拡張現実対応アプリをWeb標準技術で開発、グレープシティがツールを発売:ARアプリ制作が簡単に
Web標準技術だけで、AR技術を使ったアプリを簡単に作成できるツールが登場。大規模開発向けの環境も。
グレープシティは2015年10月20日、AR(Augmented Reality:拡張現実)に対応したアプリ開発ツール「Wikitudeシリーズ」を発売した。Wikitudeシリーズは、Web標準技術を利用して「iOS」や「Android」などに対応したARアプリを開発するツール。専門知識や特殊な環境を必要とせずに、ARアプリを作成できる。開発ツール「Wikitude SDK」の他、Webブラウザー上でARコンテンツを作成できるクラウドサービス「Wikitude Studio」や、大規模ARシステム開発用のソリューション「Wikitude Cloud Recognition」と「Wikitude Targets API」も提供する。
ARは、スマートフォンやスマートグラスのカメラを通して見る現実世界の風景に、動画や画像、3Dモデル、文字情報といったデジタル・コンテンツを重ね合わせる技術。例えば、製品カタログなどの印刷物にスマートフォンをかざすと、ショッピングカートを表示してそのまま商品を購入したり、地下に埋設する配管設備の見取り図を実際の作業現場でスマートグラス越しに確認したりする仕組みを提供できる。
こうしたARアプリの開発には、これまで専門知識と特殊な環境を必要としたが、WikitudeではHTML/JavaScript/CSSといったWeb標準技術で作成できる。Wikitude SDKでは、場所を認識してARコンテンツを重ねる「ロケーションベース型」と、任意の画像を認識してARコンテンツを重ねる「画像認識型」の両方のタイプのARアプリを、iOSやAndroidおよびスマートグラスに向けたネイティブアプリとして開発できる。また、「Xamarin」や「Cordova」「Titanium」「Unity」といった主要な開発環境のプラグインも無償で提供する。
3Dモデルに設定したアニメーションをARアプリで再生できるように最適化する「3D Encoder」が付属する。アニメーションが複数ある場合も、それぞれを認識して個別のIDで管理するので、任意のアニメーションを任意のタイミングで再生可能だ。
Wikitudeの「ロケーション認識」機能は、アプリがインストールされたデバイスの位置とターゲット画像の位置を「緯度」「経度」「高度」の3次元で認識する。「レーダー」機能を使うと、デバイスとターゲット画像の位置をレーダーチャート上にリアルタイムでプロットし、アプリ上に表示できる。Wikitudeの「コンピュータビジョンエンジン」(ARエンジン)は、デバイスのカメラの視野に入る風景を立体的に管理してトラッキングする。ターゲット画像の周囲にある物体の形や大きさ、距離、方向を記憶するので、ターゲット画像がカメラの視野から外れてもトラッキングを継続し、ARコンテンツが消失することはないという。
大規模ARアプリの開発にも対応
一つのアプリケーションで1000枚を超えるような大量のターゲット画像を使用する場合は、「Cloud Recognition」を利用して、クラウド上でターゲット画像の認識を実行できる。通常、ターゲット画像はアプリケーションに含まれデバイス上で認識処理を実行するが、ターゲット画像が大量にあるとデバイスのストレージ容量と認識処理性能に影響を及ぼす。Cloud Recognitionを使うと、デバイスのカメラが捕らえた映像をRESTful Web APIを利用して「Cloud Recognitionサーバー」に送信し、アップロードされたターゲット画像のトラッキングをサーバーで処理する。処理性能の高いサーバーに認識処理を委ねることで大量のターゲット画像が存在しても、高い認識率と迅速な応答を確保できるという。具体的には、Cloud Recognitionサービスでは、最大10万のターゲット画像を管理できる。
もう一つの大規模ARシステム開発用ソリューションであるWikitude Targets APIは、Webサイトの制作や管理を行うシステム(Contents Management System:CMS)に保管されている画像を使って、ARアプリを開発したい企業向けに開発されたWeb APIサービスである。CMSにある大量の画像をWikitude SDKが認識できるターゲット画像に変換する処理を自動化する。
Wikitude SDKのライセンス価格は、iOSまたはAndroidで1アプリを開発/配布できる「SDK Lite」が12万960円(税込み)。「Wikitude Cloud Recognition」のライセンス価格は、ターゲットが1000の月間サブスクリプションで3万9960円(同)。その他、開発できるアプリケーションの数やデバイスの種類などによって、複数のライセンス体系を用意する。
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