実録 あるエンジニアが公認会計士に転身するまで:お茶でも飲みながら会計入門(100)
元ITエンジニアで現会計士の吉田延史さんが会計用語や事象を解説する本連載。第100回目は、筆者夫婦が別の専門職から公認会計士を目指した理由や、それぞれの勉強法などを解説します。※100回記念「ミニ絵本」無料プレゼント
編集部より
会計システムに携わるITエンジニアに、業務知識として会計の基礎知識をお伝えする連載「お茶でも飲みながら会計入門」は、今回100回目を迎えました。
そもそも、この連載はなぜ始まったのでしょうか。連載第12回「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」で、筆者の元ITエンジニア、現会計士の吉田延史さんは、このように話しています。
エンジニアであっても、顧客がシステムを業務で使う温度感を知っておかないといけないと思いました。業務の裏には会計があり、会計上にどう数字が転記されていくのかという仕組みを知ることは重要です。
さらに、会計知識はシステム開発の業務で役立つだけでなく、転職をしたりフリーエンジニアとして働いたりする際にも知っておいて損はないとも話しています。
今回は連載100回記念として、いつもとは趣を変えて、筆者吉田さんとイラストのAyumiさん(実は二人はご夫婦なのです。しかも二人とも会計士!)が、公認会計士を目指したきっかけや、公認会計士の試験制度などについてのお話です。エンジニアのキャリアチェンジ例としても、参考にしてください。
100回記念として、Ayumiさん書き下ろしの「ミニ絵本」も作成しました。二人の勉強法の違いからプロポーズのエピソードまで、おなじみのかわいらしいイラストでつづられています。無料&一切の登録不要ですので、お気軽にダウンロードしてください。
本連載で学んだ会計の知識が、エンジニアの皆さんの日々の業務の役に立ち、さらに仕事の幅が広がるきっかけとなることを願っています。
1.公認会計士を目指した理由
今回は、私が公認会計士になるまでについてを、お話しします。
私が公認会計士を志したのは、社会人になってからです。それまで、会計について勉強したことはほとんどありませんでした。
当時私はITエンジニアだったのですが、仕事に不満を感じていたわけではなかったし、会社ではそれなりに評価されていたと思います。しかし、自分の市場価値について漠然とした不安はありました。
そのころ妻から「資格の勉強をしてほしい」と言われて、一緒に会計士を目指すことになったのです。
2.公認会計士試験の動向と就職率
私が受験勉強していたころは、「内部統制報告制度(J-SOX)」の導入を控え、金融庁が公認会計士を増やすと明言していました。その言葉通り、会計士試験合格者は一気に増加しましたが、J-SOX導入後は公認会計士の需要が落ち着き、リーマンショックからの不況も手伝って、就職難の時期がありました。
現在は景気が回復して新規に上場する会社も増えているので、試験合格者で就職できない人は、ほぼいません。
3.脱サラまで
「人知れず試験に合格して、みんなを驚かせたい」と思っていましたので、最初のうちは、会社の人には内緒で受験勉強をしました。自宅で通信講座を受講することもできたのですが、モチベーション維持のために塾に通学して勉強しました。平日夜は受講できなかったので、土曜日と日曜日に目いっぱい勉強しました。
しかし、カリキュラムが進むにつれて、十分な勉強時間を確保できず、勉強と仕事を両立できなくなったため、受験直前に会社に打ち明けて退職することにしました。
ぎりぎりまで退職せずに、仕事を継続しながら勉強したのは良かったと思います。最初から退職して勉強に専念していたら、時間のありがたみが分からなかったでしょうし、「万が一勉強に挫折したら、復職できなくなるのではないか」と心配になったでしょう。
4.勉強中に気を付けたこと
(1)週1回は休日を設定する
退職後は時間がたくさんありましたが、ややもするとメリハリがなくなってしまいます。そこで、プールに行ったり友達と会ったり、わざと試験勉強から離れる日を作りました。
(2)実例を見る
勉強している内容が実務にどのように影響しているかを意識するようにしました。例えば、上場株式を買って株主総会に出席して、株主総会がどのようなものなのか、どういった事項が報告、決議されているのかを見に行きました。
私は幸いにして、退職後すぐに試験に合格できました。合格してすいぶんたちますが、公認会計士になって仕事の幅が広がったと感じます。
会計は全ての会社や組織に必要な知識なので、汎用性が高いと思います。この連載の執筆や出版、講演など、前職時代より仕事の幅も広がりました。いろいろやっている分、前より忙しくもなりましたが。
エンジニアだった私が公認会計士になるまで、いかがでしたでしょうか。会計士という職業に少しでも興味を持ってもらえれば幸いです。妻が公認会計士になるまでは、ミニ絵本でご覧ください。それではまた。
編集部より:筆者は簡単に試験に合格したかのように書いていますが、公認会計士試験は実際はかなりの難関です。金融庁のWebサイトに掲載されている資料によれば、平成26年度の合格率は「10.1%」でした(出典:平成26年公認会計士試験(論文式試験)の合格点及び合格率等について/公認会計士・監査審査会)。イラストのAyumiさんは、三度目のチャレンジでやっと合格できたそうです。Ayumiさんから見た公認会計士の試験と受験勉強については、連載100回記念のミニ絵本でご覧ください。下記のイラストをクリックするとミニ絵本をご覧いただけます。無料、一切の登録不要です。
「お茶会計」LINEスタンプ
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「お茶会計」筆者 吉田さん執筆書籍
吉田延史著
イラストAyumi
すばる舎
2014/11/20
1620円(税込)
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