デジタル庁と厚労省、大病院電子カルテのクラウドネイティブ化へ本格始動 「野良VPN」脱却へ:日本の医療IT底上げへ
デジタル庁と厚生労働省は、大病院向け電子カルテなどのクラウドネイティブ化に向けた「病院情報システム等の刷新に向けた協議会」の構成員募集を実施した。医療業界に根深く残る「個別構築の弊害」や「セキュリティリスク」を解消するため、モダンなクラウド技術やシステム要件の標準化に知見を持つIT事業者を交えた検討が本格化する。
デジタル庁と厚生労働省は2026年6月、「病院情報システム等の刷新に向けた協議会」(分科会A:大病院向け電子カルテ等のクラウド化に向けた検討)の構成員応募を実施した、現在は選考段階とみられ、大病院向けシステム刷新に向けた協議がいよいよ本格化する。
現在の医療機関、特に大病院や大学病院を取り巻くIT環境には、極めて根深い課題が存在する。長年にわたるIT予算や専門人材不足により、ネットワークインフラへの投資が後回しにされてきた結果、多くの弊害が生じている。
サイバーセキュリティの観点で最大の障壁となっているのが、「システム個別構築」の商習慣だ。電子カルテ、レセコン(診療報酬請求ソフト)、「CT」「MRI」といった大型医療機器、ナースコールなど、ベンダーごとに独自の保守用回線(VPNなど)が持ち込まれているケースがある。これが病院側の管理が及ばない「野良VPN」や「バックドア」の温床となり、病院側が組織内のネットワークの全容や脆弱(ぜいじゃく)性を把握できないというガバナンスリスクを招いてきた。
「野良VPN」脱却へ 国が進める医療ITクラウドネイティブ化と協議会の役割
こうした「不透明な契約」「属人的な運用」「複雑なインフラ」といった構造的な課題を見直すため、デジタル庁と厚生労働省は医療DX(デジタルトランスフォーメーション)工程表に基づき、従来のオンプレミス型システムからの脱却を進めている。
目指すのは、電子カルテ、レセコン、部門システムを一体的にモダンなクラウド型システムへ移行する「クラウドネイティブ化」だ。システム要件やネットワーク構成図の標準化を進めることで、医療インフラの安全性と持続可能性を確保する狙いがある。
両省庁は2025年度に中小病院を念頭に置いた標準仕様を取りまとめており、2026年度からは同仕様に準拠した民間事業者の認定審査を開始する。そして次のフェーズとして、2026年度内に規模も複雑性も増す「大病院向け」のシステム要件整理へと着手する方針だ。
今回の公募では、電子カルテ連携や医療機関向けサービスの開発・導入実績を持つ事業者が対象とされた。選定された構成員は、大病院における業務フローの整理をはじめ、クラウドネイティブ化に向けた標準的なシステム要件やAPI仕様、SLA(サービスレベル合意書)などの検討に携わることになる。分科会で取りまとめられるシステム要件や標準化方針は、医療ITに携わる事業者にとっても見逃せないポイントとなる。
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