“App-VとUE-VがWindows 10 Anniversary Updateに搭載”は本当にお得か?:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(63)(2/2 ページ)
今回は、一部のIT系メディアで取り上げられた「Windows 10 Anniversary Update」の新機能に関わるニュースを深読みします。
Windows 10 Enterprise Insider PreviewのApp-VとUE-V
以上の点を踏まえて、「Windows 10 Insider Preview」(ビルド14372および14383)でApp-VとUE-Vの組み込み状況を確認してみましょう。製品版に近いビルドなので、Windows 10 Anniversary Updateでも同じはずです。
以下の画面1は、Windows 10 Enterprise Insider Previewのクリーンインストール直後のサービスの状態と、Windows PowerShellのコマンドレットを確認したものです。
サービスとして「Microsoft App-V Client」と「ユーザーエクスペリエンス仮想化サービス」の2つが存在し、どちらもスタートアップは「無効」になっています。前者がApp-Vクライアント、後者がUE-Vクライアントです。どちらも、「%Windir%\System32」フォルダにバイナリがインストールされていました。
ちなみに、MDOPのApp-V 5.1は「%ProgramFiles%\Microsoft Application Virtualization\Client」フォルダに、UE-V 2.1 SP1は「%ProgramFiles%\Microsoft User Experience Virtualization\Agent」フォルダにインストールされます。
App-VクライアントとUE-Vクライアントは、Windows PowerShellのコマンドレットで構成します。これは、MDOPのApp-V 5.1やUE-V 2.1 SP1でも同じです。Windows 10 Enterprise Insider Previewには、「AppvClient」および「UEV」というモジュールが標準搭載されています。サービスは既定で「無効」になっていますが、「Enable-Appv」および「Enable-Uev」コマンドレットを実行することで、それぞれ有効化できました。
以下の画面2は、筆者が数年前にApp-V 5.0のテスト用に作成した「Adobe Reader X」のApp-Vパッケージを展開したところです。App-V 5.0用の古いパッケージですが、問題なく展開し、アプリケーションを実行できました。
以下の画面3は、UE-Vを有効化して、「Set-UevConfiguration」などのコマンドレットで同期を構成したものです。UE-V 2.1 SP1には存在する「通知領域」のアイコン(UevTrayApp.exe)と「会社設定センター(TemplateConsole.exe)」は、Windows 10 バージョン1607のUE-Vエージェントには含まれていないようです。
なお、App-Vのパッケージを作成する「App-V Sequencer」とUE-Vのテンプレートを作成する「UE-V Generator」のWindows 10 バージョン1607対応版は、「Windowsアセスメント&デプロイメントキット(Windows ADK)」に収録されて提供される予定です(画面4)。
以下の画面5は、Windows 10 Pro Insider Previewの状況です。「Enable-Appv」および「Enable-Uev」コマンドレットを実行すると、「このエディションでは利用できない」というエラーメッセージが表示されます。また、MDOPのメディアからApp-V 5.1やUE-V 2.1 SP1をインストールしようとしても、「このアプリはこのPCで実行できません。……このバージョンのWindowsでは使用できません」と表示され、インストールすることができません。
ところで、App-VとUE-Vって何なの?
App-VおよびUE-Vは、SAまたはVDA契約でのみ利用できるソフトウェアなので、そもそもこれらが何なのかを知らないという方も多いでしょう。
App-Vは、アプリケーションのインストールをキャプチャーしてパッケージ化し、実行可能状態のアプリケーションをストリーミング配信やファイルコピーで簡単に展開する「アプリケーション仮想化技術」です。Microsoft Office 2013以降の「クイック実行(Click to Run:C2R)」は、App-Vの仮想化技術を応用したものです。「Office Deployment Tools」を使用すると、C2R形式のインストールソースをApp-Vパッケージに変換することが可能です。
- [参考]“新しいOffice”はいろいろと新しい(連載:山市良のうぃんどうず日記 第2回)
UE-Vは、デスクトップやアプリケーションのユーザー設定をローミングする機能です。Windows 8.1やWindows 10ではMicrosoftアカウントでサインインすると、OneDriveを利用したローミングが可能になりますが、UE-Vはそれをオンプレミスのファイル共有などを利用して実現します。Azure Active Directory Premiumが提供する「Enterprise State Roaming」機能のオンプレミス版といってもよいかもしれません。
以前からWindowsには「ローカルユーザープロファイル」や「移動ユーザープロファイル」がありますが、UE-Vはこれらと併用でき、ユーザープロファイルよりも細かい設定のローミングが可能です。また、ユーザープロファイルでは実現できない、RDSのセッションや仮想デスクトップ間のローミングにも対応しています。
App-VやUE-Vについて詳しく知りたい方は、以下のサイトで確認してください。
- アプリケーションの仮想化(Windows TechCenter)
- User Experience Virtualization(Windows TechCenter)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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