オラクルが表明した「クラウド」のデザインゴールとハードウエアの関係:Oracle OpenWorld 2015(4/4 ページ)
「Oracle OpenWorld 2015」は「クラウド」を軸に、そこで必要になるインフラをオラクルがどう提供していくのかが明確に見えたイベントでした。詳細をリポートします。
あらゆるレイヤーをインテリジェントに統合するエンジニアドシステムズ
ここまでは、オラクルのSPARC M7サーバーと中心に見てきましたが、オラクルのハードウエアはこれだけではありません。アーカイブデータを保管しておくテープ装置、速度や容量など重視するポイントに合わせて選べるストレージ。x86プロセッサー搭載サーバーやネットワーク機器など、幅広いラインアップを取りそろえています。しかも、それらにソフトウエアを組み込むことでインテリジェント化した上で、各スタックを統合したインフラとして出荷しています。
これが、「Oracle Exadata」に代表されるエンジニアドシステムズ(Engineered Systems)です。そこに組み込まれた「インテリジェントなハードウエア」の代表格がストレージでしょう。一般的なストレージと違い、ストレージ側でデータを処理した上でサーバーに渡す仕組みを持つため、サーバーとの通信やサーバーそのものへの負担を小さくします。それに加えてストレージとサーバーの接続、あるいはサーバー同士の接続には、一般に実装が難しいとされるInfiniBandを採用。これらの実装により、大容量のデータを扱え、かつ大量の同時アクセスに耐え得る統合インフラとなっているのです。
今回のOOWでは、SPARC M7を搭載した「Oracle SuperCluster M7」がエンジニアドシステムズの一つとして発表されました。
Oracle Cloudのデザインゴール
オラクルでは、本稿で紹介した自社のエンジニアドシステムズをクラウドサービスのインフラとしても利用しています。そうすることで、オンプレミスあるいはプライベートクラウドと全く同じ環境をパブリッククラウドでも利用できるようになるからです。
OOWのキーノートで、ラリー・エリソンが表明したOracle Cloudのデザインゴールは「Cost、Reliability、Performance、Standards、Compatibility、Security」。「コストに優れ、信頼でき、性能が高く、業界標準と互換性を保ちながら、安全性の高い環境」――日本語でなら、こう表現するところでしょうか。
これら六つ要素の中でも特に「互換性」は、セキュリティと並んでクラウド時代に考慮すべき点といえるでしょう。ここでいう互換性とは、クラウド、オンプレミスとの連携の自由度、と言い換えることができるでしょう。本稿冒頭で言及した「クラウド時代に考慮すべきこと」の一つです。
過去、コンピューターシステムは汎用機の時代から抜け出し、オープンシステムと呼ばれる、自由に製品を組み合わせて使える環境を手に入れてきたといいます。オープンシステムが主流になることで、特定のベンダーに縛られることなく、そのときに一番優れたものを自由に選択できるようになったことを、私たちの先輩は知っています。
では、クラウドの互換性はどうでしょうか? いつでも他の環境へ引っ越せるでしょうか。自社の管理するデータセンター、つまりオンプレミスとの行き来や、他のクラウド環境との連携は容易にできるでしょうか。恐らく現段階で明確に「イエス」と答えられる人は少ないでしょう。
パブリッククラウドは柔軟性が高く、コストパフォーマンスに優れた便利な存在ですが、エンタープライズシステムに求められる要件や制約を考えると、残念ながら全てをパブリッククラウドで運用できる状況にはまだありません。だからこそ、アプリケーションやデータベースを、オンプレミスとパブリッククラウドの間で自由に行ったり来たりさせられれば、クラウドはもっと便利になります。
OOWではラリー・エリソン自らが、管理ツールの簡単な操作で環境を移行する様子をデモで披露していましたが、オラクルはシームレスな運用を実現するという意味で、「本当のハイブリッドクラウド」を実現できるのです。
2025年にはクラウドが主流になる!?
米オラクルのCEOであるマーク・ハードは、OOWのキーノートで、やはりクラウドをテーマに取り上げました。中でも面白かったのは「VISION 2025」と題して紹介した、10年後のクラウドの姿に関する五つの予想です。
- 新規アプリの80%はクラウドで作られる
- SaaS市場の80%を2社が占めることになる(うち1社はもちろんオラクル)
- 開発/テスト環境は、100%クラウド上で運用される
- エンタープライズデータは全てクラウド上に保存される
- クラウドは、もっとも安全なIT環境になる(オラクルは既にセキュアなクラウドを提供)
自分の好きなように管理ができて(突然画面が変わったり、勝手にパッチがあたったりしないで)、ネットワークも含めて快適な性能を担保できて、バックアップやハードウエア故障への対応など面倒なところは人に任せられて、いつでも柔軟に構成変更もできて、それに応じてリーズナブルな課金がされて、いざとなったらオンプレミスや他のクラウドプロバイダーに引っ越しができる。もちろん、安全面も十分考えられていて、安心してアプリやデータを預けておける――それならば、クラウドを選ばない理由の方が見当たりません。
気が早いもので、オラクルのWebページは、早くも次回のOracle OpenWorld開催がアナウンスされています。次回は2016年9月18〜22日。今度は何が出てくるのか、それまでに世界がどう変わっているのか、楽しみにしておきたいと思います。
取材を終えて
「Oracle OpenWorld 2015」は、オラクルが考えるクラウドの在り方がよく分かるイベントでした。このリポートで紹介し切れなかったものの中には、業務アプリケーションのサービス提供なども含まれます。実は、こうしたサービス提供の裏側を支えているのが、オラクルのハードウエア――エンジニアドシステムズなんです。
日本オラクルは、今年(2015年)で創立されてから30年を迎えます。その間、オラクルの製品は、日本でもしっかり根を張り続けてきました。その筆頭がデータベース製品「Oracle Database」であることは間違いないでしょう。しかし、いまやオラクルにはデータベースを支えるハードウエアや、ビジネスアプリケーションなども製品ポートフォリオに加えています。そして、これらの製品をドライブする一つのカギが「クラウド」だといえそうですね。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年12月12日