流通の課題を解決するためにITで新たなビジネスを創出するオイシックスがSIパートナーに求めるものとは:特集:Biz.REVO〜開発現場よ、ビジネス視点を取り戻せ〜(6)(2/2 ページ)
ITでビジネスを拡大した先駆者といえるオイシックスのシステム本部 本部長にシステムを拡大する際の体制面の課題やパートナーとなるSIerを選定するポイント、協業する際に重視する点などについて聞いた。
ビジネスの要件に即した開発リソースやスキルを迅速に調達
オープンストリームが主要な役割を担ったプロジェクトの一つに、三越伊勢丹ホールディングスとオイシックスの業務提携に伴うWebシステム開発プロジェクトがあった。オイシックスは2012年度に物流センターをリニューアルしたが、その際デジタルピッキングの仕組みを新たに取り入れ、他社の物流業務の受託ビジネスも新たに手掛けるようになった。その一環として三越伊勢丹ホールディングスと提携し、同社の物流業務を受託することになったが、同時に三越伊勢丹のWebシステムの開発も手掛けることになった。
このWebシステムの開発プロジェクトは、総工数50人月、期間にして約6カ月。そのうちの約30人月をオープンストリームが担当した。携わったエンジニアの数はのべ9人ほどだったが、うち6人をオープンストリームの要員が占めた。開発は順調に進み、期間、コスト共に当初見積もりをオーバーすることなく、予定通りにシステムのカットオーバーを迎えることができたという。
「急に決まった案件だったので、人員を急増させる必要があったが、オープンストリームさんは一気に人員を倍増させてくれた。リソースの制約が原因でシステム開発が滞ると、その分ビジネスの足を引っ張ることになるため、必要なスキルやリソースをビジネスのニーズに応じてすぐ調達できることは、とても重要だと感じている」
同時に、「今あるスキルだけではなく、今後のビジネス展開を見越した上で、将来必要になるであろうスキルを先行して育成しておくことも重要だ」と山下氏は指摘する。そうした取り組みの一環として、同社はオープンストリームと物流システムの開発にも取り組んでいる。前述のように、オープンストリームはWebシステムの開発に多くの実績を持ち、オイシックスでも主にECシステムのフロント系のWebサイトや、バックエンドの販売管理機能の設計・開発を担ってきた。
しかし、オイシックスが2015年度に製造拠点と物流センターを新設するのに伴い(参考PDF)、物流システムを新たに開発する案件が持ち上がった際、山下氏らはその開発パートナーとしてそれまで同社の物流システムの開発経験のないオープンストリームをあえて選んだ。その理由について、同氏は次のように説明する。
「それまで弊社の物流システムを手掛けたことがない点は確かにリスクだったが、物流周りは弊社のビジネスの強みが最も発揮される部分であり、今後さらに力を入れていく領域でもあるので、将来を見据えてオープンストリームさんにはこの領域のノウハウを得てほしかった」
このプロジェクトは、物流システム全体の中の「ピックアップと仕分け」という一部機能のみを扱うものだったが、今後はさらに広いソリューション領域をオープンストリームに担ってもらうことを期待しているという。
開発パートナー企業からビジネス側への積極的な提案にも期待
このようにオイシックスでは、開発パートナーも含めたITエンジニアが常にビジネスと密接に連動しながら、ビジネスの変化に即応したシステム開発を日々行っている。オープンストリームをはじめとする開発パートナー企業の常駐エンジニアも、常にオイシックスのビジネス現場のそばにいることで、ビジネスの変化やニーズをいち早く嗅ぎ取り、オイシックス側にIT活用の提案を行うこともあるという。
山下氏も、「開発パートナーからビジネス側に対する積極的な提案に、今後もぜひ期待したい」と述べる。ただし、「ビジネスに提案できるIT」「経営に資するIT」という掛け声だけでは、なかなか具体的なアクションにつながらないのも事実だ。この点に関して山下氏は、「開発者がビジネスにコミットするための取り組みには、何段階かのステップがあるのではないか」と述べる。
「単に『言われた通りに作っておしまい』という開発と、『ビジネスに積極的に提案できる開発』との間には、いくつかの段階があると思う。まずは『単に動けばいい』という開発から、後々の保守性や拡張性まで考慮した開発にステップアップするのが第一段階になるのでは。これだって立派な、『ビジネスに寄与するIT』の1つの形だと思う」
そして次の段階として同氏は、「ユーザー要件とシステム要件の橋渡し」を挙げる。
「ビジネス部門から情報システム部門に寄せられる依頼は、往々にしてそのままの形ではシステム要件まで落とし込めないことが多い。しかしその際、単に『それはできない!』と突っぱねるのではなく、ビジネス部門に対して『そういうことがやりたいなら、こんな方法で実現できるがどうか?』『こんな技術を使えば、こういうふうに実現できるが、これで要望は満たせそうか?』と逆に提案することはできる。
これはゼロからの提案ではなく、ビジネスからの要望に反応する形になるが、それでもビジネスに寄与する提案は十分に可能だと思う。今後はオープンストリームさんをはじめとする開発パートナー企業さん、SI企業さんにも、こうした提案をもっとしていただけると私たちとしても大変ありがたい」
関連特集:Biz.REVO−Business Revolution〜開発現場よ、ビジネス視点を取り戻せ〜
市場環境変化が速い近年、ニーズの変化に迅速・柔軟に応えることが求められている。特に、ほとんどのビジネスをITが支えている今、変化に応じていかに早くシステムを業務に最適化させるかが、大きな鍵を握っている。では自社の業務プロセスに最適なシステムを迅速に作るためにはどうすれば良いのか?――ユーザー企業やSIerの肉声から、変化に応じて「ITをサービスとして提供できる」「経営に寄与する」開発スタイルを探る。
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