日産はコネクテッドカーのクラウドインフラにAzureを採用:クラウド&モバイルファーストをAzureで「やっちゃえ」
日産と米マイクロソフトは、日産の電気自動車などに搭載しているコネクトテレマティクスシステムに、「Microsoft Azure」を採用すると発表した。Azureを活用することで、ユーザーとクルマが相互にいつでもつながることができるさまざまな方法を提供するという。
日産自動車(日産)と米マイクロソフトは2016年1月5日、米ラスベガスで開幕したCES 2016で、日産の電気自動車(EV)「リーフ」の全グレードとインフィニティの欧州モデルに搭載しているコネクトテレマティクスシステム(Connect Telematics Systems:CTS)に、「Microsoft Azure(Azure)」を採用すると発表した。2010年の発売以来、リーフは全世界での販売台数が、EVでは最多の20万台を数えるとしている。同社は、Azureを活用することで、ユーザーとクルマが相互にいつでもつながることができるさまざまな方法を提供するという。
日産がAzureを選択した決め手になったのは、「非常に高い安全性と規格適合性」だという。Azureはクラウドのプライバシー保護に関する世界基準であるISO 27018の認証を受けている。ISO 27018認証は、Google CloudやAmazon Web Servicesも取得しているが、Azureは2015年2月と比較的早い段階で取得していた。マイクロソフトでは今回の日産との提携によって、「自動車メーカーがマイクロソフトのインテリジェントクラウドプラットフォームを活用することで、どんなことを実現可能にするか」を示したとしている。
自動車がクラウド経由でスマホ操作できると、どうなるのか
日産によると、EVの所有者とその周辺環境とのコネクティビティにより、EVの利便性と魅力が向上するという。例えば、地図や航続距離予測、充電ステーションの位置、充電状況の他、ユーザーが乗車中に期待する全てのサービスは、このコネクティビティに左右される。日産は、Azureのグローバルクラウドプラットフォームを利用することで、幅広い顧客層に対してグローバルでのサービス提供が可能になるとしている。
Azureを利用することで日産のテレマティクスシステムは、車両にリモート接続可能になる。ドライバーは、クルマに乗らなくても、一連の機能を使用できる。例えば、携帯電話やスマートフォンを使って、インターネット経由でクルマのエアコンを入れたり、充電を自動的に開始するタイマーを遠隔操作で設定したりできる。
リーフに搭載された、日産のコネクトプラットフォームと連動したモバイル向けアプリの一部であるハンズフリー機能「Hands-Free Text Messaging Assistant」を使うと、ドライバーは音声制御によって受信メールを確認できる。ステアリングから手を離したり、道路から目を逸らしたりする必要がない。メールの受信をドライバーに知らせるだけでなく、メールの読み上げも可能だ。
音声でのメール返信の他に、「運転中につき、返信できません」「今向かっています」「遅刻しそうです」「了解」など、事前に設定した返答文をステアリングのボタン操作で送信することもできる。これらは、Azureと連携することで可能になった機能だとしている。
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ハンズフリー機能についてのみを見ると、他にアップルが2014年に発表したスマートフォンと自動車アクセサリー機器をBluetoothで接続する「Apple Car Play」に「Siri Eyes Free」がある。既にフォード、シボレー、ホンダなどが採用しているが、スマートフォン経由でアクセサリー機器を遠隔から操作するには、Azureのようなクラウド環境との接続が必要だ。こうしたこともあり、トヨタ自動車では、2016年1月4日に、コネクテッドカー向けに自社データセンターを構築することを発表している(関連記事:車両情報の本格活用に向け「トヨタ・ビッグデータ・センター」を構築、ソフトウェアプラットフォーム開発にも意欲)。
日産はまた、車両から取得する「point of interest(POI)」の更新信号を利用した情報提供サービスの品質向上も進めるとしている。POIとはここでは主にカーナビゲーションシステムなどで用いられるGPS情報を指している。
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