとUNIXマシンで構成されていたが、度重なるシステム増強で構成が複雑化してしまい、運用性やパフォーマンスに課題が生じていたという。

 そこで同社が採った解決策が、データベース基盤をプライベートクラウド環境に集約して運用をシンプル化するとともに、フラッシュストレージの導入でパフォーマンス面の課題を一気に解決するというものだった。山崎氏によれば、「複雑化したレガシーシステムを簡単に、迅速に、かつパフォーマンスを落とさずにクラウド化していくストーリーの中で、フラッシュストレージの導入は偶然ではなく必然だった」という。

 同社がまず導入したのは、HPのストレージ製品「3PAR 7450」。個別のデータベースサーバーにSSDを散発的に搭載していたのを3PAR 7450に集約することで、パフォーマンス向上とコスト削減、さらには可用性の向上を同時に実現できたという。

 次の段階として、高い可用性は求められないものの、より低コストでシンプルな運用性が求められるシステム向けに、Pure Storageが提供するフラッシュストレージ製品「Pure Storage」を採用した。山崎氏によれば、「何よりそのシンプルな運用性に引かれてPure Storageの採用を決めた。まるでiPhoneを操作するかのような簡単さで、フラッシュストレージを管理できる」という。

 さらには、Oracle DatabaseのRAC構成を載せるためのデータベース基盤として、よりパフォーマンスに特化したViolin Memoryのフラッシュストレージアレイ製品も導入した。このように楽天では、ただ単に「速いから」という理由だけでなく、個別のニーズや用途に応じて性格の異なるフラッシュストレージ製品を段階的に導入し、適材適所で使い分けている。「フラッシュストレージの『パフォーマンス以外のメリット』にも積極的に目を向け、全体的なTCOで判断することで、その導入効果を最大限に高められる」(山崎氏)


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