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オブジェクト指向なんて分かんない!――エンジニアに「基礎力」は必要か?仕事が「つまんない」ままでいいの?(29)(3/3 ページ)

「あー、これは大体こういう感じね」。新しい仕事をするとき、大枠をざっくりと把握できたらやりやすくなると思いませんか?――それがエンジニアの「基礎力」です。

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エンジニアの基礎力は他の仕事でも役立つ

 現在の私は、プログラマー時代のように、ゼロからプログラムを書くことはありません。Webサイトのサーバをメンテナンスしたり、CMSのコードを自分好みにカスタマイズしたりするぐらいです。ですから、プログラミングの技術力では、現役の皆さんには到底かないません。

 でも、エンジニア時代に身に付けた「基礎力」は、エンジニア以外の仕事でも大いに役立っています。

 例えば、私は今、職場のコミュニケーションやストレスを改善するための研修や講演、個人のコーチングなどを行っているのですが、企業や個人が抱えている「困りごと」をヒアリングするときに、「言葉ではこう言っているけれど、問題はそこではなく、これだな」と、問題の本質を見極めるのが得意です。

 問題の本質を見極めるのが得意なのは、オブジェクト指向の「抽象化」を身に付けたことが影響しているのではないかと思います。なぜなら「抽象化」とは、「異なる物事の共通点を探し、それを1つの概念としてまとめたり、物事を大局的に捉えて、その背景にある構造や目的、意味を見いだしたりすること」だからです。

 具体化が「これを実現するためにはどうすればいいか」を詳細にしていくのに対し、抽象化はその反対で「問題の共通点は何か」「そもそも、この目的は何か」「そもそも、何のために」など、物事を1つ上の視点から考えることです。

 「顧客の課題を解決する」という仕事をする上で、「抽象化」の概念は私にとってなくてはならないものです。プログラマー時代にオブジェクト指向を学んでいるときは、まさか将来こんな形で役立つとは思いもしませんでした。

 仕事って、みんなつながっているんですね。

基礎力の習得は「1つのことを、とことん極める」

 最近、情報がたくさんありますが、「サルでもできるナントカ」「一瞬でできる魔法のナントカ」のような、ノウハウ的なものが多いですよね。

 私は、「基礎力」はノウハウ的なものよりも、「1つのことをとことん極める」ことで身に付くのではないかと思います。プログラマーなら、1つの言語をとことん極めればいい。

 私の場合はJavaでしたが、言語は何でもいいと思います。大切なのは、今の仕事を「とことん極める」こと。プログラム言語によって、コードの書き方に多少の違いはあっても、基本的な部分はそれほど変わりません。あなたが今いる環境でできることをやってください。

 「基礎力」を身に付ける過程では、多少の「分かんないよー」があるかもしれません。けれども、ある一線を越えると、プログラミングの神様が降りてきます。すると、見える世界が一瞬で変わります。それはまるで、水を熱し続けて、沸騰すると液体が一気に気化する瞬間のようなものです。

 基礎力が身に付いて、「あー、大体こういう感じね」が直感的に分かるようになると、他の技術やプログラム言語も簡単に理解できるようになります。そして、基礎力の本質的な部分は、エンジニア以外の仕事にも役立つことに気付くでしょう。

今回のワーク

 静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。

  1. 「今、最もはまっていること、面白いこと、楽しいこと」を書き出してみましょう
  2. 併せて「今、最も困っていること、行き詰まっていること、めんどくさいこと」を書き出してみましょう
  3. プログラミングの神様は、どちらの入り口からでも出会えます。どちらか一方を決めて、とことん突き詰めてみましょう

筆者プロフィール

竹内義晴

しごとのみらい理事長 竹内義晴

「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。

著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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