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米レッドハットが目指してきた開発・運用環境が(ひととおりの)完成形に近づいたRed Hat Summit 2017

米レッドハットは、2017年5月第1週に開催した年次カンファレンス「Red Hat Summit 2017」において、アプリケーション開発・運用関連で複数の大きな発表を行った。統合的なクラウドネイティブアプリ開発・運用環境の提供、企業における従来型アプリケーションのモダナイズ、エンタープライズJava開発者のクラウドネイティブな世界への移行といった課題への同社の回答が、ひととおりの完成形に近づいてきたと解釈できる。

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 米レッドハットは、2017年5月第1週に開催した年次カンファレンス「Red Hat Summit 2017」で、Amazon Web Services(AWS)とのサービス連携をはじめ、アプリケーション開発・運用関連で複数の大きな発表を行った。

 同社は以前より、「オープンソース技術を企業・組織が利用しやすくする」ことをモットーとして活動してきた。当初はLinuxでこれを実現し、次にOpenStack、コンテナプラットフォーム、ミドルウェアといった上のレイヤーへ範囲を拡大してきた。今回のイベントでは、コンテナプラットフォーム、開発ツール、ミドルウェアといった構成要素の統合度を高め、「企業・組織が利用しやすい」アプリケーション開発・運用環境の提供という点で、前進したことをアピールした。これには、既存アプリケーションの段階的な移行、コンテナの世界へのJava開発者の移行が含まれる。

 今回の発表の具体的な要点は、統合的な開発環境、Java EE開発者のためのツール、ハイブリッドクラウド対応の高度化などにある。

統合的な開発環境の提供

 米レッドハットは、Red Hat Summit 2017で、OpenShift.ioを発表した。これは、「デベロッパーツール分野で、これまで長い間におけるおそらく最も大きな発表」だと、米レッドハットのデベロッパーツールおよびプログラム担当シニアディレクターであるHarry Mower(ハリー・モウワー)氏は表現した。

 OpenShift.ioは無償の開発者向けオンラインサービスで、Webブラウザとインターネット接続さえあれば、開発に取り掛かれるというのがコンセプト。クラウドIDEだけではなく、チームでCI/CDサイクルを回していく際に必要な全ての機能を統合的に提供することを目的としている。事実上、レッドハットが提供するコンテナベースのアプリケーションプラットフォームサービスであるOpenShift Onlineとの併用を意図している。


OpenShift.ioの概要

 OpenShift.ioでは、fabric8(旧fuse)、Eclipse Che、Jenkinsなどのオープンソースソフトウェアを統合し、一貫したWebインタフェースを与えている。開発チームのための「Space」を作成し、ランタイムなど幾つの選択を行うだけで、コンテナベースのCI/CDパイプライン環境が作成される(カスタマイズも可能という)。Jenkinsを含め、個々のツールを意識することはない。ツールの選択や構築に時間を取られることなく、開発に集中できるとする。

 こうした環境で、個々の開発者は自分に割り当てられた開発作業を行い、開発からQA、ステージングのプロセスを経て、OpenShift Online上で動くアプリケーションの一部を(アプリケーションの稼働を止めずに)ローリングアップデートするといったことができる。コードのコンテナ化およびOpenShift Onlineへの投入は透過的に行われる。

 レッドハットはこのサービスに組み込まれているコード分析機能のユニークさを強調している。開発コードに組み込まれているソフトウェアツールのバージョンにセキュリティ上の問題などがあると、適切なバージョンの利用をIDE内でアドバイスするというもの。同社の社内における開発の経験に、機械学習を適用した機能だといい、今後さらに強化していくつもりだという。

既存アプリケーションのコンテナ環境への移行を半自動化

 Red Hat Summit 2017の基調講演で、レッドハットは既存Java EEアプリケーションのクラウドへの移行をデモした。これはレッドハットらしい部分だといえる。

