フラッシュファーストの時代、ストレージの製品選択基準はどう変わる?:オールフラッシュデータセンターの世界
ハードディスクドライブ(HDD)よりもまずフラッシュの適用を考える、「フラッシュファースト」の時代になってきた。こうした時代には、フラッシュストレージ利用についての考え方や、フラッシュストレージ製品の選択基準がこれまでとは変わってくる。
オールフラッシュストレージはもはやデータベースやVDI(デスクトップ仮想化)に限定されるものではない。企業におけるあらゆるデータインフラのニーズに適用できる存在になった。ハードディスクドライブ(HDD)よりもまずフラッシュの適用を考える、「フラッシュファースト」の時代になった。実際、ストレージの更改に合わせてオールフラッシュへ移行するケースや、新規事業の立ち上げに合わせてオールフラッシュを優先的に選択するケースが急増している。こうした時代には、フラッシュストレージ利用についての考え方や、フラッシュストレージ製品の選択基準がこれまでとは変わってくる。
「フラッシュファースト」を考えられるようになった最大の要因は、フラッシュの実質コストが大幅に低下したことだ。EMCジャパンのシニアアカウントマネージャーである木原英剛氏は、こう話す。
「2016年はフラッシュのギガバイト単価がHDDを逆転する転換点となる年です。SSD1基あたりの容量は爆発的に伸びていて、今年は15TBの製品が登場しました。一方、HDDは1万5000回転クラスのエンタープライズ向けで現在提供されているものは、最大容量600GBです。SSDの大容量化は、SSDのギガバイト単価低減を加速しています。実際、私が担当している案件を見ても、性能要求が高い案件では、フラッシュストレージのほうが回転ディスクより安くなっています。また、ラック設置面積や消費電力、故障による交換など5年間のトータルコストを比較した場合は、ほとんどのケースでフラッシュのほうが有利になってきました」
フラッシュという記憶媒体のコストが低減したことに加え、オールフラッシュ製品の選択肢がこの1年あまりで大きく広がり、企業は自社のニーズを製品に合わせるのではなく、製品を自社のニーズに合わせて選べるようになったことも大きい。これを受けて、ビジネス的なメリットに注目してオールフラッシュを採用するケースが増えた。どのくらいの利益を生むか、どのようなインパクトをもたらすかという観点から、具体的な議論が行われるようになってきたのだ。
3つの側面から見るオールフラッシュのビジネス価値
オールフラッシュ製品にはどんなビジネスインパクトがあるのか。木原氏は、開発者や運用者にとってのメリット、経営層にとってのメリット、企業の顧客にとってのメリットという3つの観点があると指摘する。
開発者や運用者にとってのメリットとしては、まず、設計、開発、試験時間の大幅な短縮が挙げられる。取り扱うデータ量が爆発的に増え、リアルタイム性の高いアプリケーション開発が求められるなか、ストレージI/O性能が圧倒的に優れていることは、システム設計やアプリケーション開発のスピードに直接的に影響する。アプリケーションの性能だけでなく、バッチ処理、データベースのコピーなど、システム開発のあらゆる面で恩恵を受けるといっていい。
また、運用者にとっては、運用対応時間の大幅な減少もメリットだ。フラッシュは物理的な回転機構がないため、HDDにくらべて圧倒的に故障が起こりにくい。フラッシュに移行するだけで、障害対応、ディスク交換、夜間バッチといった負荷のかかる作業のほとんどを大幅に削減することができる。
次の経営層にとってのメリットは、"オールフラッシュ元年らしさ"を示したものとも言える。オールフラッシュのメリットは、これまでシステムや現場レベルの話に偏ることが多かった。だが、2016年に入ってからは、ビジネス拡大や新規ビジネスを支えるために欠かせない要素として、オールフラッシュが注目を集めるようになった。木原氏は、その具体的な例として、ビッグデータ分析やIoT、AIなどとセットでの検討が増えたと話す。
「ある医療機関では、重症患者に対してどのような治療が適切かをすみやかに判断するためにオールフラッシュを採用しています。治療が適切かどうかを判断するためには、過去の膨大なデータを高速に処理する必要があります。患者数や症例の増加で、従来のストレージでは分析に11日間もかかっていたそうです。オールフラッシュに移行したことでそれをわずか6時間にまで短縮しました。入院したその日のうちに治療の方針を立てることで、多くの重症患者の人命を救うことができるようになったのです」(木原氏)
もちろん、経営層にとっては大幅なTCO削減の効果も大きい。オールフラッシュによりコンパクトでシンプルなインフラを構成することで、運用コストの削減、サーバ台数の圧縮、ソフトウエアライセンスコストの削減、設備や電力の削減などが期待できる。さらには、システムのパフォーマンスが上がることで社員の生産性向上にもつながる。
3つめの顧客にとってのメリットは、今後の取り組みのなかでますます重要になる点だ。ビジネスのデジタル化は、どの業界でも直接・間接に進みつつある。これを受けて、システムのバフォーマンスはユーザーをつなぎとめるための大きな要素になってきた。便利で満足のいくサービス、安心で安定したサービスを提供するうえで、オールフラッシュは欠かせない基盤になりつつあるのだ。
フラッシュストレージ製品の選択基準はどう変わってきたか
どのフラッシュストレージ製品を選択するかを決める際にも、ビジネス視点で考えることが増えてきた。ビジネス視点とは、実際に運用したときに、「使える」ものなのかという視点でもある。下記は、あるクラウド運用会社の例だが、他の産業にも当てはまる。
