ニュータニックスは、ヴイエムウェア、AWSと協力しながら、挑戦する道を歩む:あなたの知らないハイパーコンバージドインフラの世界(3)(2/2 ページ)
ニュータニックスは、ハイパーコンバージドインフラを舞台として、ヴイエムウェアの競合になろうとしている。将来は、Amazon Web Servicesへの挑戦も考えている。今回は、同社が現在何を提供し、今後何をやろうとしているのか、ヴイエムウェアにどう対抗しようとしているのかを具体的に紹介する。
VMware vSphereユーザーにとってのNutanixの付加価値は
AHVの比率が15%に達したとしても、未だに大多数のユーザーはVMware vSphereでNutanixを使っていることになる。ヴイエムウェアは「VMware VSAN」というソフトウェアストレージ製品を提供開始し、一定の成功を収めている。また、同社もVMware vSphereとVSANを、ハイパーコンバージドインフラのためのソフトウェアとして提供している。
もし、ヴイエムウェアを信頼している企業で、「AHVなど使う用途はない」という場合、ヴイエムウェアのソフトウェアで構成されるハイパーコンバージドインフラではなく、ニュータニックスの製品を選ぶ必要はどこにあるのか。この素朴な疑問を、ニュータニックスの会長兼CEOであるDheeraj Pandey(ディーラジ・パンディ)氏に投げ掛けてみた。
Pandey氏はまず、同社の製品のメリットがストレージソフトウェアだけでなく、運用フレームワークの「Prism」にもあると反論する。Prismは、ヴイエムウェアでいえば「vRealize Operations」に相当するような、仮想化環境の可視化やパフォーマンス管理、キャパシティ管理の機能を、使いやすいツールとして提供している。
ニュータニックスは今回のカンファレンスで、運用担当者が全くvCenterに触ることなく、日常の運用を完結できる機能を提供すると発表している。
Pandey氏は続けて、一般企業には多様な環境が併存しているという事実があり、vSphereは、これに対応する共通基盤になり切れていないと主張する。
「vSphereをどれだけ広範に活用していたとしても、隣にはHyper-V環境があったり、物理サーバが残っていたりするものだ」(Pandey氏)。単一の技術に全てをまとめ切れないところに、一般企業における運用担当者の悩みの1つがある。
例えば、どうしても物理サーバで動かしたいデータベースがあったとする。これをヴイエムウェアのハイパーコンバージドインフラで取り込めるか。
ニュータニックスは、今回のカンファレンスにおける発表で、2016年7月に提供開始の4.7リリースが、「Acropolis Block Services(ABS)」というブロックストレージインターフェースを搭載すると発表した。これを使って、データベースのストレージをNutanix上に移行できるとする。仕方なく物理サーバに残すソフトウェアのために、専用ストレージ製品を調達し、専門家による運用を依頼する必要はない、Nutanixに統合することで、高いパフォーマンスと可用性を提供できると、ニュータニックスは主張する。
ABSは、汎用のブロックストレージインターフェースであり、ブロックストレージを必要とする全てのアプリケーションに対応できるという。ニュータニックスでは既に、「Acropolis File Services(AFS)」と呼ぶファイルストレージインターフェースを提供開始している。現在は、容量拡張が自動的に行えないなどの制限があり、用途をデスクトップ仮想化におけるユーザーディレクトリなどの用途に限定しているようだ。
ABSとAFSが本格的に使えるようになれば、仮想マシンだけでなく、あらゆるデータをNutanixのソフトウェアストレージに集約できることになる。
また、Pandey氏は、「日本では事業継続が今でも課題になっているはずだ」と言い、ディザスタリカバリ(DR)でvSphereを対向で使わずとも、ESXiの仮想マシンをAHV形式で遠隔バックアップでき、コスト効率の良い対策が可能になるなど、「vSphereの運用に柔軟な選択肢を提供できる」と強調した。
管理プラットフォームは多様性の管理で生きてくる
Pandey氏が主張するように、管理プラットフォーム「Prism」は、ストレージソフトウェアと並んで、Nutanixの大きな特徴だ。Prismでは、検索を用いた直感的な運用管理もユニークで、注目できる。例えば複数の仮想化環境を混在運用している場合、仮想マシン形式ごとに検索・リストする、特定の仮想マシン名で検索し、トラブルシューティングをすることもできる。
PrismはESXi上の仮想マシンのみを対象とした場合でも、vRealize Operationsに似た機能を使える。だが、複数の仮想化環境、そして場合によっては物理環境、コンテナ環境が混在する状態で、これらを横並びに管理する際、上記の統合的で直感的な運用が生きてくるといえそうだ。
