検索
連載

「分かる、できる、本当に使える、OpenStack超入門」セミナーリポート〜ユーザー、ベンダーが本音で語った「できること、変わること」〜特集:OpenStack超入門(8)(2/3 ページ)

2015年6月16日、編集部が開催した「分かる、できる、本当に使える『OpenStack』超入門」。OpenStackユーザーとソリューションベンダーが全方位的にOpenStackの導入・活用の勘所を掘り下げた。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

非エンジニアに対象を拡大。異種ハイパーバイザーも管理するヤフー

 続いて登壇したのは、ヤフーでOpenStack活用を指揮する伊藤拓矢氏。伊藤氏が所属するシステム統括部 サイトオペレーション本部は、データセンター回りを統括する部署で、伊藤氏はそこで、OpenStackを専門で担当するインフラ技術1部の部長(プライベートクラウドリーダー)を務めている。昨年のセミナーにもユーザー代表として登壇したように、ヤフーはOpenStack大規模運用の先駆者的存在だ。

ALT
ヤフー システム統括部 サイトオペレーション本部 伊藤拓矢氏

 OpenStackの運用を始めたのは2013年7月のこと。現在は「古い基盤は全てクローズし、IaaS基盤は全てOpenStackに移行した」状況にある。伊藤氏はまず、2年間の運用経験を次のように振り返った。

 「データセンターを抽象化したくてOpenStackを導入しましたが、導入から2年が経ち、運用のサイクルが回るようになりました。かつては、セキュリティの問題に対応するためのハイパーバイザーのリブートに予想以上に苦しめられたこともあります。今では基盤を常に最新にするというポリシーの下、最低限のパッケージを入れるようにし、それらを定期的に再起動するといった運用のライフサイクルを回しています」(伊藤氏)

 現在、OpenStackの稼働インスタンス数は5万インスタンスを超え、約2000人の開発者が開発サーバーを調達して利用できる環境になっている。また、対象ユーザーも開発者だけではなく、データ分析を行うサイエンティストや、企画系社員、営業系社員など、エンジニア以外にも広がった。利用者増に伴い、OpenStackに対する社内での問い合わせも増えたことから、「KVM」以外に「VMware vSphere(ESX)」、ベアメタル、コンテナー環境にも対応したという。KVM以外の基盤は20クラスター稼働しており、それらもOpenStackから管理しているという状況だ。

 管理面で大きく変わったのは、共通化したAPIを使って、KVM、VMware、ベアメタル、コンテナーを同じ手法で管理していることだろう。伊藤氏はそのメリットについて、次のように説明した。

 「ユーザーにとっては、どんなリソースを調達するときも共通APIで調達できることが一番のメリットです。ベアメタル、VMware、コンテナーなど、それぞれについて分からないことがあった時も、それぞれ違う窓口に問い合わせる必要はありません。目的が同じなのに窓口が異なると、例えば新しく人が入ったときに3通りの調達方法を覚える必要があるなど、学習コストの無駄につながります」

 運用管理者にとっても、VMwareやベアメタルを統合管理できることで、管理コストの低下につながるというメリットがある。ちなみにKVMとVMwareの使い分けについては、セキュリティやHA、ライブマイグレーションといったVMwareの提供機能を利用したい場合にはVMwareを利用するというスタンスだという。

「インスタンスは捨てることが前提」提供価格は相場の30分の1

 ヤフーでは調達するKVMインスタンスに対して利用料を取っているが、料金は「パブリッククラウドの相場の30分の1」を実現している。インフラを提供する側として、価格競争力は常に意識しているという。

ALT
ヤフーの伊藤拓矢氏にも公開取材スタイルであらゆる角度から話を聞いた

 「いくらお金を掛けてもいいという条件だとしたら、全てVMwareなどの商用製品という選択肢もあったかもしれません。ただインフラの人間としては、価格競争力を持ったインフラを提供することを常に考えなければなりません。AWSなどのパブリッククラウドに対してもそうです。AWSは便利ですが、便利過ぎて抜けられなくなったという話があります。コスト的な問題で移行できないケースもあります。一箇所に依存するのではなく、複数に分散させてコスト的な競争力を持たせることが重要です」(伊藤氏)

 OpenStackで共通APIによる管理を実現し、価格競争力のあるインフラを提供することはベンダーロックインへの対処にもつながる。また昨今は、OpenStackのAPIが使える基盤がサービスとして提供される動きもベンダー間で進みつつある。そうした動きも見越して、システムがある程度の規模になったときに、マイグレーションできるパスを想定しておくことが重要だという。

 「そうしておけばOpenStackのAPIが使える基盤に乗り換えることもできますし、リソースが足りなくなった場合にそちらで増やすといったこともできます。コスト感が合わなくなったら別のところに移ればいい。そういうことがOpenStackのAPIを基準にできるようになります」と同氏。最後に、これからOpenStackを使うという企業に対しては、次のようなメッセージを贈った。

 「インフラ設計で大切だと思うのは、捨てる勇気を持つことです。作って捨てるを繰り返すことで、最新の状態を維持することができます。作って捨てるというのはとても単純で取り組みやすいオペレーションです。そうすることでクラウド基盤のライフサイクルをしっかり回せるようになると思います」(同氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

[an error occurred while processing this directive]
ページトップに戻る