チャットアプリ開発に見る、Socket.IOの基本ライブラリの使い方:Socket.IOで始めるWebSocket超入門(2)(2/3 ページ)
本連載では、WebSocketを扱えるNode.jsのライブラリ「Socket.IO」の使い方について解説します。今回は、チャットアプリ開発を例に、双方向通信、ブロードキャスト送信、個別送信などを実装する際のSocket.IOの使い方について。
双方向通信の実装(データの送受信)
次に、双方向通信によるデータ送受信の実装についてです。ひな型の処理の流れに沿って説明します。ポイントは、emitは送信、onは受信ということです。
データの送信 | データの受信 | |
---|---|---|
emit(送信イベント名, 送信データ) 関数 | on(受信イベント名, 受信データ) 関数 |
クライアントからサーバへのデータ送信
$("form").submit(function(e){ var message = $("#msgForm").val(); $("#msgForm").val(''); // C03. client_to_serverイベント・データを送信する socket.emit("client_to_server", {value : message}); e.preventDefault(); });
- C03. client_to_serverイベント・データを送信する
フォームがsubmitされたら入力値を取得し、その値をclient_to_serverイベントとしてサーバへ送信しています。
サーバでのデータ受信とクライアントへのデータ送信
// S04. connectionイベント・データを受信する io.sockets.on('connection', function(socket) { // S05. client_to_serverイベント・データを受信する socket.on('client_to_server', function(data) { // S06. server_to_clientイベント・データを送信する io.sockets.emit('server_to_client', {value : data.value}); }); });
- S04. connectionイベント・データを受信する
クライアント〜サーバ間でWebSocket通信が確立すると、io.socketsオブジェクトに対してconnectionイベントが発火(データが送信)されます。このconnectionイベントはWebSocket通信が確立している限り有効です。そのため、connectionイベント受信時のコールバック関数として、必要なサーバサイドの処理を定義することになります。
io.sockets.on('connection', function(socket) { // この中に必要な処理を記述する });
- S05. client_to_serverイベント・データを受信する
クライアントから送信されたclient_to_serverイベントとデータを受信しています。
- S06. server_to_clientイベント・データを送信する
受信したデータをserver_to_clientイベントとして、接続している全クライアントへ送信しています。全クライアントにデータを送信するには、「io.sockets.emit(送信イベント名, 送信データ)」を使用します。
io.sockets.emit('server_to_client', {value : data.value});
クライアントでのデータ受信
// C04. server_to_clientイベント・データを受信する socket.on("server_to_client", function(data){appendMsg(data.value)}); function appendMsg(text) { $("#chatLogs").append("<div>" + text + "</div>"); }index.html
- C04. server_to_clientイベント・データを受信する
サーバから送信されたserver_to_clientイベントを受信し、データを取得します。コールバック関数(appendMsg(text))で、チャットログエリアにデータを表示します。
以上が、クライアント〜サーバ間での双方向通信の実装です。emit/onを交互に使用してデータをやりとりしていることが確認できたと思います。
その他のデータ送信方法
Socket.IOサーバライブラリには、全クライアントにデータを送信する「io.sockets.emit(送信イベント名, 送信データ)」だけではなく、他にもデータ送信用ライブラリが存在します。
ブロードキャスト送信
まずは、「socket.broadcast.emit(送信イベント名, 送信データ)」です。このライブラリを使用すると、サーバは、データ・イベントを送信したクライアント以外の全てのクライアントにデータを送信します。
では、実際にコードを追加・変更しながら処理の違いを確認してみましょう。ユーザーが入室したら、他のクライアントにだけ入室メッセージ表示する処理を実装します。
<!DOCTYPE html> <html lang="ja"> <head> <meta charset="utf-8"> <title>websocket-chat</title> <link rel="stylesheet" href="https://maxcdn.bootstrapcdn.com/bootstrap/3.3.5/css/bootstrap.min.css"> <script src="https://ajax.googleapis.com/ajax/libs/jquery/1.11.3/jquery.min.js"></script> <!-- C01. Socket.IOクライアントライブラリの読み込み --> <script type="text/javascript" src="/socket.io/socket.io.js"></script> </head> <body> <div class="container"> <h1>WebSocket-Chat</h1> <form class="form-inline"> <div class="form-group"> <label for="msgForm">名前:</label> <input type="text" class="form-control" id="msgForm"> </div> <button type="submit" class="btn btn-primary" id="sendButton">入室</button> </form> <div id="chatLogs"></div> </div> <script type="text/javascript"> var socket = io.connect(); // C02. ソケットへの接続 var isEnter = false; var name = ''; // C04. server_to_clientイベント・データを受信する socket.on("server_to_client", function(data){appendMsg(data.value)}); function appendMsg(text) { $("#chatLogs").append("<div>" + text + "</div>"); } $("form").submit(function(e){ var message = $("#msgForm").val(); $("#msgForm").val(''); if (isEnter) { message = "[" + name + "]: " + message; // C03. client_to_serverイベント・データを送信する socket.emit("client_to_server", {value : message}); } else { name = message; var entryMessage = name + "さんが入室しました。"; // C05. client_to_server_broadcastイベント・データを送信する socket.emit("client_to_server_broadcast", {value : entryMessage}); changeLabel(); } e.preventDefault(); }); function changeLabel() { $("label").text("メッセージ:"); $("button").text("送信"); isEnter = true; } </script> </body> </html>
- C05. client_to_server_broadcastイベント・データを送信する
“〜さんが入室しました。”というメッセージをサーバに送信するclient_to_server_broadcastイベントを新しく追加しています。
// S01. 必要なモジュールを読み込む var http = require('http'); var socketio = require('socket.io'); var fs = require('fs'); // S02. HTTPサーバを生成する var server = http.createServer(function(req, res) { res.writeHead(200, {'Content-Type' : 'text/html'}); res.end(fs.readFileSync(__dirname + '/index.html', 'utf-8')); }).listen(3000); // ポート競合の場合は値を変更 // S03. HTTPサーバにソケットをひも付ける(WebSocket有効化) var io = socketio.listen(server); // S04. connectionイベント・データを受信する io.sockets.on('connection', function(socket) { // S05. client_to_serverイベント・データを受信する socket.on('client_to_server', function(data) { // S06. server_to_clientイベント・データを送信する io.sockets.emit('server_to_client', {value : data.value}); }); // S07. client_to_server_broadcastイベント・データを受信し、送信元以外に送信する socket.on('client_to_server_broadcast', function(data) { socket.broadcast.emit('server_to_client', {value : data.value}); }); });
- S07. client_to_server_broadcastイベント・データを受信し、送信元以外に送信する
client_to_server_broadcastイベントより取得した入室メッセージをクライアントに送信する処理を追加しています。
コードの変更・保存が完了したら、アプリケーションの動作を確認します。ターミナルで、websocket-chatディレクトリに移動し、「node app.js」コマンドを実行してください(既に実行中の場合は、1度停止した後に再度実行してください)。その後、ブラウザウィンドウを複数開き、「http://localhost:3000/」にアクセスしてみましょう。
どれか1つのウィンドウで、名前欄に値を入力し、入室ボタンを押下します。
ボタン押下後、入力ウィンドウ以外に、「〜さんが入室しました。」というメッセージが表示されていることが確認できたと思います。
このように、broadcastを利用すると、自分以外の全てのクライアントにメッセージを送信できます。
socket.broadcast.emit('server_to_client', {value : data.value});
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