IBMとイリノイ大学、コグニティブコンピューティングの研究で協力体制:「OpenPOWER」技術を研究のベースに
米IBM Researchとイリノイ大学がコグニティブコンピューティングに関する新たな研究センターを開設。機械学習/ヘテロジニアスコンピューティングに関する研究を推進する。
米IBM Researchは2016年4月15日(米国時間)、イリノイ大学アーバナシャンペーン校と共同で「Center for Cognitive Computing Systems Research(C3SR)」を開設すると発表。IBMが推進するコグニティブコンピューティング分野の研究促進を目指し、イリノイ大学と長期にわたって協力していく。
C3SRはイリノイ大学アーバナキャンパスに置かれ、新しいコグニティブコンピューティングのワークロードに最適化された機械学習やヘテロジニアス(異機種が混在した)コンピューティングシステムの先進的な研究を統合し、発展させることを目的にする。2016年夏の開設を目指す。
C3SRは、IBMのコグニティブ技術「Watson(ワトソン)」をモデルにした最先端のコグニティブコンピューティングシステムなど統合型システムの構築と最適化を行う。Watsonは、マルチメディアやマルチモーダル教育コンテンツから学習することで対象領域をマスターできるとうたう。こうしたシステムは、動画、講義ノート、宿題、教科書などの膨大なデータを効率的に取り込み、それらの知識から効果的な推論を行い、いずれは学部レベルの試験に合格できるほどまで成長するポテンシャルを持つという。C3SRで開発されるコンピューティングシステムは、コグニティブアプリケーションを動かす現在のシステムよりも格段に優れた性能を発揮する見込みとされている。
IBM Researchのシニアバイスプレジデント兼ディレクターを務めるアービンド・クリシュナ氏は、IBMとイリノイ大学が協力する意義と、新センターへの期待を次のように述べている。「IBMとイリノイ大学の協力は、われわれの研究者がコグニティブコンピューティングとWatsonの限界をさらに広げるために役立つ。コグニティブコンピューティング時代には、世界の極めて困難な課題の解決に向けて、あらゆる研究分野が連携し、また並行して進化する。イリノイ大学におけるヘテロジニアスシステムおよび機械学習の研究や、素晴らしい人材、IBMとの長期的な関係から、新しい研究センターは、こうした取り組みを進めるのに最適な場所になる」
コグニティブコンピューティングにおける計算要求の増大に伴い、IBMとイリノイ大学の研究者は、「Power System」のコグニティブワークロードへの最適化を進める。研究者は、POWERアーキテクチャを推進する業界団体であるOpenPOWER Foundationのシステム技術に加え、IBM Systems Groupの技術開発およびサポートも利用できる。新しいハードウェア設計とコグニティブアルゴリズムは、オープンソースコミュニティーとOpenPOWER Foundationに公開される予定だ。
C3SRは、ウェンメイ・フー教授が指揮を執ることになっている。イリノイ大学の研究者はIBMの研究者からガイダンスと技術ノウハウの提供を受ける。C3SRの研究は全てIBMのOpenPOWER技術を使って行われる。
IBMはWatsonの初期開発で世界の主要大学8校と協力し、現在、世界250以上の大学でさまざまなコグニティブコンピューティング分野の教育コースを支援している。
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