「災害対策システム」で、DRBDを活用する方法:DRBDの仕組みを学ぶ(3)(1/3 ページ)
障害監視ツールなどと一緒に使うことで、サービスの継続提供を助けるDRBD。前回の高可用性システムに続き、今回は「災害対策システム」でどう使うか、実践的な運用方法を解説します。
前回は実践的な「DRBD(Distributed Replicated Block Device)」の活用シーンとして、高可用性システムでの構成例を解説しました。
今回はこの他に需要が多い、「災害対策システムとしての活用例」を説明します。
その前に「DRBDとは何か」から学びたい方は、連載「DRBDの仕組みを学ぶ」バックナンバーもぜひご覧下さい。
災害対策システムにおけるDRBDの活用例
「災害対策システム」とは、地震や火災、津波などの大きな災害が発生しても、サービスを継続できるシステムのことを指します。「DR(Disaster Recovery)システム」などとも呼ばれます。
前回は物理的な障害発生時における高可用性の(サービスのダウンタイムが少ない)システムでの構成例を解説しました。しかし、広域に渡る災害によって、多重化したサーバーが全て被災してしまう可能性もあり得ます。
そのような事態に備えたシステムをどう考えればよいでしょう。今回は、DRBDと「DRBD Proxy」(提供元:サードウェア)というソフトウエアを組み合わせてデータを複製(レプリケート)し、重要なデータを遠隔地で保護するための災害対策システムの構築例を紹介します。DRBD Proxyは、DRBDのデータレプリケーション機能をWAN上で効率的に行えるよう拡張する有償ソフトウエアです。ソフトウエアの詳細は後述します。
基本的な構成はプライマリ機、セカンダリ機の2台構成で、以下の図1のようになります。
図1では例として、プライマリ機を東京に、セカンダリ機を大阪に置きました。データはインターネット回線(WAN)越え、もしくはVPN(Virtual Private Network)回線を用い、DRBDとDRBD Proxyによって同期します。このようにシステムを構築することで、プライマリ機に取ったバックアップデータを遠隔地にもバックアップできます。仮に東京のプライマリ機が被災しても、大阪のセカンダリ機でサービスを継続することができます。
災害対策システムのためのソフトウエア「DRBD Proxy」について
続いて災害対策システムを構築するためにDRBDと組み合わせて使用するソフトウエア「DRBD Proxy」を説明します。
DRBD Proxyは、DRBDのデータレプリケーション機能をWAN上で効率的に行えるよう拡張する有償ソフトウエアで、遠隔地のサーバーへのバックアップに幅広く使われています。価格はオープン価格で、導入環境やライセンス体系によりますが、参考価格は1ノード当たり数万円〜数十万円です。30日試用できる評価用ライセンスも用意されています。DRBDプロトコルに特化したパケット圧縮とメモリバッファーによる転送アクセラレーションを行うことで、効率よく同期できることが特徴です。
参考までに、DRBD Proxyと同等の機能を持つソフトウエアには、遠隔クラスターに対応する「CLUSTERPRO」、クラウド環境にも対応する「LifeKeeper」などもあります。これらも共に有償です。
なお、DRBD Proxyを使わずにDRBDのみで遠隔地レプリケーションすることも可能ですが、ディスク書き込みが多い場合や拠点間の距離が長い場合には、回線速度の観点からDRBD Proxyの採用をお勧めします。
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