まず、このクラウド運用会社が第一の目標として設定したのは利益の創出だった。利益を創出するためには、ユーザー数の増加による売上増と、インフラや運用の効率化によるコスト削減が必要だ。そのための基盤として採用したのがオールフラッシュだった。
「この企業がオールフラッシュで実現しようとしたことは4つあります。『安定して高いユーザーエクスペリエンス(高い性能)』『低額の使用料(低いギガバイト単価)』『安定したデータ削減機能』『保守作業負荷の低減』です。単にシステム基盤を効率化してコスト削減を図るだけでなく、提供するサービスの品質を高く保つことで、ビジネスにおける競争優位を生み出そうとしたのです」(木原氏)
具体的には、まず性能面では、フラッシュを採用したことで、さまざまなワークロードに安定して対応できるようになった。クラウドサービスであるため、ユーザーの使用状況によって、特定ユーザーのI/Oが急増したり、ユーザー間のアクセス競合が高まったりといったことが起こる。フラッシュはそうした不安定な環境を安定化するのに役立った。
また、コスト面では、従来のストレージと比べて、安定した性能と運用負荷の少なさが大きな効果をもたらした。障害対応やディスク交換、夜間バッチなどへの対応時間が減り、コスト削減につながった。さらに、重複排除やデータ圧縮、高可用性などの機能を使って、システムの安定運用も実現した。
「最も重要なことは性能が安定しているかどうかです。SSDというと速さばかりに注目しますが、何年も運用していると遅くなる製品もあるので注意が必要です。また、圧縮や重複排除が時間とともに効きにくくなるものも存在しています。フラッシュ製品を選択する際には、そうしたいくつかのポイントを見て、自社に適切な製品を選ぶことが大切です」(木原氏)
よく聞かれるのは、「容量使用率が高まると、IOPSが低下する、あるいは遅延が定期的に上昇する(いわゆる「ガベージコレクション」機能の影響)」「重複排除機能をオンにしているだけで性能が劣化する」「I/O負荷が高まると、自動的にデータ削減機能が停止し、使用率が急速に高まってしまう」などの問題だ。ビジネス視点で価値を生むためには、こうした問題が生じないフラッシュストレージ製品を選びたい。
あのVMAXオールフラッシュにも手が届くようになった
とはいえ、各企業のストレージ利用における考え方はさまざまだ。冒頭で述べたように、各企業がニーズに合わせて製品を選べるようでなければ、オールフラッシュが製品ジャンルとして確立したとはいえない。
EMCのオールフラッシュ製品の強みの1つは、選択肢の豊富さだ。ユーザーは自社のニーズに合わせた製品を豊富なラインアップから選択することができる。現在、EMCはオールフラッシュを、「VMAX All Flash(VMAXオールフラッシュ)」「XtremIO」「DSSD D5」「Unity」の4つのポートフォリオで展開している。
VMAXオールフラッシュ
VMAXオールフラッシュは、ミッションクリティカルなシステム向けの高性能、高可用性なストレージだ。20年以上の歴史のあるVMAXの信頼性と安定稼働の実績をそのまま生かし、オールフラッシュでより高速でスマートな環境を構築することができる。
VMAXオールフラッシュでインパクトのあるトピックとして、10月に新登場する「VMAX 250F」がある。これまでEMCは、2ラックの「VMAX 450F」と4ラックの「VMAX 850F」というモデルを展開してきたが、250Fは「10Uあるいは20Uで展開できるスモールスタート用のVMAX」として、先行展開を進める欧米で爆発的な人気を得ている。250Fは15TBのSSDに対応。これを用い、ハーフラックで1PBのフラッシュ環境を構築できる。
XtremIO
XtremIOは、安定した性能でデータ削減やスケールアウトを実行できることが大きな特徴とするストレージだ。容量を85%埋めた状態で遅延を計測しても、安定しており、IO負荷が高まったとしても、インライン重複排除や圧縮などの機能が停止することはなく、安定して稼働させることができる。
「性能が低下したり、不安定になったりする要因の1つはガベージコレクション処理の違いです。空き領域が縮小するとガベージコレクションが頻発し、利用すればどんどん悪化していきます。負荷の高い状態で安定して性能が出せないと、ビジネスにも影響をあたえかねません。何年運用しても遅くならないことが高く評価されています」と木原氏はいう。
DSSD D5
DSSD D5は、1000万IOPS、遅延は100マイクロ秒という、文字通り桁違いの性能を実現したストレージだ。既存のオールフラッシュとくらべて10倍高速で、1台で144TBのキャパシティを持つことから、大容量処理に向いている。
DSSD D5は、NVM Express(NVMe)規格に対応したフラッシュモジュールを複数のサーバ間で共有する仕組みを備えている。一般的なFCやiSCSI接続で必要となるOSカーネル処理を不要としたPCIeダイレクト接続により、他のフラッシュ製品よりも高速な処理を実現できるという。この点で従来の性能オーバーヘッドを劇的に削減し、アプリケーションのパフォーマンスを最大化している。
このように、オールフラッシュがメインストリームになるなか、ストレージ製品の選択によってビジネス価値が大きく左右されるような時代に入ってきた。EMCでは、これまでのオールフラッシュの課題を解消しながら、ユーザーに幅広い選択肢を与え、さらに新しい価値を提供していくという。オールフラッシュのシェアトップとして、業界をリードする同社に今後も注目しておきたい。
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提供:EMCジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年11月11日