 「顧客は(利用)テクノロジーを前進させたいと思っている。だが、WebLogicやWebSphereといったレガシープラットフォームに対するこれまでの投資を、どうすればいいか考えあぐねている。彼らは将来に向けての道筋を欲しがっている。少なくとも開発者にとって、LinuxコンテナとOpenShiftは、その将来への道筋だ」と、シニアアプリケーション開発テクニカルエバンジェリストのJames Falkner(ジェームズ・フォークナー)氏は宣言している。

 デモでは、Java EEベースのモノリシックな株取引システムを、Red Hat Application Migration Toolkit の活用により「Red Hat OpenShift Container Platform(OpenShift)」と「JBoss Enterprise Application Platform(JBoss EAP)」に移行するプロセスを見せた。ちなみに2017年4月下旬にリリースされたRed Hat Application Migration Toolkit 4.0のBeta1ではWebコンソールが追加されている。

 Red Hat Application Migration Toolkitでは既存アプリケーションのコードを分析し、結果をレポートとして可視化できる。レポートでは、移行における問題を、対処が必須かオプションかに分類して示すことができる。また、移行作業の難易度を示せる。コードレベルでは、例えばWebLogic固有のコードを標準的なJava EEコードに置換するなどのアドバイスが表示され、レビューして問題がないのであれば適用ボタンを押せばいい。

 そしてコードをドラッグ&ドロップするだけで、OpenShiftがこれをJBoss EAPイメージと結合してコンテナを生成、これがOpenShift環境に投入される。

 いったんコンテナ環境に投入されれば、スケーリングが容易にできるようになる。また、この時点でワンクリックによりCI/CDパイプラインを構築し、QAやテストを経て、ローリングアップデートができるようにすることもできる。つまり、アプリケーションをより機動的に改善していけるようになる。さらにこの既存アプリにRESTful APIを与え、他のアプリケーションから利用しやすくすることができる。

 上記2つのトピック双方に関連し、レッドハットはマイクロサービス対応のランタイムとして、「Red Hat OpenShift Application Runtimes」を発表した。テクノロジープレビューとして提供開始済みで、2017年中に一般提供を開始予定という。

 OpenShift Application Runtimesでは、WildFly Swarm、Eclipse Vert.x、Node.js、Spring Bootをランタイムとして搭載する。WildFly Swarmは、レッドハットがIBMなどと推進する最小限のJava EEランタイムであるMicroProfileのバージョン1.0に対応した、レッドハットとしての実装。Java EE開発者がマイクロサービスの世界へ移行することを助ける狙いがある。また、Vert.xはJava EEをはじめ、複数の開発言語に対応したランタイム。複数の言語を併用し、チームとして単一のプロジェクトを進めるために活用できる。


Red Hat OpenShift Application Runtimesの概要

AWSのサービスがOpenShiftから直接利用可能に

 また、レッドハットはOpenShiftでAWSとの連携を強化した。2017年秋に提供予定の新機能で、Amazon Aurora、Amazon Redshift、Amazon EMR、Amazon Athena、Amazon CloudFront、Amazon Route 53、Elastic Load BalancingなどのAWSのサービスを、OpenShiftから数クリックで、直接利用できるようになるという。

 OpenShiftは、これまでもAWSで動かすことができていたが、今回の発表により、OpenShiftをAWSで動かすかオンプレミスで動かすかにかかわらず、OpenShift内からAWSのサービスを活用できるようになる。また、AWSでOpenShiftを動かす場合、サポートはレッドハットが一括して引き受けられるようになったという。AWSに関わる問題については、2社が協力して対処するとしている。

 上述の開発者向け機能の多くは、レッドハットが数年をかけて段階的に進めてきたコンポーネントを基にしており、全てが突然降って湧いたものではない。だが、JBoss Middlewareのコンテナ化が完了したことと併せ、開発者が自分の仕事に専念できる統合的なクラウドネイティブアプリ開発・運用環境の提供、企業における従来型アプリケーションのモダナイズ、エンタープライズJava開発者のクラウドネイティブな世界への移行といった課題を解決するための同社としてのソリューションが、ひととおりの完成に近づいたものと解釈することができる。

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