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IoTの循環プロセスを形成する4つのステップとは特集:IoT時代のビジネス&IT戦略(2)(1/2 ページ)

世の中全体に大きなインパクトをもたらすとして、社会一般から大きな注目を集めているIoT(Internet of Things)。だが、その具体像はまだ浸透しているとはいえない。そこで本特集ではIoTがもたらすインパクトから、実践に必要なインフラ、ノウハウまで、順を追って掘り下げていく。今回は、IoTの研究開発に余念がない現場の技術者に4ステップに分かれるIoTのプロセスと、各ステップに必要な技術要素や課題などについて聞いた。

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あらためて「IoTとは一体何か?」を定義する

 「クラウド」や「ビッグデータ」の次に来るバズワードとしてIT業界のみならず、一般のビジネスシーンでも耳にする機会が増えてきた「IoT(Internet of Things)」。そのコンセプトや目的、大まかな姿については、先進事例などを通じて認知度が上がってきたものの、その具体的な中身となると現時点で入手できる情報はまだまだ限られている。IoTを実現するための技術やアーキテクチャ、標準仕様なども発展途上の段階だ。

 しかしそんな中でも、将来IoTの主要な構成要素となるであろう技術が、徐々に出そろいつつある。TIS 戦略技術センター エキスパート 松井暢之氏は、こうしたIoTの先端技術の研究や評価に日々携わる技術者の一人だ。その成果の一つが、日本IBMが主催したアプリケーション開発コンテスト「IBM Bluemix Challenge 2015」に同氏が応募したアプリケーション「Wasted energy of TV」だ。審査員から高い評価を受けた結果、見事「IoT賞」を受賞している。また同氏が所属するTISも、関連会社のクオリカと共同で工場の生産設備の稼働状況をセンサーから集めて生産最適化を図るソリューションを展開するなど、IoTの研究開発に余念がない。

 そんな松井氏が描く「IoT像」とは、一体どのようなものなのだろうか?

 「現在IoTの領域にはハードウエアベンダーやネットワーク機器ベンダー、クラウドベンダー、さらにはGE(ゼネラル・エレクトリック)に代表されるユーザー企業まで、さまざまなプレーヤーがひしめいており、それぞれに異なるIoTの定義を提唱している。そのため、一概に『これがIoTだ』という定義がないのが現状だが、大まかには『さまざまなモノや人からデータを収集・処理し、その結果を現実へフィードバックする一連のプロセスによって、ビジネスや社会に価値をもたらすものである』と定義できるのでは、と考えます」


4ステップに分かれるIoTのプロセス(松井氏のブログ記事より引用)

 同氏は、この一連のプロセスを4ステップに分けて説明する。1ステップ目が、人やモノが相互連携して営まれる「現実世界の活動」だ。そして、この活動を何らかの形で計測し、データ化してコンピューターの世界に映し出すのが2ステップ目。そうして集めたさまざまな種類のデータを組み合わせて分析・学習するのが3ステップ目で、その結果得られた知見を現実世界へフィードバックするのが4ステップ目になる。

 こうした一連のプロセスによって、現実世界の活動へ新たな価値を提供するための営み全体のことを、同氏はIoTと定義する。

デバイス側とクラウド側のゾーニングがIoTアーキテクチャ設計の肝

 ちなみに、松井氏がIBM Bluemix Challenge 2015に応募したアプリケーション「Wasted energy of TV」は、各種ハードウエアデバイス類と、IBMが提供するPaaS基盤「IBM Bluemix」とを組み合わせることで、日常生活において「TVのスイッチはONになっているけど、誰も見ていない状態」を計測して可視化するというもの。具体的には、小型マイコンデバイス「Intel Edison」「Raspberry Pi」にUSBカメラを組み合わせてTV周辺の状況を監視・計測し、その結果を適宜IBM Bluemixのサービスに送信する。そしてIBM Bluemix側では、デバイスから送られてきたデータを蓄積・分析することで「TVがONかOFFか?」「ユーザーはTVを見ているか否か?」を判断する。


「Wasted energy of TV」の構成図(松井氏のブログ記事より引用)

 松井氏がこのアプリケーションの開発を思い立った理由の一つが、IoTにおける「デバイス側とクラウド側の役割分担」に興味があったからだという。

 「IoTというと、『あらゆるデバイスがインターネットに接続される』というイメージを持つ方が多いが、実際には性能やセキュリティの制限があり、各デバイスを個別にインターネットに直結する実装は非現実的だ。そうではなく、デバイスをグループ化し、インターネットとの間にセキュリティ境界を設けるとともに、ある程度の処理をデバイス側で受け持つことで性能の課題にも対処できるようなアーキテクチャが現実的なのではないか。これを一度自分の手で実装してみたいと考えた」

 先ほど挙げた「4ステップに分かれるIoTのプロセス」に照らし合わせるなら、1ステップ目から2ステップ目、つまり現実活動をデータ化して、どこか遠いところにあるコンピューターに向けて送出するのが、現実世界の各所に置かれたデバイスの役目だ。これらは工場の生産設備や店舗、製品そのもの、あるいは道端と、現実世界のありとあらゆる場所に設置される。そのため、なるべく少ない消費電力で稼働し続け、かつデータをセキュアに送り出せることが求められる。

 「そのためには、デバイスがより少ない消費電力とセキュアな環境で稼働できる専用の“ゾーン”を設定して、その中にデバイスを設置した方が合理的だ。このゾーンの中である程度デバイスの処理を取りまとめ、データを集約・加工した上でインターネットに送出した方が、データ送信処理を効率化できる他、セキュリティ対策も実装しやすい」(松井氏)

 ちなみに、こうしたデバイス通信をより効率的に、かつセキュアに行うのに有効なプロトコルの一つとして「MQTT」がある。すでにさまざまなデバイスやサービスで実装が始まっている。HTTPに比べはるかにオーバーヘッドが少なく、またメッセージキューを介した非同期メッセージングが可能であるため、メモリやネットワークといったリソースが限られていることが多いIoTデバイスの通信に極めて適しているという。

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