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夢があるが2025年に「実現しない」4つの技術トレンド――では、いつ実現する? ABI Researchが発表「AI-RAN」の広範な展開、ヒューマノイドの席巻など

ABI Researchは、期待が高いものの、2025年には実現しないと予想される技術トレンドを4つ取り上げて解説した。「AI-RAN」の広範な展開、消費者向けスマートグラスの大規模な普及、ヒューマノイドの席巻、半導体生産のオンショアリングだ。

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 市場調査会社のABI Researchは2024年12月12日(米国時間)、期待が高いものの、2025年には実現しないと予想される技術トレンドを4つ取り上げて解説した。

 その内訳は、「AI-RAN」の広範な展開、消費者向けスマートグラスの大規模な普及、ヒューマノイド(ヒト型ロボット)の席巻、半導体生産のオンショアリング(国内回帰)だ。

 ABI Researchは、同日公開した新しいホワイトペーパー「101 Tech Trends That Will -- And Won't -- Shape 2025」の中で、2025年に実現する53の技術トレンドと、実現しない48のトレンドを特定している。上に挙げた4つのトレンドは、後者の48のトレンドの中から取り上げられた。

 ABI Researchが2025年に実現しないと予想する4つの技術トレンドは、以下の通り。

2025年の普及は難しそう、でも夢がある「実現しない」4つの技術トレンド

AI-RANの広範な展開

 RAN(Radio Access Network:無線アクセスネットワーク)は、モバイル通信における基地局とそのサービス範囲(セル)などから構成される。AI-RANは、AIアプリケーションとRANを同一のコンピュータ基盤上に統合するアーキテクチャを指す。

 AI-RANは急速に進歩しているが、まだ初期開発段階にあり、商用展開は2026年以降になる見通しだ。ソフトバンクが技術開発や試験運用を先行して進めており、2026年以降に自社の商用通信網や国内外の通信事業者への展開を目指すとしている。AI-RAN技術は、2025年は試験運用やパイロットプロジェクトによってより進化するものの、大規模展開の実現には、さらに時間がかかるだろうと、ABI Researchはみている。

消費者向けスマートグラスの大規模な普及

 スマートグラスは、引き続き主にアーリーアダプター(早期導入者)に受け入れられる製品にとどまりそうだ。消費者による採用という点では、仮想現実(VR)がゲーム、スポーツ、フィットネス分野に築いた最も強固な足場を維持すると予想される。これらの分野では、没入型体験が既にその価値を証明しており、消費者需要も続いている。

 新製品の「Spectacles」をリリースしたSnapchatのように、一部の企業は初期製品や開発者向けソリューションを市場に投入するだろうが、2025年もスマートグラスにとって過渡期の年となり、消費者への普及や大規模展開よりも、ニッチな用途での利用が大半を占めるだろうと、ABI Researchは述べている。

ヒューマノイドの席巻

 ヒューマノイド開発への資金提供は継続されそうだ。この技術は社会課題を解決するとの期待からだ。また2025年は、中国がヒューマノイドの世界的なリーダーとなることを目指している年でもある。

 だが、ヒューマノイドは、広く普及する準備はまだ整っていない。ハードウェアは大幅に進歩しており、Boston Dynamicsの「Atlas」に匹敵する高度なヒューマノイドが十数種類存在する。遠隔操作でも目覚ましい性能が実証されている。

 それでも、AIが飛躍的に進化しなければ、ヒューマノイドは現段階からなかなか成長しないだろうと、ABI Researchは予想する。ただし、こうした技術的な不足点はあるものの、自動車メーカーは引き続きヒューマノイドへの取り組みを進め、2025年もこれに追随するメーカーが出てくる見通しだ。

半導体生産のオンショアリング(国内回帰)

 2025年は、米国と欧州における半導体生産のオンショアリング(国内回帰)の取り組みの実態が問われる年となりそうだ。実施上の課題により、大幅な遅延を余儀なくされるからだ。総額1000億ドルの野心的な投資計画を打ち出したIntelは、米国CHIPS法に基づいて78.6億ドルの助成金を獲得している。だが、同社の米国アリゾナ州およびオハイオ州の工場、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)のアリゾナ州の工場、ドイツのマクデブルクにおけるIntelの工場といった主要プロジェクトは、EUV(Extreme Ultraviolet)露光装置の不足、労働力の逼迫(ひっぱく)、業務の複雑さにより、後退を余儀なくされている。

 これらの工場が2027年より前にフル稼働に入る可能性は低く、欧州連合(EU)が掲げる「2030年までに世界の半導体生産の20%を占める」という目標の達成が危ぶまれる。ABI Researchは、こうした状況から、2025年には戦略の見直しが迫られ、完全な自国回帰から、生産地域の現実的な多様化と、信頼できるパートナーシップによる調達確保へと焦点が移行するだろうとみている。また、半導体の冷戦は、最先端のチップに依存するAIなどの先進技術のイノベーションも遅らせる可能性があるという。

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