なぜ他の管理ツール/フレームワークに管理される発表をしているのか
Prismは、ニュータニックスにとって、自社製品を差別化する上で最も重要な機能だ。上記のように、物理環境、複数の仮想化環境、コンテナ環境といった多様な環境を、運用担当者が社内ユーザーに対してサービスとして提供するために必須のツールになるということが、Prismで同社が掲げるゴールだ。
だが、今回のカンファレンスでは、マイクロソフトの提携で、Microsoft Cloud Platform System(CPS)を7月に提供開始すると発表した。また、OpenStackからNutanixを管理できる環境が整ったとしている。これらは、Nutanixが、他の管理フレームワーク/管理ツールから管理される対象になるという発表だ。前出のPotti氏はこれについて、意図的にオーディエンス(対象顧客)を広げるための戦略だと説明している。
これは、VMware vSphereについて同社が実行してきたやり方と似ている。vSphereでは、vCentterを活用して仮想マシンの払い出しなどができる環境を保ちながら、Nutanixで取得した情報に基づいて、パフォーマンス管理やトラブルシューティングなどが直感的にできる環境を提供してきた。
そして今回、運用担当者がvCenterに触ることなく、ESXi仮想マシンに関する一条的な運用作業が、全てPrismから行えるような機能を、近い将来に提供すると発表した。
つまり、ESXiに関しては、まず相手の懐に飛び込んで管理対象となり、その後に主導権をとって自社の管理ツールで完結する運用を実現するというやり方を選択している。Potti氏はこれと同様に、Hyper-V/AzureやOpenStackでも、最終的にはPrismから全ての運用ができるようにすることを目指すと話している。その先にあるのは、社内ITインフラ/プライベートクラウドとパブリッククラウドにまたがる、統合運用ツールあるいはオーケストレーションツールとしての役割だ。
ニュータニックスは、将来どういう存在になりたいのか
ニュータニックスは、今後どのように製品を進化させていくか。具体的に見えているのは下記のような点だ。
まず、サーバ、ストレージに続き、ネットワークの機能を充実させる。当初実現するのはネットワーク接続の可視化機能。トップ・オブ・ラック・スイッチから取得した情報を、Nutanixで把握している仮想マシン単位のネットワーク情報と関連付け、物理、仮想双方の接続状況について、ダイアグラムとして分かりやすく表示する。この画面で問題を把握し、スイッチの管理画面を立ち上げてトラブルシューティングを実施するという一連の作業を、簡素化するという。
ネットワーク関連ではその後、「オートスケーリング、NFV(ネットワーク機能仮想化)、マイクロセグメンテーションなどの機能を、段階的に提供していく」と、Potti氏は話す。。同氏は、マイクロセグメンテーションについては、「Open vSwitch上でACLを適用することで、VMware NSXよりもシンプルな仕組みが作れる」と話していたが、VXLANなどのプロトコルによるカプセル化(ネットワーク仮想化)も検討しているようだ。NFVについては、他社のソフトウェアネットワーク製品との連携を推進していく。
また、パブリッククラウドの運用管理機能を強化する。Prismでは、オンプレミスの環境に加え、主要パブリッククラウド事業者にユーザーが展開する環境を、一括管理できるように進化させていく。
Pandey氏は、例えばAWSが独自のAPIを提供していることを批判。「これでは容易に他の環境へ移行できず、ユーザーの自由が阻害される。パブリッククラウドは、標準のAPIを採用すべきだ」と話す。一方で同氏はニュータニックス自身のツールにより、「多様なクラウド サービスのAPIを抽象化し、ユーザー企業がクラウド間で、臨機応変にアプリケーションを移動できるような環境を作りたい」と話した。ただし、これには「10年くらいかかるかもしれない」という。
プレジデントのSudheesh Nair(サディーシュ・ネア)氏の表現はもっと直接的であり、挑戦的だ。同氏は米アマゾンおよびAWSに敬意を抱いている一方、AWSがフルスタックのクラウドサービスに成長し、ユーザーをロックインする傾向を強めていると話す。「AWSをやっつけるためには、(他社との)エコシステムを通じて、(オープンな形で)AWSよりも優れたものを作っていく必要がある」としている。
Nair氏の言う、エコシステムを通じたオープンなフルスタックサービスも、いつ実現するかは分からない。だが、ニュータニックスが他社の力を借りながら、インフラより高いレイヤーの機能も提供しようとしていることは明らかだ。
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