米IBMがビッグデータ分析基盤サービスを拡充、コグニティブコンピューティングの研究成果も搭載:「ワトソン」の知性を実務アプリケーションへ
米IBMは、センサ情報などの大量データを基に人間のように意思決定するコグニティブコンピューティングの研究成果を、実製品やサービスに取り込んでいくと発表した。SoftLayer環境も想定する。
米IBMは2013年11月4日(現地時間)、ラスベガスで開催中の「Information on Demand Forum」で、同社が持つコグニティブコンピューティング(Cognitive Computing)などの技術を活用したクラウドやビッグデータ分析の新製品とサービスを発表した。コグニティブコンピューティングは、おおまかには人間の認知に関わる情報処理の技術を指す。
米IBM内のコグニティブコンピューティングチームは、「さまざまなセンサーや情報源からの情報を統合し、曖昧さに対処しながら、状況に応じた方法で反応することができ、また独自の学習機能・パターン認識機能を持ち、複雑な現実世界の環境に対応する知覚、行動、認知機能によって、困難な課題を解決することのできる、新しいインテリジェンスを持った、コンピューターを遍在的に展開すること」を目的とした研究・開発活動を行っている。この研究成果の一端には、人工知能プログラム「ワトソン」がある。
IBMでは今後、この研究で培った、情報のリアルタイム処理および判定の技術を、意思決定関わる製品に取り込んでいくという。
イベントで発表になった新製品のうち「IBM SmartCloud Analytics - Predictive Insights」は、IT運営業務に関するテラバイト級のデータをリアルタイムで分析できるSaaSだ。
コグニティブコンピューティング技術を使ってその組織のITシステムの状態を認識し、ITネットワークのパフォーマンスにとって重要なトレンドのみを見つけ出せるという。同ソフトウェアはIBMのクラウド製品ポートフォリオの基盤となるインフラ技術である「SoftLayer」に対応する。SoftLayerは、2013年7月に買収したSoftLayer Technologiesの資産を生かしたクラウド事業の核である。
また、「SmartCloud Virtual Storage Center」の新バージョンでは、複雑なストレージ階層化を自動化し、かつ、適切なデータを自動でクラウドストレージに移行することによって、時間とコストの削減を後押しするとしている。
ビッグデータ分析の分野では、同社データベースであるDB2 10.5で搭載した「BLUアクセラレーション」を拡充、新たに「BLU Acceleration for Cloud」のプレビュー版を公開した(リンク)。BLUアクセラレーションは、従来の列指向データベースとしての機能をそのままに、同一のストレージ上でカラム型のデータを保持でき、OLTP処理とOLAP処理を単一のインスタンス上で受け持てる特徴がある。独自のデータ圧縮技術やインメモリでの並列処理によって、高速な分析に対応できる。
BLU Acceleration for Cloudでは、同社のBLUアクセラレーション技術を採用したデータベースとビジネス分析技術をシンプルなクラウド環境で活用できるとしている。
このほかにも、Apache HadoopやNoSQL、リレーショナルシステム内のデータを匿名化できる「InfoSphere Data Privacy for Hadoop」や、垂直統合システムの1つである「PureData System」のラインアップにHadoopシステムの導入シンプル化を図った「IBM PureData System for Hadoop」を加えることを発表した。
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