無料でAIコーディングの利用状況、トークンコスト可視化 オープンソースのMCPサーバ「Preflight」公開:レビュー負荷が441%増 New Relicが調査で明かす2つの課題
New RelicはAIコーディングの利用状況やコストを可視化するMCPサーバ「Preflight」をオープンソースで公開した。トークン浪費をはじめとするAIコーディング特有の課題解決を支援するという。
New Relicは2026年7月30日、AIコーディングエージェントの利用状況を可視化・管理するMCP(Model Context Protocol)サーバ「New Relic Preflight」(以後、Preflight)をオープンソースで公開した。
Preflightは、「Claude Code」「Cursor」「GitHub Copilot」「Windsurf」といった主要AIコーディングエージェントをモニタリングする。各セッションでのAIの動作パターンなどのデータを収集し、AIの活用状況を可視化するという。
主要機能として、AIの利用コスト(トークン消費)のリアルタイムな可視化と予算管理機能が挙げられる。モデルやツールタイプ別に支出を追跡し、設定した予算上限に達する前にアラートを出すことで、予期せぬ高額請求を未然に防ぐことができる。
AI利用時の「アンチパターン」を自動検知する機能も備える。進捗(しんちょく)がないにもかかわらず同じ指示を繰り返したり、不必要なコンテキストを再読み込みしたりといった「トークンの無駄遣い」を検出し、利用方法の改善を促す。加えて、投入したコストに対してどれだけ成果を出せたかを示す「AI効率スコア」を週次で算出し、ROI(投資対効果)の定量評価が可能になるという。
PreflightはNew Relicのアカウント不要でローカル環境で実行できる。必要に応じてNew Relicの既存プラットフォームにデータを統合することも可能だ。
PreflightのGitHubリポジトリによると、Node.js(v22以上)がインストールされた環境で下記のコマンドを実行した後、「preflight setup」コマンドを実行することで導入できる。デフォルト(既定)のローカルモードでは、New Relicのアカウントは不要でローカルダッシュボード(localhost:7777)からセッションごとにコストの追跡を開始できるという。
npm install -g @newrelic/preflight
シニアエンジニアのレビュー負荷が441%増 主流になったAIコーディングの光と影
同日開かれた記者説明会では、New Relicの齊藤恒太氏(技術統括 コンサルティング部 兼 プロダクト技術部 部長)が登壇し、ソフトウェア開発現場におけるAIコーディング活用の動向と課題を解説した。
New Relicが新たに公開した調査レポート「The 2026 State of AI Coding Report 日本語版」によると、テクノロジーリーダーの67%が「自社で作成されるコードの51〜75%をAIが生成・大幅にリファクタリングしている」と回答しており、AI生成コードの本番環境への適用を許可している企業は95%に達している。
AIコーディングがすでにソフトウェア開発の主流となる一方で、齊藤氏はこの急速な普及に伴い、大きく分けて2つの課題が顕在化していると指摘した。
1つ目の課題は「品質低下」に伴う手直しの増大だ。調査によると、88%の組織がAIによるコード生成(バイブコーディング)を正式な本番環境ポリシーに盛り込んでおり、完全に禁止している組織はなかったという。62%のリーダーが「AI生成コードへの信頼から、人手による行単位の検証を行わずに本番投入することが頻繁にある」と回答している。
この過信や未検証でのリリースが招く影響は大きく、78%の組織がAI生成コードを本番に適用した結果「本番環境の障害が増加した」と回答しており、深刻な問題の発生割合は1.7倍、バグは28%増加したという。
結果として、AI生成コードの25%以上で「大幅な手直しが必要」(74%が回答)となっており86%の組織で「シニアエンジニアが手直しに費やす時間が増加した」と報告。記者説明会ではレビュー負荷が441%も激増したというデータが示されるなど、人手によるレビューの形骸化と手直しの増大が現場に重くのしかかっている実態が明らかとなった。
齊藤氏はこれらの原因として「AIは仕様上正しいコードは書けるが、システム稼働時のコンテキストが不足している」点を挙げた。なお未検証のAIコードが引き起こす本番環境の障害や、シニアエンジニアの多大な工数が奪われる状況を、同社は「エージェント負債」(Agent Debt)と呼んで警鐘を鳴らしている。
2つ目の課題は「コスト肥大化」だ。適切でないモデルの利用や同じ指示を繰り返すトークンの浪費に加え、AIが生成したブラックボックスの調査、開発速度が上がったことによる障害対応(火消し)工数増加といった運用負荷も重くのしかかっている。同調査によれば、業務時間に占める突発的対応の割合が33%に上っているという。
稼働環境の「現実」をAIに共有 New Relicのアプローチ
こうした課題に対し、New RelicはAIコーディングのコストや利用状況を可視化する「Observability for AI」として前述のPreflightを提供する一方で、AIを活用して複雑なシステムの自律的運用を支援する「AI for Observability」というアプローチも推進している。
その中核となるのが、MCPサーバとして提供される「Ground Truth」だ。AIコーディングエージェントに対して、New Relicが収集している本番環境や検証環境のテレメトリーデータ(トラフィック、エラー率、遅延、リソース稼働状況)を提供する。これによりAIは設計仕様のコンテキストだけではなく、稼働先の振る舞いを加味した上で、高負荷や並列アクセスに耐え得る高品質なコードを生成・修正できるようになる。
同社はこうしたアプローチの下、「Autopilot」や「Workflow Automation」といった機能も提供する。システム異常の検知から、影響範囲の特定、ログやトレースを用いた根本原因の分析、解決策の提示までをAIエージェントが自律的に実行することで、トラブルシューティングのプロセスを自動化し、MTTR(平均修復時間)と運用負荷の大幅な削減を目指すとしている。
記者の目:
トークンコストの肥大化やコード品質の低下といった課題は、急速に活用が進む現場で共通の悩みとなりつつある。Preflightは、ブラックボックス化しがちなAIコーディングエージェントの利用実態やトークンコストを無料で一元的に可視化したいというニーズに対して現実的な一手となりそうだ。
一方、AIコーディングエージェントにかかるコストや利用状況を「可視化」するだけでは、開発現場が抱える課題を根本解決することは難しいかもしれない。同社の調査結果が示す通り、AIへの過信に起因するシニアエンジニアの「レビュー負荷激増」や、稼働環境のコンテキストを無視したコード生成による本番障害の増加といった「エージェント負債」は、個々のトークン管理や可視化だけで防ぎ切れるものではないためだ。
テレメトリーデータをAIに共有して稼働環境のコンテキストを補完するというアプローチは品質向上に寄与すると期待される。だが、最終的にカギを握るのはツールによる支援と並行して「AIの成果物を誰がどのように検証・運用するのか」という人間側のプロセス設計やガバナンスの在り方ではないだろうか。
可視化によってAIコーディングの現状を把握した先で、品質向上と現場の負荷軽減をいかに両立させていくか。企業にはツール導入にとどまらない、AI活用前提のガバナンスや開発プロセスの再整備が求められている。
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